第1061話 暁の前哨戦
「馬鹿なっ、どうして『リンドヴルム』が!?」
スプリガンを上回る体格と出力を誇る新型機リンドヴルムが、搭載されていたエーテルクラフトを破壊した炎を背景に立ち上がる姿を、オルテンシア軍の兵士達は驚愕の表情で見上げた。
自分達を勝利に導く絶対的な力の象徴、オルテンシアの守護神が牙を剥いたことに、誰もが信じられないと言った気持ちを抱かざるを得ない。
だがしかし、彼らが衝撃から立ち直る時間を、黒き戦人機は待ってなどくれない。
「まずい、奴め、他の機体も狙っているぞ!」
「緊急出撃だ! とにかく新型機を止める!」
「エーテルクラフトのシールド出力を最大に! 撃ってるくぞ!!」
混乱の中で真っ先に動き出したのは、精鋭中の精鋭たるパイロット達だ。何はともあれ、己の駆る機体に乗り込み戦うべく、反射的に体が動く。
すでに発進待機状態にあったスプリガンは、次々に出撃してゆく。
その頃には、手近な攻撃目標をひとしきり撃ち抜いたリンドヴルムが燃え盛るエーテルクラフトから、大地へと降り立っていた。
「プリム、操縦の感覚は掴めましたか」
「はい、問題ありません。スプリガンよりも動かしやすいです」
「私もです」
これぞ女神の加護、というワケではなく、単純に操縦のための魔力性質が自分に近い設定になっているが故の結果である。
しかし、ここでより自分に見合った機体と出会えたことこそ、神のご加護と呼べるかもしれない。
サリエル機とプリム機は、揃って次のターゲットを攻撃すべく、手にした武装を向ける。
リンドヴルムの武装は、スプリガンとは異なる専用装備だ。体格に見合った大型ライフルと大盾。サブウエポンに手斧が腰部背面にマウントされている。
大口径の大型ライフルを二機は隣に停泊しているエーテルクラフトへと向けた。
赤い燐光のマズルフラッシュを瞬かせ、天空戦艦の副砲並みの威力を誇る光弾が放たれる。
ただでさえ巨大な艦船であるエーテルクラフトだ。外しようのない大きな的に直撃するが、エメラルドに輝く結界によって防がれた。
『妖精結界』と色こそ違えど、その万能の防御力は変わらない。古代の船に相応しい出力でもって、攻撃を凌ぎ切っていた。
「すでに敵船のシールドが起動している。これ以上の破壊工作に効果は薄い。離脱する」
「……了解」
新型機の奪取に成功した勢いで、つい更なる武功を求めてしまいそうになるが、サリエルは冷静に戦況を見極め、速やかな撤退を決断した。
最重要なのは、ここで敵陣を蹂躙することではなく、自分達が機体と共に、無事に帰ることである。
今ここで、自分達だけでオルテンシアとの決着をつけるよう焦る必要はない。
「行かせるかぁ!」
「裏切者かと思ったが……貴様、帝国軍だな!」
「戦人機を奪うとは、なんと姑息な手を!」
本陣からの急速離脱を図る二機の前に、出撃してきた戦人機部隊が現れる。
スプリガン五機編成の小隊。装備も標準。数は相手の方が上だが、新型機の性能をもってすれば勝てない相手ではない。
だがしかし、背後からは更なる増援も迫ってきている。少しでも手間取れば、あっという間に包囲され逃げ場も失う。
「強行突破」
「プリムが先行します!」
大盾を構え、ブースト全開でプリム機が突っ込む。
速度は乗っているが、ただ真っ直ぐに突進してくるだけの相手。スプリガン小隊は前方へ半包囲するように散開しながら、それぞれがライフルで狙いをつける。
数を活かして3機が進行方向を塞ぐよう正面に陣取り、2機が盾でもカバーしきれないほどの両サイドへと回り込んで行く。
前を塞ぎ、側面を突く。基本的だが確かに効果的な配置でもって攻めるが、
