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黒の魔王  作者: 菱影代理
第19章:ランク5冒険者
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第374話 古代兵器

 十字軍貴族派の大将、ベルグント伯爵は焦っていた。

「――何時になったら、魔族どもの反乱は治まる! リュクロムは何をしている、あの忌々しい賊どもの活動は鎮まるどころか、むしろ激化の一途を辿っているではないか」

 ダイダロス軍の残党による領内各地での反乱によって、ベルグントはガラハド要塞攻略のGOサインを出せずにいる。

 すでにアルザス要塞は完成し、兵も物資も充実しており、戦の準備は整っている。いや、整っていた、というべきか。

「アルザス近辺、ダイダロス西部で起こった反乱の鎮圧は、もっぱら我が軍が引き受けているのだぞ。所詮は低脳な魔族による烏合の衆、こちらの損害は軽微だが――」

 軍は、ただ動かすだけで金がかかる。しかし、少々の軍資金よりも彼が惜しむのは『時間』であった。

「……すでに、当初の侵攻計画に大きな狂いが生じている。本来なら、ガラハドどころか、スパーダの王城に十字の御旗を掲げていたというのに! それが、あの小賢しい魔族どもの跳梁跋扈によって、我らは未だアルザスより一歩も踏み出せておらん!」

 何たる愚かしさ、と苛立たしげにベルグントは綺麗に撫でつけられた深緑の髪をかく。

「このダイダロスがあるパンドラ東部は、冬になると結構な雪が降るそうですよ。あと一月ほどで、初雪が見られるかもしれませんねぇ」

 部下が見ればとても近寄りたくないと思うほどに荒れているベルグントだが、彼にかけられた男の声はどこまでも軽い。

「何を呑気なことを言っおられる、グレゴリウス司教殿! 春を待っていては遅い、遅すぎるのだ!」

 まるで空気を読んでいないかのように、軽薄な口調に薄ら笑いを浮かべていられるのは、伯爵たるベルグントと同等以上の司教という地位を持つからだ。

 メルセデス枢機卿がパンドラへ派遣した大軍を預かるグレゴリウス司教は、狐のような細目をさらに細めてあっけらかんと笑う。

「大丈夫ですよ、春なんか待たず、冬に攻め込めばいいじゃないですかぁ」

「馬鹿なっ!」

 まるで他人事のように無責任な台詞に、ベルグントの声はさらに荒ぶる。

「極寒の雪山に構える要塞に挑むなど、いくら相手が魔族とはいえ愚策に過ぎる!」

 冬将軍、という言葉さえ知らないのか。真冬に戦を仕掛ける危険性など、騎士学校の一年生でも理解できるというのに。

「でも、時間がないのなら仕方ないじゃあありませんか。このまま春まで待っていれば、兵は温存できるでしょうが、貴方の首は、どうでしょうね?」

 究極的に、ベルグントが時間にこだわる理由はそこにあった。

 ベルグントは単独でパンドラ遠征にやってきたワケではない。ダイダロス占領を成功させた教会の後塵を拝さぬよう、シンクレア共和国の貴族が結託した、連合軍として派遣しているのである。

 第七使徒サリエル率いる十字軍が一挙にダイダロスを陥落せしめたように、シンクレア貴族が望むのは、早期に新たな国・領土を占領することである。その理由や思惑は様々だが、つまるところ、一日でも早く利益が欲しい、と願う人間の浅ましい欲望が根底にあるのは間違いない。

 そして、ベルグント伯爵はそれを承知で、むしろ、早期決着を自ら約束して大将となったのだ。

 そうして貴族の期待を一身に背負い、要塞の攻略に不足がないほどの大軍をもってパンドラまでやって来たのである。

 しかし、このまま来年の春を待てば、到着より半年以上もの時をかけて、戦の準備だけで何の成果もあげていない、という結果となる。そこにどんな理由があろうと、本国の貴族達を納得させることはできないだろう。

