第415話 キメラ
ソレは、突如として現れた。
「うおっ、何だコイツ――ぐはぁ!」
迫り来る敵に向かって弓を引いていた射手。『グラディエイター』の一員である、片胸鎧に矢筒を背負った典型的な射手装備をした男が、胸元からドっと鮮血をまき散らしながら宙を舞う。
不運にも、彼の体は壁の外に放り出され、遥か五十メートルの地上に向かって消えて行った。
そこまで見送ってから、彼を一撃で葬り去った犯人が通路へと降り立った。硬い石畳に、重苦しい着地の音が鈍く響く。
デカい緑のリザードマン――それが、第一印象。
しかし、その直後に気づかされる。コイツがただのリザードマンではないと。
「おい、アイツ……腕が多い、っつーか、胸からオークの顔も出てるぞ」
肩から毛むくじゃらの剛腕を生やし、さらに、胸元からはオークの強面が覗いている。モンスターだとしても、随分と出来の悪い姿だ。
そのあまりに醜悪な異形に、俺は思わず『ザ・グリード』の発射を中断して、どうやってかこの通路にまで乗り込んできたリザードマンの化け物の方へと注意を払う。
アイツの正体が何なのかは分からないが、ヤバい相手だっていうのはすぐに分かる。
まぁ、そんなことは一目見れば誰でも分かるか。すでに、ヤツの近くにいる冒険者が素早く接近戦用の剣を抜いて、四方から斬りかかろうと動いていた。
「気をつけろ、コイツ、とんでもねぇ速さで壁を登ってきやがったぞ」
「見たことねぇぞ、何のモンスターだよコイツぁ」
「へっ、このヤベぇのを始末すりゃあ、報酬にも色がつくってもんだぜ!」
おぞましい姿の相手を前にしても、冒険者達はひるんだ様子は見られない。その辺の度胸と胆力は流石と言わざるを得ないが――
「シャッ――」
再び、鮮血が舞う。
それなりに連携のとれていた三人組の剣士だったが、トカゲの化け物が一回転して振るった四本の腕から繰り出す鉤爪の斬撃を受け、あっけなく吹き飛ばされる。
一人は断末魔の呻き声さえ漏らさず、文字通りに首の皮が一枚だけで繋がった死体となって転がる。もう一人は、またしても壁の外まで飛んで行き、五十メートルの自由落下で確実な死をもたらされる。
「う、ぐぇ……」
残る一人だけは一命を取り留めたようだが、胸元には革の鎧を深々と切り裂く四筋の傷痕が残っている。鮮血は止めどなく溢れ、ポーションをぶっかけた程度ではとても塞がり切らない重傷だ。
もっとも、誰かが処置を施す前に、彼はトドメを刺された。
悠然と通路の上を一歩、二歩、と進み始めた化け物。その三歩目に、血溜まりに倒れ伏す彼の頭がある。ゴキリ、と鈍い音を立てて、首の骨が踵で砕かれたのだった。
「並みの冒険者じゃ相手にならねぇな……」
「気を付けてクロノ! アレ、えんぜるりんぐ、でバサークになってるの!」
すぐ後ろで発せられたリリィの声。それを理解するのには、一拍の間が必要だった。
「くそ、アレが『思考制御装置』か!」
今更ながらに気づく。いや、もしかしたら気づきたくなかっただけなのかもしれない。
リザードマンの胸から生えるオークの頭には、確かに見覚えのある白いリングが装着されている。
それはつまり、あの化け物は『白の秘跡』が生み出した、新たな実験体ということを示している。
「たぶん、キメラだよ!」
「キメラ、ね……ちくしょうが、マジでろくでもねぇモンばっかり作り出しやがって」
見たところ、リングで洗脳するだけでなく、リザードマンをベースにオークと、あと何かの肉体を少々加えて生み出したのだと思える。魔法的に融合させられたのか、それとも外科手術のようにそのまま移植されただけなのか、詳しい生成法は知らないし、知りたくもないが。