「ちいっ!」
プリム機を盾に真後ろに続くサリエル機から放たれる、正確無比かつ素早い牽制射撃によって、両サイドの狙い撃ちが阻害される。
戦人機の操縦は、生身を動かすように、とよく言われるが、実際に生身の体とは大きな違いをパイロットは実感することとなる。
射撃一つとっても、それは顕著に現れる。
人の身で銃を撃つ時、最も安定するのはうつ伏せに寝た状態の伏せ撃ちの姿勢だ。とにかく止まった状態で射撃するのが安定する、というのは当たり前のこと。
歩きながら、走りながら、と移動を伴う射撃になれば、命中率が格段に下がって行くということは、すでにブラスターが歩兵装備として普及しているオルテンシア軍の兵士にとっては常識だ。
生身でも難しいのに、戦人機の操縦となれば、射撃の難易度もさらに跳ね上がる。
高速でのブーストダッシュをしながら、動くスプリガン複数機を正確に狙うなど、一部のエースしかできない戦闘機動である。
「どうなってんのよ、帝国に戦人機乗りなんていないはずでしょ!」
「コイツの動き、普通じゃねぇぞ」
「これが新型機の力なの!?」
「来るぞっ、止めろぉーっ!!」
出力全開で突っ込むプリム機は、正面に陣取り後退しながら射撃をする引き撃ちに徹するスプリガンと距離を詰め、いよいよ近接武器で斬り合うか、というほどにまで迫った瞬間、
「なっ!?」
「飛ん――――」
突然の変化にスプリガンのパイロット達は絶句する。
だがエリートとして卓越した能力は、確かにリンドヴルム二機の動きを捉えていた。
まずプリム機がこのまま突進をかけるかという勢いの最中で、急制動をかけた。一気に開きかける間合いの中で、プリム機を飛び越し後続のサリエル機が飛んだ。
ブーストを吹かすと共に、プリム機が構えた大盾の上辺を蹴り上げ、瞬間的に飛び上がり、漆黒の巨躯が宙を舞った時には、すでにトリガーは引かれていた。
「くっ……」
「突破された!」
反射的な回避行動によって致命傷こそ避けた正面の三機だったが、完全に行く手を塞ぐための陣形は崩れ、リンドヴルムはそのまま真っ直ぐ駆け抜けていく。
「あんな曲芸みたいな真似を」
「帝国のパイロットはイカレてやがる」
「アイツら絶対逃がすんじゃないわよ!」
「すぐに追うぞ、全機続けぇーっ!!」
『――――いいや、そこまでだ。戦人機部隊、撤退せよ』
決して逃がしてなるものか、といきり立つ戦人機部隊へ届いたのは、どこまでも冷めた麗しい声音。
聞き違えるはずもない、己が使える主の命令であった。
「し、しかし、陛下……このままでは、新型機が帝国に……」
『構わん。すでに包囲は突破された。その無様に乱れた隊列で深追いすれば、罠にかかるだけであろう』
絞り出すような問いかけに、女帝エカテリーナは怒ることなく、理路整然と言い放つ。
それ以上、異論を唱えるような者はいなかった。
『仕切り直しだ。速やかに戻れ』
「御意」
屈辱と共に、新型機の黒い背中を彼女達は見送った
◇◇◇
気が付けば、すでに夜は明け、太陽の光がアスベル山脈の向こう側から覗く。決戦の日の朝がやって来ると同時に、二人の英雄が帰還した。
「サリエル、プリム、よく無事に帰って来てくれた」
漆黒の戦人機から降りた二人を、俺は真っ先に迎え入れる。
どちらも怪我などは一切なく、黒いパイロットスーツはテカテカの新品同様。しかし、ボディラインが露わになるスーツ姿で二人が並ぶと、なかなか凄い対比になるな。
だが今は下心なんぞより、二人が無事に帰還したことへの安堵感で胸がいっぱいだ。やっぱ敵陣への潜入なんてやらせるものじゃないな。俺の心が保たん。
「少々予定と異なりましたが、戦人機の奪取は成功」
