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黒の魔王  作者: 菱影代理
第30章:妖精殺し
575/1046

第574話 決別・修正版

 この話は利用規約に抵触する恐れがあるので、内容を一部削除した上で公開されております。該当箇所をそのまま削除しているだけですので、話の繋がりは途切れています。


 この話の完全版は、ノクターンの『黒の魔王・裏』にて掲載されておりますので、そちらをご利用ください。

 ガタゴトとかすかな音と揺れを感じながら、俺は目を覚ました。

 酷く気だるい、最悪の寝覚め。体力の限界まで戦い続け、そして、魔力が底をつくまでドレインで搾り取られたような、強烈な疲労感と倦怠感が俺の体を支配していた。

「くそ……やられた……」

 体は柔らかなベッドの上にある。しかし、ここは病室ではなく、音と振動からいって馬車の中であることに間違いなかった。だが、ただの馬車ではない。病人やけが人を搬送する専用の救急馬車である。

 丸ごとベッドが収まってもまだ余裕のある広い作りに、快適な乗り心地を保証するこの大型の馬車は、利用するのに結構な金額がかかる。コイツに乗ったのは二度目。最初にセレーネからアヴァロンの大神殿へ移送される時に、金に糸目をつけずフィオナが手配してくれたのだった。

 そして今、俺は……行き先は何も聞いていないが、まず間違いなく、スパーダへ送り返されている真っ最中だろう。

 小窓から、明るい陽の光が差し込んでいる。日付はすでに、新陽の月21日に変わっているはず。気が付けば朝、というか、すでに昼かもしれない。

「お目覚めですか、ご主人様」

 そっと俺の顔をのぞき込んでくる、死神かと見紛う邪悪な髑髏の面。寝起きで見るとちょっとビビる、『暴君の鎧マクシミリアン』を着込んだヒツギである。

「ヒツギ、今すぐ俺を降ろせ。いや、鎧を返せ。アヴァロンに戻る」

暴君の鎧マクシミリアン』を着れば、右手と右足を強引に動かすこともできなくはない。鎧そのものを稼働させることで、結果的にくっついてるだけの手足も動くという理屈。無論、治りには悪影響を与えるだろうが、それさえ度外視すれば戦闘だって可能だ。

 ブーストを吹かして全力疾走すれば、アヴァロンにだってすぐに戻れるはず。

「……申し訳ありません、ご主人様。その命令は、聞けません」

「なんだと、どういうつもりだ」

 ヒツギが俺の命令を拒否したことは初めてだ。そもそも、ただの道具が……いいや、認めよう、ヒツギは最早、呪いから生まれた魔法生物なんだと。だから、彼女にも自分の意思というものがある。

 だからこそ、俺を苛立たせる。邪魔をするな。早くアヴァロンに戻らなければ、取り返しのつかないことに――

「スパーダに帰りましょう、ご主人様。フィオナ様の言う通りにするのが一番だと、ヒツギも思うのです」

「ふ、ふざけるな……そんなの、認められるワケがないだろ」

「たとえご主人様が動けたとしても、フィオナ様をお止することはできません」

「力づくでも、止めなきゃいけないんだ! 分かっているのか、ヒツギ、このままだと――」

 最悪の状況になっていると、俺はすでに、理解している。いや、させられた、というべきか。

「――フィオナとリリィが、殺し合うことになるんだぞ!」

 昨夜のことだ。今まで我慢に我慢を重ねて禁じてきたが、フィオナの勢いに押されて神殿のベッドの上で体を重ねた。そう、あの瞬間から、すでにフィオナは手を打ち始めていたんだ。

 俺が異変を察知したのは、始めてからしばらくしてからだった。




「な、んだ……体が、動かない……」

「ふぅ……ようやく、薬が効いてきたようですね」



 削除・修正



「本当に、ごめんなさい。それでも、分かってください。もう一度、私は受け入れて。リリィさんを殺す私を――許してください」

 嫉妬に狂ったリリィは、あらゆる者を排除して、ただ、俺と二人きりの世界を望んだ。

 それを阻む、フィオナ。恋人である俺と、その自由と意思を守るために、リリィを殺すという。

 どうすればいいのか、俺には分からない。こんなボケた頭で、分かるはずもない。

「もし、貴方が私を許してくれたなら……結婚、しましょう」

 そこで、とうとう何も考えられなくなった。意識と理性は完全に消滅。

 もう、目の前にいるフィオナしか見えない。欲しい、お前が、欲しい――

「ああ、クロノさん、愛しています」




 そうして、次に目覚めた時には、この有様だ。

 俺は馬車に乗せられスパーダへ強制送還。フィオナは招待状を手に、リリィの元へ向かった。

「くそ……ちくしょう……」

 怨めしいのは、おかしくなったリリィでもなく、勝手なことをするフィオナでもなく、ただ、身動き一つ満足にとれない、無力な自分だ。どうして、俺の手は動かない。足が動かない。

 立てよ。立って、走って、追いかけて、力ずくで二人を止める。できるはずだろう。だって俺は、ランク5冒険者で、第七使徒サリエルだって倒して、魔王の加護を六つも集めた、スパーダの英雄、黒き悪夢の狂戦士ナイトメア・バーサーカーだぞっ!

「くそぉ……」

 それが、たった二人の女の子を止めることも、できないなんて……俺は一体、どれだけ無能な大バカ野郎なんだ。

「ご、ご主人様……」

「頼む、ヒツギ……鎧を、返してくれ……俺に、二人を、リリィとフィオナを、止めに行かせてくれ……」

「う、うぅ……ごめんなさい、ご主人様、ごめんなさいぃ……」

 こうして、俺はどこまでも無力で無様なまま、スパーダへと帰り着くのであった。

 第30章開始早々、申し訳ありませんが、万が一に備えての修正版となります。一応、修正版だけでも話の流れはご理解いただけるかと思いますが・・・お手数ですが、ノクターンの完全版を読んでいただければ幸いです。

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