とりあえず、目の前にいるアイツはリザードキメラとでも呼ぶべきだろう。
「アイツは俺が仕留める。リリィは援護、フィオナはそのままで」
「うん!」
「私が撃つまでもないということですね、分かります」
いくら広いとはいえ、通路は通路。こんなところでフィオナからも援護射撃が入ったら、防衛線が崩壊する。つまり、お前は撃つなってことだ。言わせないでくれ。
もっとも、フィオナでなくとも、この場所じゃあそうそう遠距離攻撃と範囲攻撃は使えない。大量の弾丸をバラまく『ザ・グリード』も控えるべきだろう。
半ば放り投げるように手放し、代わりに取り出すのは、一番の相棒『絶怨鉈「首断」』。
「ご主人様、ナタ先輩、ふぁいとーっ!」
ヒツギが脳内声援を送ると共に、放ったガトリングガンをバインドアーツの鎖で絡め取って『影空間』に再収納するのを横目で確認。
阿吽の呼吸で、スムーズな武装交換。グリードゴア戦、ラストローズ戦を経て、ヒツギの出し入れスキルも随分と向上したように思える。
そうして受け取った呪いの鉈を手に、俺は真っ直ぐリザードキメラの元まで駆ける。最早、手に馴染むどころか一体化するような感覚の『首断』は、早く斬らせろと急かすように赤黒いオーラと不気味な呻きを上げた。
彼我の距離は、およそ十メートルちょっと。問題は距離より、その間にひしめく冒険者達だ。
「退いてくれっ!」
「うおっ!? 黒き悪夢の狂戦士だっ!」
「おお、任せたぜバーサーカー!」
並み居る冒険者達は、リザードキメラの脅威を先の一撃で理解しているのか、快く俺に道を譲ってくれた。ありがたいが、せめて名前で呼んでくれ。
誰にぶつかることもなく、瞬く間にリザードキメラまでの距離を詰める。
ヤツはこの瞬間にも新たな冒険者をその鉤爪にかけており、トカゲの左腕で男の胸倉を掴みあげ、獣の左腕で、その顔面を握りつぶしているところだった。
好き勝手しやがって。早く始末しなければ危険だ。
あと一歩、というところでドン臭い少年冒険者があたふたしながら俺の進路を塞いでいたが――まぁ、人間一人分の背丈なら、一足に飛び越えられるから大丈夫だ。
「――黒凪っ!」
そのまま飛び込んだ勢いで、頭上からリザードキメラへと斬りかかる。無機質なトカゲの目とオークの血走った目が、同時に俺の姿を捉えていた。
「キュエっ!」
奇声を発しながら、巨体に見合わず素早く飛び退いてみせたリザードキメラだったが、漆黒の斬撃は左の両腕を断ち切っていた。固そうな鱗にびっしり覆われたトカゲの腕も、ゴリラみたいに骨太な毛皮の腕も、やはりこの鉈は難なく切り裂いてくれる。
鋭利な切断面から、妙に赤黒く淀んだ血液のシャワーを吹きながらも、リザードキメラはまるで怯んだ様子もなく、俺を新たな敵と定めて身構えた。
けど、ここですぐに逃げ出さなかった時点で、お前の詰みだ。
「えーいっ!」
という可愛らしいかけ声が、やや離れた背後から聞こえた。その時にはもう、リリィが発した光の球、正確には固有魔法による『光矢』であるが、その輝く攻撃魔法がリザードキメラへ迫っていた。
立ち並ぶ冒険者の隙間を縫って飛んできた、超絶的な機動性と追尾性を併せ持つ光の矢は、全部で六本。あっという間に俺の背中を追い越して、その先で狂った咆哮を上げるキメラの兵士に着弾する。
「ォオオアっ! ガアアっ!!」
バサーク状態らしいが、それでも光の高熱に焼かれる痛みは感じたのか、それとも怒っただけなのか、甲高い声をトカゲの頭が漏らす。同時に、オークの顔面も殊更醜悪に歪み、大口を開けて野太い叫びを発していた。