「新型機、リンドヴルムです!」
「ああ、本当によくやった。敵の新型機を奪ってくるなんて、まるで……いや、とにかく想定以上の成果と言っていいだろう」
敵の新型機を奪うという、物凄く聞き覚えのあるシチュエーションにちょっとテンション上がってしまうが、それを語って喜ぶのはファナコだけなので、オタトークを披露するのはやめておく。
誤魔化すように、プリムの頭を撫でておく。ちょうど褒めて欲しそうな目をしていたので。
「ですが、本陣への破壊工作は軽微なものに留まりました」
「コイツを載せていた船を一隻破壊しただけ上等だよ」
シールドがなければ、そのままエカテリーナの乗る旗艦を攻撃して決着、ってこともありえたが、流石に重要な防御能力は万全に機能させているようだ。
旗艦『クリームヒルト』の結界は天空戦艦並みのようだし、他のエーテルクラフトもしっかり軍用で、戦人機の手持ち武装でちょっと突いたくらいでは、シールドを破壊することは出来ない。
オルテンシア軍は戦人機を抱えるエーテルクラフトそのものが城のようなものなので、仮設の野営地を焼き払ったところで、向こうとしては大した損害にはならないだろう。
「重要なのは、戦人機を二機も手に入れたことだ」
出来る限りの対策、準備はしてきた。ロンバルトとの戦いもあり、帝国軍は戦力を二分された形となるが、それでもオルテンシアの戦人機軍団に対抗できるよう、総力を振り絞ったのだ。
それでも、戦力的な不安は拭い切れない。今回はレーベリア会戦のように、相手を圧倒するに足ると確信できるほどの戦力ではないのだ。
嫌でも綱渡り、ギリギリの作戦遂行が求められる。
そんな中で、真っ向から戦人機を相手にできる、本物の戦人機が手に入ったのは大きい。これで多少の綻びが出ても、持ちこたえられるだけの力がある。
「しかし、随分とあっさり追撃を止めたな」
「あえて見逃したものかと」
「お陰で用意していた罠が全部無駄になった」
虎の子の戦人機を奪われれば、怒り心頭で押し寄せてくると見越して、色々と仕掛けていたのだが……エカテリーナの命令だろうか。サリエルとプリムが最初の包囲を超えた時点で、追撃を打ち切っていた。ほとんどそのまま見送ってくれたような状態だ。
あの状況下でパイロットに強く制止を訴えられるとすれば、君主たるエカテリーナだと思われる。
新型機を奪われても、戦力的には全く問題ないという余裕だろうか。それともこっちの罠を見抜いて、更なる損害を避けたか。
どちらにせよ、まだオルテンシア軍に焦りのようなものは見られない。
「きっちり仕切り直して出て来るだろうな」
「聞き取った会話から、夜明けと共に総攻撃をかける手筈だったようです」
ならば堂々と予定通りに作戦を遂行してくるはず。
まぁ、こちらも今日が決戦と思って来ているのだ。まずは戦人機奪取という先制攻撃が成功している。良い流れだ。
「よし、予定通りにここで迎撃準備に移る! 総員、配置につけ!!」
「オール・フォー・エルロード!」
レーベリア会戦のように、俺達も開けた場所へと移動する意味はない。オルテンシアは戦人機軍団に絶対の信頼を置いている。俺達が草原のど真ん中に布陣しようが、要塞に立て籠もっていようが、関係なく攻撃を仕掛けてくるつもりだろう。地の利など容易く覆す圧倒的な戦力を誇るからだ。
だから俺達は、このまま国境砦に陣取っていれば良い。必ず向こうから来てくれる。アヴァロン首都に引っ込まず、ここまで出張って来ているのだから、俺の対決の姿勢は十分に伝わっているはずだ。
「さぁ、来いよエカテリーナ。地獄の特訓の成果、見せてやるぜ」
◇◇◇
