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第二章:スラムの囁き

闇に染まったスラムの路地。力なき少年カエルは、今日も生き延びることだけを考えていた。

だが、この夜、彼の前に現れた“何か”が、運命を揺るがし始める――。

血のないはずの少年に告げられた、虚空の可能性。

そして、静かに始まる『覚醒』の物語。

これは、力に抗う者たちの戦いの序章である。

カエルの足音は、濡れた石畳に小さく響く。スラムの奥、鉄とゴミが積み重なった迷路のような路地を、彼は走り続けていた。背後には誰もいない。クリムゾン・ヴェイルの男は追ってこなかった。だが、カエルの心は休まらない。ノヴァ・テルスの夜は、決して優しくないからだ。


彼は立ち止まり、崩れた壁に背を預ける。息が白く、冷たい空気に溶ける。十七年間、こんな夜を何度も生き延びてきた。血の覚醒を持たない「ボンベイ型」。力のない少年。それでも、彼はここにいる。


「何もねえ…か。」カエルは呟き、拳を握る。掌には、ただの汗と汚れだけ。だが、その目には、消えない光があった。


突然、ガラクタの山がガサリと動く。カエルは身構える。暗闇から、三つの影が現れた。ボロをまとった男たち――スラムのスカベンジャーだ。手に持つのは、錆びたナイフと鎖。リーダーの男、歯の欠けた顔に笑みを浮かべる。


「よお、ボンベイのガキ。こんな時間に何だ? 命、くれてやる気か?」


カエルの喉が締まる。スカベンジャーは弱者を狩るハイエナだ。血の力を持つ者なら、一瞬でこいつらを倒せる。だが、カエルには何もない。いや、違う。彼には、生き抜く術がある。


「悪いな…俺、命は高く売るぜ。」


カエルは笑みを浮かべ、地面の石を握る。リーダーがナイフを振り上げる瞬間、カエルは石を投げ、男の顔に直撃させる。悲鳴。カエルは横に飛び、鎖を振り回す二人目をかわす。瓦礫の山に肩をぶつけながら、彼は走る。戦う力はない。だが、逃げる力なら、誰にも負けない。


路地の奥、行き止まり。カエルは振り返る。スカベンジャーたちが迫る。絶望が胸を刺すその時、暗闇から声が響いた。


「その血…本当に『無』か?」


声は低く、まるでスラムそのものから湧き上がるようだった。カエルは目を凝らす。黒いフードをかぶった人影が、廃墟の影に立つ。顔は見えない。だが、その存在は、空気を重くしていた。


「お前…何だ?」カエルの声は震える。


人影は答えない。ただ、一歩踏み出し、指を鳴らす。瞬間、スカベンジャーたちの動きが止まる。まるで時間が凍ったように。彼らは目を見開き、地面に崩れ落ちた。


「選択の力だ。」人影が囁く。「お前の血は、可能性を宿す。虚空は…何にも染まらない。」


カエルの心臓が跳ねる。虚空? そんな力、聞いたこともない。だが、その言葉は、彼の胸に刺さった。初めて、誰かが彼の血を「無」ではないと言ったのだ。


人影は消えた。まるで最初からいなかったかのように。カエルは地面に膝をつき、荒い息をつく。スカベンジャーたちは気を失ったまま。遠くで、ノヴァ・テルスの警報が鳴り響く。


「俺の…血…?」


カエルは立ち上がる。手には何もない。だが、心には、何かが芽生えていた。この夜、スラムの囁きが、彼の運命を変え始めた。




カエルは闇の中を進む。血のない少年の戦いは、静かに、だが確実に、動き出す。

ここまで読んでくれて、ほんっっっっとにありがとう!!

カエルの旅は、まだ始まったばかり。第二章では、スラムの闇に潜む謎と、新たな出会いが描かれます。

「無」と言われた少年の中に眠る、まだ見ぬ力…それが一体何なのか、一緒に確かめに行こう!

感想や応援、ちょっとしたひとことでも超うれしいので、ぜひ気軽にコメントしてね!

次回も、魂込めて書くからよろしく!

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