 無能と判断されたベルグントは更迭され、すぐに新たな大将、同じ戦自慢の貴族がやって来るに違いない。その後釜となる者は、ベルグントが心血を注いで建設したアルザス要塞と、数万もの数を揃えた無傷の兵士、ため込んだ軍需物資をそのままに、すぐにでもガラハド要塞攻略戦を始められるだろう。

 それでは意味がない。準備だけ任されて、良いところは別の者が持っていくなど、これではまるで奉公人、いや、奴隷の仕事といってもよい。

 攻略準備は完璧に整っていると自負しているが、それを評価してくれる者は誰もいない。戦に勝利しなければ、どんなに優れた実力も実績も、日の目を浴びることはないのだから。

「くっ……やはり、今、仕掛けるしかないということか……」

 魔族の反乱は放置しておくには危険にすぎる。下手をすれば、攻略戦に出払った矢先に、アルザス要塞を奪われるかもしれない。

 もしもそんなことになれば、出陣した自軍がダイダロス残党軍とスパーダ軍に挟まれ全滅することは勿論、最悪、アルザスを新たな拠点として魔族が領土奪還の巻き返しを図るかもしれないのだ。

 それはつまり、十字軍が手中に収めたはずのダイダロス領の存続さえ危ぶまれるということ。とても一将軍の失態、では許されない損害である。

 だが、どの道このまま座して待てば自らの破滅は避けられないのである。ならば、リスクを冒してでも、チャンスにかけるのは当然の選択であった。

 苦渋の決断だが、ベルグントは覚悟を決めた表情を浮かべる。

「あっはっは、何を焦っておられるのですかベルグント伯。その悩みを解決するために、わざわざこんなところまで来たんじゃないですか!」

 その決意を、文字通りに笑い飛ばすグレゴリウス。その目はまるで、些細なことに悩み患う年頃の少年を見ているようである。

「『白の秘跡』については聞き及んでいる……だが、怪しげな実験で生み出した怪しげな兵士を借りたところで、根本的な解決になどなるわけがないだろう」

 二人が今いる場所は、ダイダロス近郊に立地するメディア遺跡、そのジオフロントを丸ごと利用して建設された、教会の研究組織『白の秘跡』、第四研究所である。

 司教と伯爵という高貴なる人物を迎えるには、無粋にすぎる硬質な石造りの部屋は相応しくないが、元よりダンジョンの一部であったと思えば、これでも上等な方だろう。

 お互いに向かい合って腰かけるそれぞれの椅子も、資料の散乱するテーブルも、研究者が使う実用重視のもので装飾性の欠片もない。

 この応接室とも言い難い、だだっ広いだけの室内にあっては、キラキラと着飾る司教の法衣と、ビシっと決まった軍装の伯爵こそが、かえって浮いた存在である。

 それでも、遠くアルザス要塞からここまで足を運んだのは、『白の秘跡』が開発した『神兵』という兵士を借り、少しでも戦力増強に役立てようという目的であった。

 もっとも、ベルグントは頭の固い研究者連中が作った、屍霊術士ネクロマンサーシモベだか、召喚士サモナー使い魔サーヴァントだか、よく分からない人形兵士に、それほど戦力としての期待は抱いていない。

 グレゴリウスが是非に、と誘わなければ、わざわざ来ることもなかったのだが。

「どうぞ、ご安心をベルグント伯」

 やや薄暗さを感じさせる光魔法の証明に照らされながら、グレゴリウスは如何にも聖職者らしい穏やかな語り口で、悩める仔羊たる伯爵に語りかけた。

「魔族の反乱は、もうすぐ完全に収束します」

「……何故、そう言い切れる?」

「ここ最近の反乱騒動の目的は、首都奪還ではなく、この第四研究所に収容されていたガーヴィナルの遺児、つまり、ダイダロスの王子を救出することだったんですよ。まぁ、その目論見は、つい先日の襲撃が失敗したことで、もう潰えてしまったんですけどね」