トドメをくれてやるには、十分すぎる隙だ。
「二連黒凪」
一刀目で、リザードマンの首が落ちる。
慣性を無視するかの如く素早く切り替えした二の太刀で、オークの頭を落とす。言い換えれば、腹部を両断し、上半身と下半身とに別たれた。
武技の発動が終わると、俺はちょうど敵の前で半回転したような格好。そのまま、元の持ち場に戻るために、俺は一歩を踏み出した。
「片付けておけ、ヒツギ」
「はーい、ご主人様! ぽいぽーい!」
すでに準備は万端とばかりに、足元の影から勢いよく『影触手』が飛び出す。鎖にするほどの強度は必要ない。
この床に転がった三分割の遺骸を、壁の外に放り出せればそれでいいのだから。ドス黒い血飛沫をまき散らしながら、三つの肉塊は遺棄された。
しかし次の瞬間、俺の背後に再び狂える殺気を放つ者が現れる。
それはまるで、今殺したばかりのリザードキメラが、怨念に燃えてその場でアンデッドとして蘇ったかのようだ。
無論、そんな一瞬でアンデッド化することはありえない。熟練の屍霊術士でもない限り、即座に死体を蘇らせることなどできないのだから。
「はぁ……やっぱり、一体だけじゃあないよな」
俺が振り返るよりも先に、さらにもう一体、四本腕の人影が目の前に降り立つ。
「今度は狼獣人ベースのウルフキメラってとこか」
俺の脳裏に真っ先に思うかぶ狼獣人のイメージはヴァルカンだが、あの頼れる狼男と比べて、ここに立つのはやや細身でシャープな印象を受ける。体毛もこげ茶色で、あまり似ているとは言い難い。
両肩から生える新たな二本腕は、緑色の金属質な光沢を宿す、カマキリのものだった。
見たことはないが、昆虫の姿に近い種族もいると聞いたことはある。あるいは、この腕は単にカマキリのモンスターからとっただけかもしれない。
何にしても、このウルフキメラは素手でありながら、双剣を装備しているのと同じ攻撃力とリーチを備える強敵ということだ。
「任せた、リリィ!」
「はーい!」
ウルフキメラが俺に向かって斬りかかってくるのをバックステップで避けながら、その相手をリリィに丸投げする。
勿論、恐れをなしたからではない。ナタ先輩がいれば、蟷螂の斧なんざ真っ二つだぜ。いかん、ヒツギの変な呼び名が移った……
ともかく、重要なのは、この城壁には今、二体のキメラがいること。そう、最初に感じたのは背後に現れた気配だ。ウルフキメラとは別の個体。そのもう一体も、早急に始末しなければいけない。
リリィにはウルフキメラをバックアタックで仕留めてもらい、俺は振り返って背後の一体を倒す。二人で二体同時撃破という流れだ。
わざわざ説明せずとも、流石はリリィ。正確に俺の意図を汲んでくれる。
「お前の相手は俺だ、豚野郎」
踵を返したその先に立つのは、豚獣人がベースのキメラ。でっぷり肥えた桃色の体には、新たに四本の腕が生える、六本腕であった。
脇腹から生えるのは、恐らくリザードマンだと思われる青い鱗に覆われた両腕。やはり、その指先は鋭い鉤爪となっている。
そして、両肩から生えるのは、天使の翼――ではなく、ハーピィの翼と一体化している腕である。白い羽はネルを連想させるが、その色艶も羽の並びの美しさも、あのお姫様には到底及ばない。
それにしても、こんな体で本当にコイツは壁を登って来たのだろうか。疑問である。
「ブォオアアアっ!!」
ギンギンに血走った目の豚面が、鼻息を荒くして俺を睨む。