「――――見よ、ナタリア、涙ぐましい努力だと思わぬか」
「はい、陛下。仰る通りかと」
空中偵察より送られた帝国軍の陣容を眺め、エカテリーナはほくそ笑む。
新型機の強奪、という奇襲には驚かされたが、それでも目の前に集った帝国軍の戦力は全て想定内だ。
この場を決戦の地と定めていたのだろう。国境砦は明らかに元のものより増築され、規模を拡大している。
まずは城塞都市のような、円形に囲った大きな防壁。直立した戦人機と同じ程度の高さで、幅は通常の三倍近くある。
分厚い防壁は明らかに対人ではなく、対戦人機を想定した防備であろう。さらに防壁の上には、四脚戦車が展開され、数々の大砲と共に砲口をこちらに向けていた。
本丸となる砦は、とにかくそのまま防御を増した、というような無骨極まる外観。戦人機相手であれば、人が立て籠もるだけの砦にさほどの優位性はない。天守を高くしても的になるだけであり、やけにずんぐりした不格好な見た目だが、合理的ではある。
その砦には、帝国で急速に実用化が進んでいる貨物列車の線路も引き込まれており、純粋に軍事拠点として見れば、その規模と防備からして大要塞と言っても良いものだ。
しかし、そんな要塞に集められた帝国の精鋭達も、オルテンシア軍の戦人機軍団を前にすれば、寄せ集めのレジスタンスも同然に見えてしまう。
「やはり頼りは天空戦艦と黒竜か」
「我々がいなければ、あれだけで天下を獲ることもできたのでしょうね」
空飛ぶ古代兵器に伝説級の黒竜軍団だ。パンドラ大陸に住まう者なら、これ以上ないと思えるほどの戦力。
これを従えたクロノは、なるほど魔王と呼ぶに相応しい。
「奇策は不要。正攻法で攻める。戦人機部隊、前へ」
相手を圧倒する戦力があれば、ただ真正面から攻めれば良い。これぞ王者の戦い、と言わんばかりに、エカテリーナの命令通り、整然と戦人機スプリガンが並び立つ。
オルテンシア軍の最前列を行くスプリガンは、ブースターを吹かさず、ただその足で大地を歩く。ゆっくりと、着実に、小さき者を踏み潰す巨人が如き威圧感をもって、帝国軍へ向かって進み行く。
「航空隊も発進準備を整えよ。天空戦艦を落とせば、そこで勝負は決まる。だが油断はするな、黒竜には飛竜型もいる」
この戦いで気を付けるべきは、もうそのくらいしか見当たらない。
後は全て小勢に過ぎぬ。
防壁上に並んだ四脚戦車も、巨漢自慢の『巨獣戦団』も、物の数ではない。ラグナの黒竜軍団の地竜型は、唯一真っ向から戦人機と殴り合えるサイズだが、数はこちらの方が勝る。
「陛下、どうやらネヴァーランドの一団も帝国軍に加勢しているようです」
「ほう、魔王と吸血王子が旧知であるらしい、とは聞いていたが、真であったようだな」
ネヴァーランドは大陸北部において、唯一占領していない国である。
手出しができないほど強いからではない。占領する戦略的価値が無いからだ。故に降伏勧告を呼びかけ、国境に最低限の監視を置くに留めた。
「この戦いの後、ネヴァーランドを潰しておきますか?」
「ナタリアよ、お前は幼い頃、庭先の石をひっくり返しては、そこに蠢く地虫を眺めて遊んだことはあるか」
「はっ、いえ……私にそのような趣味は、子供の頃にもありませんでしたが」
「私もそうだ。日の当たる表に出て来ぬ者は、そのままにしておく方が良い」
ここで明確な敵対行動を見せたからと言って、わざわざ侵攻する必要性も無い。捨て置け、と暗にエカテリーナは語った。
魔王の帝国軍でさえ、相手になりそうもないのだ。吸血鬼の小国如き、気にするはずも無い。
「そろそろ射程に入ります」
「うむ」
