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黒の魔王  作者: 菱影代理
第33章:黒き森
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第647話 裸の乱舞

 甲高い奇声が、風情漂う森の浴場に響き渡る。暗緑色の甲殻に覆われた、虫型モンスター『ナイトマンティス』は自慢の大鎌をギラつかせて、裸というこれ以上ないほど無防備な姿をさらす、俺という獲物へ殺到してきた。

 焦る必要は、どこにもない。確かに俺は素っ裸だが、剣がなければ戦えない非力な女剣士というワケじゃあないからな。

「裸で戦わされるとか、機動実験を思い出すな――『魔弾バレットアーツ全弾発射フルバースト』」

 嫌な思い出が蘇りそうになるところを、瞬時に作りだした大量の魔弾と共に吹っ飛ばす。体の周囲に浮かび上がった漆黒の弾丸は、迫りくる巨大カマキリを討つべく四方へ向ける。これだけ密集してかかって来れば、どこに撃っても当たるだろう。

 奴らの雄たけびをかき消すように、同時発射の轟音が響く。

 直後、勢いのままに飛び込んできたカマキリの体は、放たれた無数の魔弾によってズタズタに寸断されてゆく。

 頭、手足、胴体、どこもそれなりの硬度をもつ甲殻に覆われてはいるが、俺の魔弾を防ぐほどの頑強さは持ち得なかったようだ。黒魔法の銃撃を前にあっけなく風穴が開き、四肢が吹き飛び、盛大に血飛沫が――ああ、コイツらの血って、青いのか。

 珍しい青い鮮血に若干引きつつも、俺は素早く動き出す。

 ナイトマンティスは群れる虫のモンスターであるせいか、多くの仲間が瞬殺されても、まるで恐怖という感情が欠落しているかのように、躊躇わず俺へ襲い掛かり続けてくる。実際、コイツらには感情なんてモノはないのかもしれない。怒りも恐れもなく、淡々と向かってくる奴らの姿は、生物というより、むしろ機械的だ。

 そうであるならば、最後の一匹まで徹底的に叩き潰さなければ、止まらないってことか。

「パイルバンカー」

 殺人マシーンと化しているナイトマンティスを相手に、俺もまた倒すことに躊躇はない。魔弾に倒れたお仲間の死骸を蹴飛ばして飛び掛かってくる次の奴に、俺は黒色魔力が渦巻く拳をくれてやる。

 突き刺すように繰り出されたナイトマンティスの鎌を、螺旋に渦巻く魔力でドリルと化している右拳で真っ向から打ち砕く。バキバキとカマキリの刃が砕け散り、勢いと威力が衰えぬまま、鎌の付け根である腕を吹き飛ばし、胴体を穿ち、ついでに、後ろに続く奴までまとめて貫く。

 リリィをぶん殴った時よりは格段に威力は落としているが、それでもナイトマンティス二体は余裕で貫ける。パイルバンカーの威力も、俺の成長に従って強くなっているのだなと、こういう時に実感するね。

 武器に頼らず、徒手空拳と黒魔法だけで戦う機会は滅多にないことだし、存分に力を振るわせてもらおう。

「折角、人がヤル気を出してるんだ、無視してくれるなよ――『魔手バインドアーツ』」

 俺をスルーして、ブリギットを逃した風呂場の出入り口へ向かっていくナイトナンティス共を、影から作り出す漆黒の鎖でもって縛り付ける。

 基本的に拘束用の魔手だが、これくらいの硬さの相手なら、そのまま縊り殺すこともできる。蛇が獲物を捕らえるように、手足から胴体まで絡みついた黒い鎖は、そのままギリギリと締め付ける力を強め――ブチリ、と強引に体を千切っていった。

