◼️第3話 (β1)ー 2025年7月パリのノストラダムス
【le 4 Juin 2025, Paris】
2025年5月4日、春のパリ。エッフェル塔がそびえるジョフル広場の近く、3 Place de l’École Militaireにある「Café des officiers」は、観光客と地元民で賑わう小さなカフェだ。テラス席からはエッフェル塔が春の陽光に輝き、1km足らずのAvenue de Ségurには欧州宇宙機関(ESA)の本部が佇む。そんな穏やかな昼下がり、オカルトと科学が衝突する物語が幕を開けた。
1.マリオン・ルクレール
パリ第6大学の生物学部に在籍する、マリオン・ルクレールは、オカルトと陰謀論に心を奪われた大学生だ。彼女の頭の中はこうだ。「普通の人々は真実を知らない。世界はDSやNASAの陰謀に塗り潰された偽りの舞台。でもXやYoutubeで発信する正義の戦士たちが真実を暴く。私たちは世界の裏を知っている。」
彼女は今年の初め、ケーブルテレビPlanète+の「ノストラダムス特集」で「2025年火球が落ちて世界が終わる」と聞いて以来、「真実を知るために情報」を漁っていた。
YouTubeでは「日本のノストラダムス、予言漫画家が2025年7月5日の壊滅的大災害を予言!」「日本の物理学者、NASAの隠匿する小惑星が2025年7月5日にフィリピン沖激突を暴露」、Xでもホピ族の青い火球が落ちてくるだの、環太平洋に巨大地震が襲うだの。決定的だったのは、今年の夏は災害を恐れ日本への観光客が少ないということだった。「善良な深層心理がそうさせてるんだ…今年の厄災は人の戦争みたいな小さいものじゃない、本当に地球は破滅する…」
マリオンはアパルトマンで震え、ノートに「7月5日フィリピン沖」「地球滅亡」と書きなぐった。
2.エリック・デュポン
彼女は友人で天体物理学専攻のエリック・デュポンに助けを求めた。エリックはパリ天体物理学研究所にもよく通う常連で、学生ながら観測のための遠征も多いアマチュア天文家でもある。マリオンは彼のSNSで見た星雲の写真を思い出し、「エリックならこの惑星のの裏の真相を知ってるはず」と確信しメッセージを送った。
「エリック、隕石のこと…詳しくは言えないのだけど、教えて。会って話したい。今すぐにでも。」
エリックは彼女の緊迫した口調に驚きつつも、「いいよ、Café des officiersで明日昼に。気分の落ち着く場所だ。」
3. ハッシュタグが暴く真実
カフェのテラス席。マリオンはコーヒーカップを握りしめ、そわそわと待っていた。エスプレッソの香りが漂う中、エリックが現れるやマリオンは早口でまくし立てた。「エリック、聞いて! 2025年7月5日、ノストラダムスの予言通り、小惑星2024 YR4がフィリピン沖に落ちるの! #NASALiesで見た! 日本の漫画家も物理学者もそのほかの預言者たちもみんな言ってる! 地球は終わりよ!」
エリックは落ち着いて持ってきたパソコンを開いた。「マリオン、まず深呼吸。2024 YR4は実在するけど、2032年に地球に近づくだけで、衝突リスクはほぼゼロ。ESAの『リスク・リスト』やNASAのSentryシステムで公開されてるよ。トリノスケール(TS)は今のところ0で、衝突確率は0.0001%未満。2025年に何かが落ちるなんてデマだ。日本の物理学者や漫画家の話は、科学的根拠がない。」彼はESAのサイトやNASAのNEOデータベースを映し、小惑星監視の透明性を説明した。
マリオンの目は不信に満ちていた。「ESA? そんな偽の組織、#TrueConspiracyで暴露されてるわ! NASAが作ったフェイク機関だって! そんなものどこにもあるわけがない!2024 YR4を隠すためのデータなんて全部ウソで陰謀! あなたみたいなアマチュアが信じてるなんて、洗脳されてる証拠! エリック、あなたも#NASALiesの片棒担いでるのね! 7月5日には地球が滅ぶの、みんな死ぬのよ!」
彼女の叫び声がカフェを切り裂き、観光客が振り返った。エスプレッソマシンの音がかすむほどの勢いだ。
4.ESA科学者の悲劇
隣の席では、クロワッサンサンドを頬張る二人の男が凍りついていた。ミカエル・ベルナール(ESAの天文科学者)とフィリップ・モロー(ESAの小惑星観測プログラム主任)。ESA本部からランチに歩いてきたばかりで、胸にはロゴ入りIDバッジが光る。ミカエルはコーヒーを吹きそうになり、フィリップに囁いた。「…俺たちの存在そんなに影薄いの?ESA本部は800m先だってのに…」
フィリップは頭を抱え、呻いた。「NASAの陰謀は聞き飽きたけど、ESAが『フェイク機関』? #NASALiesって…ハッシュタグが科学より強いってマジかよ。」
二人は顔を見合わせた。
マリオンは彼らの異変に気づき、声を張り上げた。「見て、エリック! あの男たち! ESAのバッジつけてる! #TrueConspiracyの通り、私たちが2024 YR4の真実に近づいたから監視しに来たのよ! NASAのスパイだわ!」
ミカエルは我慢できず、立ち上がった。「マドモワゼル、私たちはただの科学者です。何よりESA本部のビルはあの広場の向こう側に…」「嘘! あなたたち、#NASALiesのスパイでしょ!警察を呼ぶわよ! 」
フィリップは頭を抱えて呻いた。「ハッシュタグで科学者否定されるとか、学会よりキツいな。」
カフェの客たちがクスクス笑い始め、観光客がスマホで動画を撮り出した。エリックもこの惨事に頭を抱え、マリオンはテーブルを叩き、ミカエルとフィリップは天を仰いだ。エッフェル塔の影がテラスに伸び、パリの春は「イタすぎる」混乱に包まれた。
了。
隕石隠蔽陰謀をモチーフにしたお話です。
ワタシは地球に近づく隕石などを調べる時、真っ先にESAのRisk Listというサイトを見ています。多国籍の組織でオーブン性やサイトの見やすさ、正確な追跡にも定評があるのですがいかんせん知名度でNASAに負ける。たったそれだけでマリオンのように大手の宇宙研究機関はNASAしかないと思い込んでしまう人は多いのです。
また、隕石や惑星は物理法則でしか動かないので隕石予言は大抵ここを見れば本当か嘘かが判断できるのですがそれが理解してもらえない。
2023DWや2024YR4といった以前少し話題になった隕石のこともTS(惑星衝突確率)見りゃ冷静な判断が出来るだろうにとよく思うのですがオカルト信者の強い思い込みは説得しようがありません。
舞台ですが参考リンクを見ていただくとわかる通り舞台のカフェとESAは目と鼻の先。こんなところで世界的機関がない者扱いされたら…泣きそうですw
<参考リンク>
◼️Café des officiers
https://maps.app.goo.gl/N4tVVkHmU5RDambm9?g_st=ipc
◼️ESA(欧州宇宙局)
https://maps.app.goo.gl/3t5CJtY8oukcWBUKA?g_st=ipc
◼️RISK LIST - NEO
https://neo.ssa.esa.int/risk-list