「いや、しかし……残党軍はそれなりの数があるはずだ、一度襲撃を退けたくらいで、壊滅すると決めつけるのは楽観しすぎでは?」

「いえいえ、本当にほとんど全滅なんですよ、これが。ここを襲ったのは、反乱軍の中核をなす精鋭部隊、ダイダロス軍の幹部級も勢揃い。そうですね、数はざっと二千といったところでしょうか」

 二千の精鋭を本隊として、各地で暴れる陽動部隊の数を含めれば――なるほど、予想される潜伏兵力としては妥当な兵力数になる、とベルグントは即座に理解した。

 そうでなくとも、反乱を仕切っていた元将軍が全て死んだというなら、組織の崩壊は確実。真の意味で、彼らは烏合の衆となるだろう。

「それにしても、そんな情報は私の耳には入ってこなかったのだが?」

「本当につい最近のことですので。それに、襲撃を撃退した張本人たる、研究所の防備にあたっていた警備兵と冒険者、まぁ、『白の秘跡』という組織そのものが、この事に関してあんまり情報提供してくれないってところが、大きいんですけどね。何せ、ジュダス司教がほとんど一人で撃退した、とか冗談を真顔で言ってくるくらいですからね! あっはっは! ともかく、近いうちに、サリエル閣下率いる十字軍本隊が首尾よく討伐した、なんて建前で広報すると思いますよ。『白の秘跡』は、より研究を円滑に進めるために十字軍へ手柄を売った、ということでしょうねぇ」

 そのまま、ペラペラと実によく回る口で語り続けるグレゴリウスの話を聞けば、すでに二千近いダイダロス兵の死体が、新たな研究素材としてここで利用されていること、捕えた幹部から、すでに反乱軍の情報を引き出していること、などなど、すでに反乱軍壊滅が疑いないと理解も納得もできた。

「……なるほど、可能性が見えてきましたぞ」

 ダイダロスの反乱騒動は、もうあと少しで完全に解決されるだろう。後顧の憂いは断たれた。

 だが、攻略戦を始める時期としてはギリギリ、いや、すでにして、かなり厳しいだろう。

 攻城戦は、相手がよほどの下手を撃たない限りは、長期戦となりやすい。年単位で包囲を続ける例は、シンクレアの戦史を紐解けば幾つも出てくる。

 最初の攻撃であっさり要塞が陥落しなければ、攻略がある程度長引く危険性が出てくる。にらみ合いの構図が出来上がれば、あっという間に冬が到来し、あの峻険なガラハド山脈にて兵士たちは吹雪という名の白い牢獄に閉じ込められるだろう。

「話はこれだけではありませんよ。私はなにも司教という地位だけで、メルセデス枢機卿猊下の大事な大事な兵士を預かっているわけではないんですよ。自慢じゃあないですけど、これでも多少は戦の心得というのを持ち合わせていまして――」

「ふむ、そこまで言うからには、私の悩みもお見通し、ということですな?」

「ええ、そうですとも。実はですね、雪が降っても攻城戦を続けられるだけの準備、あるんですよ」

 ニヤリ、という擬音語が目に見えるほどに、グレゴリウスは口角を釣り上げて笑みを浮かべる。

「ダイダロスは隣国スパーダに何度か戦争を仕掛けていた、という話は御存知ですか?」

「まぁ、人並みには。ガーヴィナルとかいう竜の王は、大陸統一の野心を抱いていたと。武力のみで支配しようなどと、全く、馬鹿馬鹿しい限りだ」

「けど、彼は本気でした。だからこそ、あるんですよ、スパーダを本当に陥落させられるだけの準備が、ね」

「……まさか」

「竜王ガーヴィナルは度重なる敗戦によって、腹心である人間の宰相、あぁ、この人はもう自害しちゃったんですけど、ともかく、彼の進言を取り入れ、一つの用意をしたそうです。それは、長期戦に必要な兵站の確保というものです」