耳をつんざく絶叫を上げながら、猪のように猛烈な突進を敢行してくる。 俺と豚の間にいる冒険者は、その勢いに圧倒されて堪らず飛び退く。避け損ねた者は、ピンク色の暴走機関車と化したブーマキメラの巨体に弾き飛ばされて、潰れた蛙のような呻き声を上げて石畳に這いつくばる。
それでもまぁ、致命傷じゃないから大丈夫だろう。
「――破っ!」
凄まじい勢いで迫り来るブーマキメラが、トカゲの剛腕と蹄の拳を持つ豚の腕、右の二本腕から同時にストレートパンチを繰り出すのを、見切る。
そう難しいことではない。威力はあるが、大振りの上に、バサーク状態だからフェイントなんて高度な技術を使う知恵もない。見た通りに、回避すればいいだけのことだ。
轟々と空を切って伸びてくるダブルパンチの外側に逃れるように体を傾げながら、すれ違いざまに一太刀をお見舞いする。
ブーマの体は薄めの毛皮で、特別に防御に優れたものではない。リザードマンの鱗さえそのままぶった切れるのだから、武技は使わずともよい。ほとんど力任せに、俺の三倍くらいはある太い腹を、呪いの刃は切り裂いていく。
「――浅かったか」
腹部を切り抜けた直後に、即座に追撃を加えるために振り返る。
ただの人間だったら、間違いなく胴と腰が泣き別れしているほどの深い斬裂はしかし、ブーマの腹を両断するには少しばかり足りない。
穢れた黒い血とテカテカと脂で滑ったような質感の臓物が、傷口から零れかけている。しかし、その程度でバサーク状態の者は怯まないし、まして、あの組織が作った実験体であるなら、構わず攻撃を続行できるタフネスさを持たせているだろう。
事実、ブーマキメラは怒りに燃えるような雄たけびをブーブー上げるだけで、突進の勢いに急制動をかけて前につんのめりながらも、俺の方へ振り向いた。
激しい動きに、腹の傷は大きく開き、腸と思しき細長く連なった肉がズルズルと飛び出していた。とてもウインナーに使う気にはなれない、グロテスクな見た目である。
「ぶっ飛べ!」
根性を見せるブーマキメラの反応であるが、遅い。俺が追撃を決める方が、秒単位で早い。コンマ一秒を争う殺し合いの世界なら、その遅さは致命的に過ぎる。ほとんどの攻撃を、好きに叩き込める。
俺が選んだ攻撃は、鉈による斬撃ではなく、蹴りだった。
素で強化状態の俺が本気で蹴り上げれば、この体重三百キロはかたい巨漢のブーマキメラも、サッカーボールのように――とまではいかないが、空中をブッ飛ばすくらいはできる。
金的にクリーンヒットした俺の蹴りは、そのまま桃色の巨体を壁の向こう側へと運んで行った。タフな体を切り刻むより、さっさと落とした方が早いと思ったからこその、トドメである。
「榴弾砲撃」
重力の軛に囚われ、真っ逆さまに転落していく前に、ダメ押しで炎の黒魔法を叩き込んでおく。
壁の外まで放り出しておけば、熱波も爆風も味方を巻き込むことはない。多少は熱いかもしれんが。
素手のままで作り出した一発の黒榴弾は、いつも通りに高速回転しながら射出され、真っ直ぐ俺と落下直前のブーマキメラの間の僅か数メートルの距離を刹那で駆け抜ける。
着弾。爆破。赤と黒の禍々しい爆炎の華が咲き、ブスブスと黒炎に身を焼かれる豚の体は煙の衣をまといながら真っ逆さまに転落を始めた。
そこそこ立派なハーピィの羽は一度も羽ばたくことなく、無抵抗に落ちて行った。羽がついてるくせに、飛べない豚だったようだ。
「――うおおぉ! ちくしょう、強ぇぞコイツら!」
「ダメだ、通路まで上げるな!」
「登ってる途中で叩き落とせ!」
俺が豚を始末した間に、どうやら城壁のそこかしこで、キメラ兵がどんどん乗り込んできて猛威を振るっていることに気づかされる。