まだお互いの攻撃が届く距離にはない、目視ギリギリといったところで、オルテンシア軍は停止。旗艦『クリームヒルト』を中心に、エーテルクラフトが盾となって守るような配置につく。
その甲板には出撃を待つ戦人機が勢揃い。号令一つ下れば、鋼鉄の巨人軍団は即座に飛び出して行くだろう。
そして陣形の最前列には、盾を構えライフルを携えた標準装備のスプリガンが、横並びで立つ。
この戦人機の進撃を真正面から食い止められる存在があるか――――いいや、無い。オルテンシア軍は必勝の確信をもって、眼前の魔王軍を見つめていた。
「見ているか、『北天星イオスヒルト』よ……私に運命など無い。お前が与えたこの力をもって、全てを手に入れよう」
万感の思いを込めて、イオスヒルトはそう独り言を呟く。
魔王クロノの存在が、自分をこの時代に目覚めさせた女神の導きであることは間違いない。
しかし、だからこそ、エカテリーナはそれを否定する。
パンドラ大陸統一という覇道でもって、それを証明するのだ。
「陛下、攻撃準備、整いましてございます」
ナタリアの言葉に、静かに頷く。
後は一言、命を発すれば戦いは始まる。
前口上は必要ない。顔合わせはすでに済ませている。そして確信している、魔王クロノこそ自分が倒して乗り越えるべき、最大の障害であると。
エカテリーナは、恐らくクロノがいるだろう、要塞の直上に浮かぶ天空戦艦エルドラドを見つめながら、その手を奮った。
「――――薙ぎ払え」
女帝の命に従って、前衛として立ち並ぶ戦人機部隊が一斉にライフルを放つ――――その寸前であった。
ドッ、ドッ、ドォーン……
高らかな遠雷が轟くような砲声。
先に砲火を上げたのは、帝国軍の方であった。
「この距離で撃ってきたのか」
届くはずがない。戦人機のライフルでも、有効射程ギリギリ、初撃の牽制程度で始めた射撃である。
帝国軍が防壁上に並べた、四脚戦車や大砲の口径から見ても、こちらに届くほどの長射程を誇るとは到底思えない。事実、戦人機の戦列にまで届いた砲弾は一発も無く――――否、そもそも攻撃ではないことが、直後に明らかとなった。
「これは……煙幕、ですね」
「小賢しい」
炸裂したのは、濛々と煙る黒い靄だった。
煙幕で視覚を遮るのは、確かに基本的に目視に頼る戦人機に有効ではあるだろう。
しかし本物の古代兵器たる戦人機が、ただ視界を塞いだくらいで無力化できるはずもない。各種センサーによって、周囲の状況を把握する術はあるのだから。
もしも完全に視界を失ってしまっていたとしても、戦人機がそのまま突っ込んで適当に暴れるだけでも、相手に打つ手はない。
それ以前に、立ち込める黒煙の外から、予定通りに射撃を叩き込めば良いだけ。相手は要塞に籠っている、動かない的なのだから。
「構うな、そのまま射撃しつつ、前進せよ」
エカテリーナの命を待っていたように、戦人機のライフルが今度こそ火を噴く。
機体と同じく、万全の保存状態にあった武装の数々は、当時の威力をそのまま発揮する。すなわち、戦人機を破壊するほどの威力となって。
撃ち出されたエメラルドに輝くエーテルの光弾は、通常の城壁を容易く貫く熱量を誇る。ドラゴンブレスにも匹敵する強力な一撃。いいや、ライフルである以上、それを連射できるのだ。
現代においては過剰に過ぎる威力を秘めたエーテルの弾丸は、立ち込める黒煙に次々と飛び込み、城壁ごと敵を粉砕する大爆発を――――起こすことなく、その光を黒い闇の中で儚く散らしていった。
「そんなっ、攻撃が……消えた……?」
「エーテル拡散現象、か――――なるほど、魔王め、本気で抗うか」
戦いの幕が上がった直後に、エカテリーナは相手を侮っていたことを悟った。