 ガーヴィナルは、シンクレア共和国の人間が思い描く魔族の王と、全く一致する人物像であった。

 ドラゴンという強力かつ恐ろしげな種族というのも勿論、彼が決戦や大将同士の一騎打ちなどといった『古い戦い方』にこだわる面が、特に該当する。

 つけ入る隙は、いくらでもあった。故に、スパーダに負けた。

「その中には、冬季戦闘の用意というのも含まれるんですよ」

 だが、ガーヴィナルはついに己の信念を曲げて、宰相の諌言を受け入れたようであった。

 もし、十字軍の侵略が来年であったなら、そのダイダロス史上初となる現代的な攻城戦が実施されていただろう。

「ダイダロスの街道が魔族の国にしては広く整備も行き届いていたのは、進軍は勿論、兵站輸送もスムーズに行うことを想定されたものなのですよ。他にも、ダイダロスには兵士の冬季装備となる毛皮のコートや手袋、ブーツ。暖をとる為に、広範囲に熱を発生させる火属性魔法の結界なんてものも研究されていましたね。ああ、そうだ、他にも除雪用に飼いならした白毛のドルトスもいましたよ。いやぁ、中々に面白いことを考えるものですねぇ、魔族って」

 その説明は、ベルグントの予想を超えるものであった。話を聞けば聞くほど、冬季戦闘を実行できる可能性が上がっていく。魔族、と心の底では侮ってはいたものの、聞く限りではかなり用意周到に準備がなされているようであった。

 望外の幸運――いや、もしかすれば、これこそが白き神のお導きなのやもしれない。思えば、第七使徒サリエルは自分にこう言ってくれた。


「スパーダ攻めが早く始まることを私も願っています。ベルグント伯爵、貴方に神のご加護があらんことを」


 そう、あれは前兆だったに違いない。ただの司祭が言えば、何てことのない決まり文句でしかないが、人よりも神に近い使徒が言えば、真に『神のご加護』が与えられてもおかしくない。

 つい先ほどまで、後がない絶体絶命のピンチに立たされていた気持ちが、今では自分の成功が約束された絶好のチャンスに思えてくる。

「素晴らしい情報を、ありがとうございます司教殿。可能性どころか、今はっきりと希望が見えましたぞ」

「いやぁ、はっはっは、感謝の言葉はまだ早いですよベルグント伯。私がここへお誘いした理由は、あるモノをご紹介したかったんですよ。ですので、まずはそれをご覧になられてはどうでしょう」

 まだ何かあるのか。あまりに自信に満ちた司教の口調に、ベルグントは否応にも期待が高まる。

「本来なら、開発者本人であるジュダス司教が自慢すべきものですが、今は席を離れているので、私が変わりに紹介と説明をさせてもらいますよ。それでは、ご覧ください――」

 グレゴリウスは大仰に言いながら、軽く手を鳴らす。

 室内には機密保持のために、違いの付き人も、まして研究者も同席してはいない。

 しかし、それは確かな合図となっていたようで、ガキリ、という何かの作動音が響き渡った。

 次の瞬間には、錆びた鉄扉を開くような甲高くも鈍い金属音を奏でながら、部屋の壁の一面がゆっくりとスライドを始めた。

 ベルグントは若き頃、修行の一環として遺跡型のダンジョンに潜ったことがある。現代では再現不能な、高度な魔法機構を備えた古代の遺跡には、このように壁が動いたりするギミックはよく見られる。

 うっかり何かの装置を作動させ、壁面が移動してパーティと分断されてしまった若い頃の失敗談が、不意に脳裡を過った。

 しかし、そんな在りし日の思い出はすぐに頭から消え去る。開かれた壁の向こう、そこにある信じがたい光景を目にして。

「ま、まさか……これはっ!?」

 そこにあるのは、巨大な鋼鉄の人型であった。

 円筒形の寸胴なボディに、短い脚と長めの腕。頭には大きな赤い一つ目モノアイが輝く。それは、アルザス要塞の建設でも使用された作業用ゴーレムとよく似た姿だ。

 しかし、そのサイズは規格外。現場で見なれた作業用ゴーレムは、小さいものは二メートル、どんなに大きくても五メートルに届くかどうかといったところ。だというのに、開かれた壁の向こう側に立つソレの大きさは、優に十メートルを超えている。作業用ゴーレムの二倍、いや、これほどの大きさならば三倍以上はあるかもしれない。