流石にスパーダ兵も一方的にやられるばかりではなく、剣を振るい、槍を突き出し、犠牲を払いながらも何とかキメラを仕留めているようだ。
城壁の上においてはこっちの数が圧倒的に優勢だが、こうしてキメラが散発的にでも暴れ続けたら、迫り来る戦奴本隊の迎撃にも乱れが生じる。事実、南の左翼側では、すでに二本ほど梯子がかけられているのが見えた。
「まずい、こんなところで押されるワケにはいかねぇだろ」
十字軍はまだ、威力偵察的に捨て駒をぶつけているだけの状況である。ここでスパーダ軍が少しでも怯んだ様子が見えれば、ヤツらの士気は上がって、勢い込んで攻め寄せてくるかもしれない。
「リリィ、フィオナ、俺達は優先してキメラを片付ける!」
最初に指示した通り、律儀に壁の向こうへ迎撃の炎魔法を撃ちづけるフィオナの元へ、俺は駆け戻る。
その途中で、息ひとつ乱さずに待っていたリリィと合流。勿論、カマキリ腕のウルフキメラの姿は、綺麗さっぱり消え去っていた。恐らく、光魔法で黒焦げになった無残な焼死体が、この壁の下に転がっていることだろう。
「うん、分かったよ!」
「了解です」
元気に答えるリリィと、そこはかとなくヤル気に満ちたようなフィオナの返答。
俺としても、戦奴をガトリングバーストでミンチにするよりも、あの化け物然とした哀れな実験体を殺してやる方が、気が楽である。
「ヤツらは高い機動力を持っている。できるだけ、壁に上がる前に叩きたい」
スパーダ兵が叫んでいた通りである。コイツらが大挙して乗り込んで来たら、本当に戦線が崩壊しかねない。見たところ、登ってきたのは十体にも満たない少数だが、これからどれだけ沸いて出てくるか分かったものじゃない。
この雪上を埋め尽くさんばかりに押し寄せてくる戦奴の大軍団、その内の何人がキメラなのか。
予想はつかないが、現れた分だけ、殺すしかない。
「それでは、あのフォーメーションの出番というワケですね」
「こんなに早く使うことになるとは思わなかったけどな……」
俺達『エレメントマスター』のフォーメーションは、何も対サリエル用の『逆十字』だけじゃない。ちゃんと、色んな状況、というより、このガラハド要塞で戦うことを前提としたフォーメーションを、幾つか考えてある。
もっとも、ほとんど考えたというだけで、あまり練習もしてないのだが。練習する時間も場所も機会もなかったというのは、言い訳だろうか。
ともかく俺は今、ほとんどぶっつけ本番で、新たなフォーメーションを実行しようというのだ。かなり不安は残るが、覚悟を決めて、やるしかない。
「いいか、フィオナはその場で援護。どうせ俺とリリィしかいない、存分にぶっ放せ」
「はい、張り切って撃ちます」
本当はちょっと抑えて欲しいが、ここは嘘でもそう言っておかないとな。
「リリィは俺と一緒に最前線だ。変身はナシだが……いけるか?」
「大丈夫だよ、リリィがクロノを守るから!」
「ああ、背中は任せた」
これで確認は終了。後は思い切って――この壁を、飛び下りればいいだけだ。
「……魔手」
リリィと並んで壁の上に立つなり、俺はローブの左裾から漆黒の鎖と、『影触手』本来の形状である、登攀用の返しの突いた刃を先端に形成して、石の壁面に打ち込む。
「制御は任せるぞ、ヒツギ」
「はい、お任せくださいご主人様!」
いつもの能天気な返事だが、今はヒツギ、お前を信じるよ。心から。これからお前が、文字通りに俺の命綱となるのだから。
「よし、それじゃあ行くぞ――フォーメーション『垂直戦線』!」