第545話 魔女の罠(2)・修正版
この話は利用規約に抵触する恐れがあるので、内容を一部削除した上で公開されております。該当箇所をそのまま削除しているだけですので、話の繋がりは途切れています。
この話の完全版は、ノクターンの『黒の魔王・裏』にて掲載されておりますので、そちらをご利用ください。
「ありがとうございます。あまり、他人に聞かれたくない話ですので、少し場所を変えましょう」
結局、私は彼女の誘いに乗りました。
そうして、気が付けば私は因縁の噴水前にまでやってきています。そう、ここはあまり手入れのされていない神学校の北庭園。私とリリィさんが対決した、あの場所に他なりません。
「先に確認しておきますが、クロノさんが行方不明となった経緯は、聞いていますか?」
「いいえ、詳しくは。ただ、戦場の混乱の中で、としか」
そういって行方不明となる者は、そう珍しいことではありません。戦場で起こりうる、ごく当たり前のこと。
「簡単に説明するなら、クロノさんはとても強力な、一人の敵と戦っていました。サリエルという名の、パンドラに攻めてきた十字軍の中で、間違いなく最強の女――そして、クロノさんにとって、深い因縁のある、相手でもあります」
「い、因縁……ですか?」
「詳しいことは私も知りません。ただ、クロノさんがスパーダへ来るよりも前から、その因縁はついていたようです」
スパーダへ来る前のクロノくんのこと、私は全く知りません。彼が十字軍との過酷な戦いに敗れ、命からがらスパーダまで逃げ延びてきた、ということは、前にテレパシーで覗き見したので知っています。
けれど、その戦いが起こる前、どうして、どのように、クロノくんがあの悲惨な戦いに巻き込まれていったのか……私は、何も知らないのです。彼はまだ、話してくれない。
「ともかく、十字軍の中でも特別な存在であるサリエルは、なんと敗北の間際に逃走用の転移魔法を発動させました」
「転移魔法……ま、まさかっ!」
その通り、と魔女は頷く。クロノくんは因縁の敵であるサリエルという女の首を諦めきれず、転移魔法に飛び込んでしまったというのです。
「えっ、それじゃあクロノくんは――」
「幸い、転移の先はダイダロスの森の中でした。ガラハド山脈が見えるほど、近い位置です」
よ、良かった、クロノくんが敵に捕らわれたのではなくて。
「では、クロノくんは念願かなって、ついにそのサリエルを討ち果たしたのですね」
「……ここからが本題です。クロノさんは、サリエルを殺しませんでした。彼女を殺す最後の瞬間に、気付いていしまったのです。彼女が同郷の友人であったことに」
「えっ……え!?」
「サリエルは、クロノさんの知る友人とは、顔も姿も全く違います。ですが、どういう理由で姿を変えられたのかは分かりませんが、確かに、サリエルはその友人だったのです」
だから、クロノくんはサリエルを殺せなかった。
くだらない、と笑うことなどとてもできません。だって、私は誰よりも、彼の優しさを知っているのですから。
私には分かります。憎い敵が友人であったことを知った時の、クロノくんの驚きと、そして、深い悲しみを。
「当然、クロノさんはとても深くショックを受けます……そう、そのショックのあまり、サリエルの体へ手をかけてしまうほど」
「……え? あ、あの、それって……」
削除・修正