 楽な倒し方だが、少しばかり時間がかかる。

 ならば、そのまま捕らえたカマキリをぶん投げた方が手っ取り早いか。続々と森の茂みから湧いて出てくる奴らに向かって、鎖で縛ったカマキリを力任せに投げつける。

 結構な勢いで投擲されたカマキリは、仲間と衝突して仲良く潰れあう。同じ重さ、同じ硬さのモノが高速でぶつかれば、どっちも壊れるのは当然の結果だ。

 鎖投げによって盛大にクラッシュしている奴らを尻目に、俺自身は同時進行で戦い続けている。魔手バインドアーツの操作に集中して棒立ちしているようでは、黒魔法使いとしては三流だろう。

 まぁ、基本的に触手操作はヒツギに任せている俺が、偉そうに言えた義理ではないが。

榴弾グレネード――っと、森に火はまずいか、『榴弾氷砲グレネードヘイル』」

 反射的に標準仕様の火属性による爆破タイプの『榴弾砲撃グレネードバースト』をぶっ放す寸前で思いとどまり、慌てて術式と属性変換。グレネードの氷属性バージョンの『榴弾氷砲グレネードヘイル』を放つ。

 黒色魔力が物質化マテリアライズした黒光りする金属質の弾頭に、疑似氷属性の発露たる青いラインが発光する凍てつく砲弾が、群れるカマキリどもへと炸裂した。

 青白い爆発と、毛先が凍りつきそうな冷たい爆風が駆け抜ける。吐いた息が白くなるほどの冷気を残しつつ、霧のように白く漂う爆煙が晴れれば、そこには真っ白に凍りついた巨大カマキリの氷像が作られていた。

 よかった、ちゃんと一発で凍り付いてくれて。

 初めて実戦で使用した『榴弾氷砲グレネードヘイル』の凍結力に一安心しつつ、恐れ知らずのカマキリが仲間の死をものともせずに突っ込んでくるのを、徒手空拳で迎え撃つ。

「ふっ!」

 わざわざ、パイルバンカーとして拳を繰り出す必要もない。ナイトマンティスの甲殻ならば、素手でもそのままぶち抜ける。自然と手足へとまとわりつく黒色魔力が、黒いオーラとなって漂いながら、俺は真っ向からカマキリどもと殴り合い。

 ストレートパンチで胴体をブッ飛ばし、回し蹴りで首を落とし、足を掴んではブン回してから放り投げる。

 全裸でこんな大暴れするんだから、気分は原始人。いや、原始人でも服くらいは着てるか。類人猿レベル。

 しかし、獣じみた闘争本能というのは、男として少なからず持っている以上、こうして戦っていると、不思議な爽快感と解放感のようなものもあった。ドクドクとやけに心臓の鼓動がうるさいのは、この魔獣の心臓が野性的な戦いに喜んでいるからかもしれない。

「どうしたお前ら、もう打ち止めか?」

 高い木の上から降ってきた奴らを『榴弾氷砲グレネードヘイル』で凍らせ、俺をスルーした奴らを魔手バインドアーツで絞殺し、肉薄してきた奴をヤクザキックでブッ飛ばすと、ついに新手が茂みから出てくることはなくなった。

 終わってみれば、死屍累々。ズタズタになったナイトマンティスの残骸は浴場いっぱいに転がり、青々とした鮮血が不気味な血だまりをそこかしこに作っている。それでも凍らせた奴らも多いから、まだマシな状態かもしれない。鉈があったら、全て八つ裂きだっただろうし。

 ともかく、森が再び静けさを取り戻したということは、これで終わりということだろう。

「クロノ様、全て倒してしまったのですね」

「ああ、コイツら、全く退く気がなかったからな。それより無事か、ブリギット」

「はい、クロノ様のお蔭で、私の下には一匹たりとも現れませんでしたから」

 良かった、調子に乗って戦ってたら、うっかり一匹二匹スルーしてしまった、ってことにはならなくて。

 彼女の言う通り、その身にかすり傷一つないことは、惜しげもなく晒されている裸体を見れば一目瞭然だ。

「そうか、ひとまず怪我もなくて良かった」

 良くない。またしても俺は、「服着てください」と言うタイミングを逃したのだから。

 というか、なんでまだ裸のままなんだよ……モンスターが襲ってきて神殿内に避難させたんだから、バスタオルを体に巻くくらいのことはできたんじゃないのか。

「私を守っていただき、誠にありがとうございます。戦うべきは、ここを守る使命を持つ巫女である私でしたのに――」

 と、死山血河のカマキリ死体地獄な浴場へと、穏やかな笑みを浮かべてブリギットが歩みを進めようとした、その瞬間だった。


 ゴォアアアアアアアアアアッ!!


