◼️第4話(β1.1)ー 日本壊滅計画 ー HAARP
◼️1.2023年2月6日 シリア・トルコ地震から3日目。アラスカ大学の受難。
[Feb.9.2023 - Pat Pityney, President of the University of Alaska System(アラスカ大学システム総長、パット・ピティニー) の日誌]
まず先日のトルコ・シリア地震で被災した方々にまずはお見舞いを申し上げたい。彼らに多くの手が差し伸べられ速やかに平和な日常が訪れるよう祈りたいと思う。
だがこれは話が別だ。
私は今ウンザリしている。
なぜこの大学の総長に就任してしまったのか。
我が米国アラスカ大学システムのフェアバンクス校が「現在」運営しているHAARPは1990年代に軍が中心となり運営を始めて以来、悪い噂が絶えない。やれ気象操作兵器だ、地震誘発兵器だ、マインドコントロール兵器だ、直ちに解体しろ。そんな苦情を私も就任以来世界中から何回聞かされたことか。
これが先日2023年2月3日ののトルコ・シリア大地震でそれは頂点に達した。TwitterではHAARPによる人工地震だという噂が50万ツイートを超え、いまや当大学の電話窓口は脅迫電話や苦情で機能を停止している。
フェアバンクス校に至っては全ての研究室を含む全てのの直通電話が絶え間なく鳴り響き、教授たちや学生たちにまで言われのない中傷が浴びせられている始末だ。
私だってこんな面倒臭い金食い虫などさっさとぶち壊したいに決まっている。小都市並みの電気を毎日のように食い潰し、建造から半世紀近く経った設備はメンテナンス費用もバカにならない。
私が学長に就任した時、前任者からの引き継ぎ資料には三つの封筒があった。
一つは軍からの表彰状、二つ目は寄付金の受領証、三つ目は……発電機用を動かす燃料代の未払い請求書だ。
表彰状と寄付金は前任者の代で消えて、私の手元に残ったのは毎月送られてくるが$500万近いHAARPの発電燃料の請求書の封筒だけだった。
だがコイツを放棄しようにも今度は国が許さなかった。その名の通りHAARPは米国が電離層の研究においても世界でナンバーワンであることの象徴なのだ、世界で最も強力な高周波送信機を放棄することは許さない、と。
こいつはクソッタレの軍どもが我が大学に押し付けたゴミだ。
HAARPは米国空軍、米国海軍、国防高等研究計画局、名前貸し程度に我が校を含むいくつかの研究機関が関与し、建造を開始したのが1980年、稼働したのは1990年のことになる。
しかし軍部は試験運用の結果軍はこれを使い物にならぬと判断した。
そして1998年にMark R. Humiliton(退役軍人)、2010年にPatrick K. Gambie(元アラスカ空軍司令官)と軍人出身の奴らを我が校の総長として送り込み、綿密なな下準備の上で「2014年に軍部が放棄し」この施設の運営を2015年に譲渡…いや、押し付けてきたのだ。そしてこのゴミを押し付けた途端Gambieは2015年に総長を退任した。
2017年に施設を土地も含めて丸ごと押し付けられたが、体の良い話だ。
陰謀論者は今も「HAARPは人類を操っている!」と騒ぐ。
だが現実に操られているのは我々大学の財政だ。
請求書の山を恨めしく眺め、私は頭を抱えた。
◼️2.遡ること17年。DARPAからのHAARP要求仕様書。
[Sep.2.1987; ARCO(Amateur Radio Components Office) ; Bernard Westlund, Ph.D. ]
DARPAから[TOP SECRET]の判が押された分厚い封筒の山が届いた。
RFP——要求仕様書。
分厚い紙の束を机に叩きつけると、カーペットの上に埃が舞った。
表紙にはコードネーム”Project Aurora”と書かれている。奴らのネーミングセンスには時々がっかりさせられる。空軍、海軍に加えてDAARPAまで関わっておきながらこれだ。
私は深呼吸して、最初のページをめくる。
「高周波による電離層の加熱・強化を利用した通信妨害を実証」
ふむ…。これなら人工オーロラも不可能じゃない。少しはまともなコードネームじゃないか…。
「電離層反射を利用したELF/VLF波の生成と地球磁力線に沿った伝播を利用した、ステルス機・ミサイルを含む飛行物体の検知、及び海中潜水艦の検知を可能とするレーダーの実証。
同じく同技術を応用した海中及び地中通信の実証。」
ELF波?やつら最近Project Elf(Project Sanguine) で壮大な失敗をやらかしたばかりのはずだろう??
嫌な予感がしたがページをめくる。
「遠隔地の気象を制御し、局所的に雨を降らせ、干ばつを緩和する手法開発のインフラ構築」
???
コイツは何を言ってるんだ?
さらにめくる。もしかしてDSの連中の案件か?
「電磁波による人工的地震の可能性研究のためのインフラの構築」
私は頭を抱えた。
コーヒーの湯気が視界を曇らせる。
ーー間違いない。奴らも関わってる案件だ。
ページの端には赤字で走り書きがある。
「ソ連の人心操作実験資料を入手。超低周波による精神影響モードの研究を見据えたインフラの構築」
——やれやれ。
Kaplanの声が脳裏で蘇る。
あのCIAの男は数年前、酒席でこんな話をしていた。
「B43を沖縄沖に落として地震を起こす計画があったが、結局誰も責任を取らずに終わった。軍の計画ってのは、いつもそうだ」
彼はグラスを傾けながら肩をすくめた。
「人は技術で賢くはならない。ただ、自分に都合の良い嘘を、もっと大きな声で叫べるようになるだけだ」
目の前の要求仕様書と、Kaplanの声が重なる。
二十年前の愚かしさと、いま目の前の愚かしさ。
何も変わっちゃいない。
——いや、変わったのことが一つだけ。
あの頃よりも紙が分厚くなった。
私は仕様書を束ごと持ち上げ、机に投げ戻した。
鈍い音がして、また埃が舞う。
超音速機を二年で飛ばせと急かした時代から、いまは「世界を操る電波兵器」を半年で作れと言う。
軍の焦りはいつだって、科学者に頭痛をもたらす。
それでも私は、ペンを取り、返答の草案を書き始めた。
「貴殿らの提案は理論的には検討の余地あり。ただし、自然現象を完全に制御するには神の領域に踏み込む必要がある。我々科学者は、その代理人ではない」
本気で読んでくれるとは思わない。
だが黙って従うより、皮肉を込めた落書きくらい残してやりたい。
机の端にはKaplanからもらった古い名刺がある。
「CIAの亡霊と、軍の妄想と、大学の請求書。どれが一番たちが悪い?」
——彼ならそう冗談めかして言うだろう。
私は再び名刺に目をやり、ペンを置いた。
そして三度目の頭を抱えた。
◼️参考資料:
HAARP
https://www.nict.go.jp/publication/shuppan/kihou-journal/kihou-vol53no1.2/01-03C.pdf
https://archive.globalpolicy.org/socecon/envronmt/haarp.htm
アラスカ大学システム歴代総長
https://www.alaska.edu/uajourney/presidents/
High-frequency Active Auroral Research Program(HAARP)
https://en.m.wikipedia.org/wiki/High-frequency_Active_Auroral_Research_Program
Bernard Eastlund
https://archive.globalpolicy.org/socecon/envronmt/haarp.htm
Project Sanguine
https://en.wikipedia.org/wiki/Project_Sanguine