 一目だけでは大雑把にしか判別できないが、その巨体の足元で忙しなく行き交っている研究員の姿がちょうどよい比較対象となり、圧倒的なサイズだけははっきりと印象付けられる。

 だがしかし、何よりも驚かされるのは、そんな巨大ゴーレムが何体もズラズラと立ち並んでいることである。

 この部屋はゴーレムが並ぶ空間よりも高い位置、あの大きさを見下ろせるだけの高さ、ということは五階か六階建てほどの高所だと推定できる。

 そんな見晴らしの良いここから眺めてみるに、巨大ゴーレムは横並びの一列につき六機、それが四列続いていることから、合計で二十四機も存在していると判明した。

「どうです、中々に壮観でしょう『エンシェントゴーレム』が立ち並ぶ姿は。大きいですねぇ、カッコいいですねぇ、男ならやはり、巨大なモノにはロマンを感じますよね!」

 うんうん、と大げさに唸りながらグレゴリウスは白々しい感想を述べる。だが、それを気にするだけの余裕はベルグントにはない。

 彼の深緑の瞳には、鈍色の光沢を放つメタルボディの圧倒的な巨躯しか映らないのだから。

「あれらは全て、このメディア遺跡で発掘されたんですよ。半分はすでに発掘済み、もう半分はジュダス司教が隠し倉庫から見つけ出したそうです。ガーヴィナルもコレの利用を考えていたんでしょうが、ダイダロスの魔術師には荷が重かったようですね。いやぁ、ゴルドランの戦いにこんなのが十二機も投入されてたら、負けてましたよ」

 勝利を遂げた今だからこそ、冗談で済ませられる話である。

 だが、ここはゴーレムを起動させるに至らなかったダイダロスの魔術師を貶めるのではなく、たった数カ月で仕上げてみせた『白の秘跡』の技術力の高さを賞賛すべきだろう。

 あのモノアイに光が灯っている、ということは、その機体にはエネルギー源たる魔力が通り、起動準備が整ったことの証である。

「全機の稼働と動作実験、パイロットの用意など、実戦で使用するまでに二ヶ月は見てほしいとのことです。ちょうど冥暗の月の初め、それなりに雪も積もっているでしょうが、これだけのゴーレムを攻城戦に投入できるなら、勝算は十分かと」

「……本当に、いいんだな?」

 何が、と間抜けな返事をするほど、グレゴリウスは鈍くないらしい。打てば響くように、期待通りの答えをよこす。

「ジュダス司教は、このエンシェントゴーレム二十四機を十字軍のスパーダ攻略へ提供することを、すでに約束しております。ベルグント伯には、是非とも有効活用してもらいたい、との言付けを預かっていますよ、はい」

「そうか」

「ええ、他にも、最終調整を済ませた神兵部隊や、ダイダロスの飛竜で作った空戦部隊、そうそう、かの二千名の反乱軍を元にしたキメラ兵なんかも用意したそうで――」

「そうか、そうかぁ! ふふっ、ふははははっ! 勝った! これなら勝てる、いや、どんな無能でも、これほどの兵力があって、勝てないはずがない!!」

 満面の笑みで高笑いをあげるベルグントは、最早グレゴリウスの追加説明など聞いてない様子。だが、それでも司教は蒙の啓けた信者を前にしたような微笑を浮かべて言った。

「ご満足いただけたようで、幸いです。それではベルグント伯、ガラハド要塞の攻略、よろしくお願いしますよ」

 これで第19章は完結です。

 グレゴリウス司教とベルグント伯爵。二人が会話するシーンは第178話『魔族狩り(ハンティング)』以来となります。この話の掲載日は2011年12月22日・・・なんと一昨年も前です。本当に、伯爵には一日でも早くスパーダ攻めを始めてもらいたいですね・・・

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