 ナイトマンティスとは異なる、重低音の唸り声が響く。いや、響かせながら、声の主はすでに現れていた。

 ドスン! と重い着地音と共に、俺の目の前に降って来たのは、灰色の巨躯。大岩の様なゴツゴツとした表面と質感。カマキリを遥かに超える巨体である。

 ナイトマンティスは人間サイズのモンスターだが、コイツは戦車かトラックか、くらいの大きさだ。

 その体は太く、分厚く、そしてなにより、野太い八本の足を持つシルエットが特徴的。

「『ルークスパイダー』ってヤツか」

 騎士ナイトの名を持つカマキリと、同じ群れに属すると言う、ルークの名を冠する蜘蛛。それがルークスパイダーという虫型モンスター。危険度ランク4、ナイトマンティスを上回る戦闘能力を誇る。

 堂々と現れた大蜘蛛を前に、ちょっと焦る。

 素手でコイツまで相手にするのは面倒そうだ、という戦力としての話じゃない。

 単純に、出現したルークスパイダーが、二体いたからだ。

 一体は俺の目の前に。そしてもう一体は、ブリギットの前。

「すまん、もう一度逃げてくれ、ブリギット――」

 叫びながら、俺はまず彼女を狙うルークスパイダーを止めるべく、全力で魔手バインドアーツを伸ばす。

 しかし、遅きに失した。伸ばした手は、途中で止まる。

「――ご心配には及びません」

 叫んだ俺が馬鹿みたいに、のんびりした返答。

 彼女が言い放った台詞の途中、何かの見間違いかのように、今にも襲い掛かろうとしているルースパイダーの巨躯に、黒い、影のような、剣のような、大きな何かが通り過ぎて行った。

 何だ、と思う間もなく、答えは出た。

 ルークスパイダーの岩のような体が、真っ二つに分断していた。確実に石や鉄と同等以上の硬度を持つだろう、分厚い灰色の甲殻に覆われた装甲車の如き大蜘蛛の肉体が、ズルリと綺麗に左右に別れる。

 あまりに鋭利な断面。カマキリと同じ青い鮮血は、断たれた胴体が地面に崩れ落ちてからまき散らされた。

 見間違いではなかった。

 ルークスパイダーは確かに、黒い影のような刃で、一刀両断に切り裂かれたのだ。

 無論、それをやってのけたのは、大蜘蛛の目の前に立つ、無力な獲物であるはずの、裸の女。

 ブリギットは、倒れた蜘蛛の死骸の向こう側で、俺へと何一つ変わらぬ艶やかな笑顔を向けて、こう言った。

「無形の闇剣『絶影ネメシス』――私が最も得意とする、黒魔法でございます」

 その言葉を置き去りに、気が付けばブリギットは、もう俺のすぐ隣に立っていた。

 一瞬、彼女の姿を見失った。まるで、組手で俺を容赦なくボコるサリエルのような素早さ。いや、単純に速いのではなく、動く姿をくらませる類の術理があるようだ。

「黒き森を守るのが、我らの務め。クロノ様、お手間をかけてしまって、申し訳ございませんでした」

 軽く、羽虫でも払うかのように、彼女の腕が振るわれる。

 その手先、指先か、そこから伸びる、細く、長く、光沢の無い影の刃が形成されていた。その黒き刃先は、水面でもなぞるかのように、俺の前に降り立っていたルークスパイダーの体を通り過ぎていく。

