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ピンクと緑、どちらにする? -追い詰められた僕-

作者: 青空のら

 いつもの日常のつもりだった。


「何かない?」


 後ろから小夜子が声を掛けてきた。


「おはよう。今日はどうかしたの?」


「小太郎、聞いてよ。世羅が新しいグッズを見せびらかすのよ。悔しいじゃない」


 隣に住む日暮小夜子は生まれた時からの顔馴染み。同じ学区ゆえに小中学校と同じ、さらに受験勉強まで教えたので、高校まで同じだ。


『高校でも小夜子の世話をよろしくね』


 にこやかに微笑むおばさんの顔に

“面倒ごとの後始末、よろしく❤️”

と書かれていたのを見逃すほど、愚鈍じゃないつもりだ。


 年頃になって恥ずかしいだろうと、登下校はあえて距離を取ろうとしているが、送り迎えは下僕の義務だと小夜子は宣う。


 うーん、げぼくってなにおいしいの?


 下手に怒らせると夜叉になる。その時の小夜子は手がつけられないので、普段から下手に出ている自覚はあるけれど──


「一度、ぎゃふんと言わせなきゃ!」


「自爆する未来しか見えないけれど──少しは学習したら?」


「あら?

 まるで私がバカの子みたいな発言ね?

 自分の言ったセリフに責任取れるのかしら?」


 小夜子がじろりと横目で僕を睨んで来る。

 触らぬ神に祟りなし、暴走する小夜子は天下無双。僕は逃げ──


「ちょっと、どこへ行くつもりかしら?」


 ──れなかった。


「急がないと遅刻しちゃうからさ。小夜子は急がないでいいの?」


「ふふふ、そんな事より、これに名前書きなさい。いいわよね」


 小夜子が二枚の紙を差し出してきた。


「!?」


 あまりの事に、思考が停止していると


「これなら世羅をぎゃふんと言わせられるでしょう? いい考えでしょう!!」


 褒めて褒めてと瞳を輝かせているが──どうして、そう残念な子なんだろう?


「書くだけでいいの?

 見せびらかして、自慢したら満足できそう?」


「もちろん、提出するわよ。世羅の悔しがる姿が目に浮かぶわ。何、ぼーっとしてるのよ、早く書きなさいよ」


「はいはい」


 逆らうだけ無駄と学習しているので、素直に署名欄に名前を書いた。


「ふふふ、勝ったわ。男のいない世羅には逆立ちしても無理だもの。小太郎とはいえ、男。私の勝ちね」


「──」


「世羅には“未知”の世界よ」


「──」


「何か文句でもあるの?」


「いや、別に。小夜子が嫌じゃなければ──」


「ふーん。その顔は──」


 しげしげと僕の顔を見つめていた小夜子が二枚のうちの一枚を僕に渡してきた。


「気に入らないなら、これあげるから自分で出しなさい。私は止めないわ──」


 手元にある緑の紙を見つめていると


「じゃあ、私はこれを出しに行くから、授業は欠席すると伝えておいてね」


 小夜子の方を向くと、ピンク色の紙をひらひらと振りながら歩き出していた。


「後悔するよ!」


「後悔なんてするわけないでしょう!」


「一人でいくつもり?」


「ええ、大丈夫よ」


「僕も行くよ」


「うん、そう言うと思ってた」


 どうやら、手のひらで転がされていたのは僕の方だったようだ。

 二人の“未知”なる新生活への期待と不安を小夜子の笑顔がかき消してくれた。

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