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第1話 人生のバッドエンド

竹コミでコミカライズしている作者の別作品


『どうやら俺は今どきギャルな歳上幼馴染から激重感情を向けられているらしい』


と類似ジャンルの新作です。

 多くの高校三年生にとって三月一日という日は特別な日だと思う。何故なら日本全国で高校の卒業式が開催される日となっているからだ。

 楽しいことや辛いことなど、たくさんの思い出を作りながら三年間過ごしてきた学び舎を巣立って四月からは大学や専門学校、就職をした会社など、それぞれの道に分かれて歩き始める。

 三年間の区切りをつけるという意味で卒業式は非常に重要なイベントで特別な日といえるだろう。それは俺も同じであり今日という日は間違いなく今までの人生の中で忘れられない特別な一日になった。ただし、それは人生の中で一番最悪な日という意味でだ。


「ちくしょう……」


 俺は十年以上前からずっと好きだった幼馴染が卒業式が終わった放課後の教室で告白している場面をこの目で見てしまった。

 そして告白した相手からのオッケーの返事を貰った時の嬉しそうな表情を見て、自分が完全に失恋してしまったことを強制的に理解させられた。当然頭では分かっても心は納得なんてしてくれそうにない。

 ただでさえ大学受験に全落ちして少なくない精神的ダメージを受けていたところに、ダブルパンチで失恋まで重なったおかげで俺のメンタルは完全にボロボロだ。

 そのため俺は失意の中、その場を後にすることしか出来なかった。校舎から出るとグラウンドでは写真を撮ったり、誰かと話したりしている同級生達ばかりだったが、とてもそんなことをするような気分ではない。だから俺はそのまま学校を出る。


「……マジでこれからどうしよう?」


 合格している大学は国公立も私立も含めてゼロであり、現時点で進学出来る大学はない。だから同級生達は既に決まっている四月からの進路も、俺は完全に宙ぶらりんだ。

 私立大学に関しては後期日程の出願がまだ間に合うが、俺が志望していたレベルの大学に合格するのは難しい。私立の後期は俺と同じように受験に失敗した層が最後の望みをかけて受験をしてくる。

 そして後がないため志望する大学のレベルを大幅に落として受験をする層がほとんどだ。つまり俺が行きたい大学の後期日程は、ワンランクかツーランク上を目指していた受験生が大挙して押し寄せることは間違いない。

 そのため俺が合格することは極めて難しいのだ。だから後期を受けるのであれば俺もレベルを落とさなければならない。だが、レベルを下げてまで大学に入りたいとはあまり思えなかった。

 そうなると、やはり浪人するしかないか。そんなことを考えながら歩いていると近くから男女の言い争う声が聞こえてくる。そちらに目を向けると俺と同じ制服を着た金髪の女子生徒の姿があった。

 胸には卒業生に配られた花をつけているため恐らく女子生徒は同級生だと思う。ギャル系の見た目をした身長が高い女子で、学内でも何度か見たような記憶はある。男性に関しては私服だが、俺よりも年上に見えるため恐らく大学生ではないだろうか。


「何で別れるとか言うんだよ、考え直せって」


「うるさい、私はあんたみたいな自己中なやつとこれ以上付き合うのはうんざりなのよ」


 そんな内容が聞こえてきていたため、いわゆるこれが痴情のもつれというやつだろう。俺は長年片思いしていた恋が付き合う前に終わったばかりなので、付き合った上での痴情のもつれすら贅沢に感じられた。

 気付けば足を止めてスマホをいじるふりをしながらついつい立ち止まって聞き入っていた俺だったが、だんだん話が過激な方向に行き始める。

 そして殺してやるというような物騒な言葉を男性の口にして、ポケットからナイフを取り出したところを目にした俺は思わずかけだしていた。

 恐らく普段の俺なら動けなかったと思う。だが、今の俺は不運が重なって半ば自暴自棄になっていたこともあり、少しハイになっていたのだろう。気付けばナイフを刺そうとする男の間に体を割り込ませていた。


「っががあああぁ!?」


 女子生徒に刺さるはずだったナイフが俺の体に吸い込まれた瞬間、刺さった箇所に燃えるような激痛が走る。正直ナイフで刺される痛みは想像の遥か上をいっていた。

 呆然としていた男だったが、自分がしでかしてしまったことをようやく理解したようで何かを叫びながらどこかへ走り去ってしまう。

 一方で残された女子生徒は必死な顔で俺に何かを話しかけきていたが、刺さりどころが悪かったのか先程から耳がよく聞こえず視界も霞み始めていた。

 多分俺はこのまま死ぬ。医学的な知識は何もないが、多分それは間違っていないはずだ。正直話したこともない上に名前すら知らない相手のために命を投げ出してしまったのは自分でもどうかしているとは思う。

 だが不思議と後悔はない。受験に失敗して失恋までした俺は自分が不幸のどん底にいると思っていたが、それを遥かに上回る不幸が起こりそうになっているのを見て、つい体が動いてしまった。

 既に終わってしまった自分の実はそんなにたいしたことがない不幸とは違い、まだどうにかなる最大級の不幸を見過ごせなかったのだと思う。もしかすると自分が不幸な目にあっているのに、それ以上の不幸は許せないという八つ当たり的な心理があったのかもしれない。だんだん薄れゆく意識の中、手を握られるような感触がしたのを最後に全てがブラックアウトした。

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