 一閃、二閃。

 次の瞬間には、綺麗に四分割された、大蜘蛛の死骸が転がった。

「もう一つ、謝らねばならないことは……ふふ、クロノ様の戦いぶりに、つい見惚れてしまいました。聞きしに勝る、勇猛ぶり。そしてなにより、一族以外で黒魔法を扱う人は初めて見ました」

「そうか、俺も、身内以外で黒魔法使った奴は初めて見たよ」

 会話するものの、俺の視線は彼女と蜘蛛の死骸をいったりきたり。

 あの影の刃、『絶影ネメシス』といったか、凄まじい切断力だ。ちょっとした名剣、業物、と同等の切れ味を誇るだろう。

 俺も黒色魔力だけで、この切れ味を再現するのはかなり難しそうだ。どういう術式を組んでるんだろうか。

 彼女の黒魔法そのものも気になるが、やはり、ブリギット自身の相当な実力というのを、受け入れるのにちょっと抵抗があったり。

 強い奴ってのは、大体、雰囲気で察せるもんだが、今の今まで、彼女からは全くそういう気配は感じなかったから。実のところ、俺の驚きは相当なもんである。

「うふふ、やはりクロノ様こそ運命の相手に相応しい。惚れ直した、と言うべきでしょうか」

 うっとりした笑みを浮かべて、スススと体を寄せてくるブリギット。

 この期に及んで、まだ諦めていないのか。

「と、とりあえず、モンスターがここに現れたっていうのは、普通じゃありえない非常事態なんだろう。後始末もあるし、早くモリガンに戻って連絡した方がいいんじゃないのか」

「ええ、そうですね。そうなのですが、クロノ様は本当に、それでよろしいのですか?」

「えっ、何がだ?」

「戦いで、興奮されたのでしょう。私でよろしければ、今すぐにでも鎮めてさしあげます」

 と、自然な手つきで俺のアレな部分をタッチされて、ようやく気付く。いつの間にやら、男の象徴がギンギンに立ち上がってしまっていることに。

「うぉおおお――『愛の魔王オーバーエクスタシー』っ!!」

 第四の加護に頼らなければ、俺は今度こそブリギットの誘惑に打ち勝てる自信がなかった。




 加護に頼り切りって風呂場の誘惑をどうにかこうにか振り切った。

 流石のブリギットもここから先は真面目な様子。

「今すぐ、モリガンへと戻ります」

「もう陽はくれているが、大丈夫なのか?」

「ええ、こういう事態に備え、近道があるのです」

 マジかよ、半日以上かけて歩いてきたのはなんだったんだ。思いはするものの、城などにある秘密の脱出路みたいなもんだから、普段は使わない類のルートなのだろう。

「俺はここで待っていた方がいいか?」

「いいえ、クロノ様なら、問題なく通行できるかと」

 どういう意味だ、と思えば、すぐに分かった。

「ああ、確かにコレは、普段は使えないな」

 森の神殿を飛び出した俺達は今、地上50メートル級の樹木の上を疾走している。野太い幹の外周に沿うように、ちょっとガタついた足場が設置されているのだ。今は夜だから、目印代わりに設置された魔石が点々と光を放っている。

 地面を歩いている最中では、見上げたとしても気づけなかっただろう。木々の上を走っていくルートだから、森の神殿からモリガンまで、ほぼ一直線の道筋となっているようだ。

 昼間に歩いた地上の道は大きく曲がりくねっていたから、確かに、直線距離となれば大幅なショートカットとなる。ここを走って行けば、余裕で夜明け前にはモリガンまで辿りつけるだろう。

 無事に走れれば、の話だが。

 足場の幅は、一人がギリギリで通れる最低限。手すりなんてモノは、勿論あるわけない。場所によっては、木の枝をそのまま通路として利用することもあった。

 足場が悪い、なんてもんじゃない。ここを走る奴を殺す気だとしか思えない作りである。半歩でも足を踏み外せば、50メートル下の地面へと真っ逆さま。俺は自由落下しても平気な体だけど、普通の人だったら余裕の即死だ。

「この道は、限られた者だけが使うためのものですので、あえて悪路になっているのです」

「知らなきゃ見つけられないし、知ってても簡単には通れない。外敵に備えて、か」

「それも、国が荒れていた昔の話です。私にとっては、幼い頃から慣れ親しんだ、単なる近道でしかないのですけれど」

 どうやらブリギットの身体能力は、子供の頃からしっかりと鍛えられているようだ。こんな道を当たり前のように走らされていれば、どんな子だって野生児になる。

「この森には、他にも色々と仕掛けられてそうだな」

「ええ、危険な罠が沢山ありますよ」

 俺にとって一番危険なのは、ブリギット自身だけど。

 こうして、彼女の背中を追いかけているだけで、まだ誘惑されている気分になる。そもそも彼女の服は例のエロ衣装のままだし、激しく走って跳んで、を繰り返すことで、盛大にヒラヒラと翻る。揺れる大きなお尻に、褐色の生脚が目に眩しい。

 くそ、こんなことなら、俺のズボンでも履かせれば良かった。

 そんな風に、大いに気を散らしながらも、何とか足場から滑り落ちずに無事に近道を完走。モリガンへと帰還した。

「私はこのまま、お爺様へと報告にゆきます」

「俺も一緒に行った方がいいか?」

「いえ、クロノ様はどうぞお休みになってください」

 ありがたい気遣い。まぁ、報告者としてはブリギット一人で十分ってのも間違いはないが。

「それじゃあ、俺は明日に備えて用意しておく」

「用意、ですか?」

 何故か、不思議そうな顔でブリギットが言う。

「敵は『バグズ・ブリゲード』だ。緊急クエスト、出るんだろ?」

「え、ええ、恐らくは」

 風呂場で襲ってきた『ナイトマンティス』と『ルークスパイダー』は、まったく別種のモンスターに見えるが、『バグズ・ブリゲード』という虫型モンスターの大群を構成する、同種であるとされている。

 チェスの駒のような命名がされているのは、それぞれ違うタイプの虫モンスターでも、合わせて一つの軍団であることを示すためだ。

『バグズ・ブリゲード』は有名な災害級モンスターとして認定されている。当然、ギルドの資料にも大きく掲載されているから、俺もおおよその情報は知っていた。

 そして、もしも人里の近くに奴らが現れる、つまり、巣ができた場合は、速やかに討伐するべく冒険者ギルドは必ず緊急クエストを発行することになっている。

「ですが、クロノ様はすでに、目的であるモノリスの調査は終えています。これ以上、ここに滞在する、まして、緊急クエストを受ける必要など、ないのではありませんか」

「冒険者なら緊急クエは受けるのが当たり前だ。それに、このまま放っていけるかよ」

「しかし、クロノ様にとっては、私のような女とは、早く離れてしまいのではないですか」

「そりゃあ、誘惑されるのは困るが……けど、それでブリギットのことを嫌うかどうかってのは全然、別の話だろ。少なくとも、災害級のモンスターが出現したら、助けてやりたいって思ってる。だから、俺は戦う」

 正直、ブリギットには好意の方が強い。俺の勝手な価値観での考えだが、強い男と子供を作る使命なんてのも、女性としては悲しいことだと同情すらできる。

 何より、男として、理由はどうあれ、あそこまでストレートに迫る女性を、悪しざまにはできないだろう。

「そうですか……ご厚意、大変、感謝いたします。クロノ様が討伐に加わっていただければ、とても心強いです」

「ああ、ガッカリされないように、カッコいいとこ見せるよ」

 さて、そうと決まれば、早いとこ準備にとりかかろう。相手は無数の昆虫軍団『バグズ・ブリゲード』だ。俺もフル装備で、挑ませてもらおうじゃないか。

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