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虚象回想  作者: あるぱす
第一章:青光の遺物達
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記録8再訪

「...............................................なるほど、そりゃ深刻だ」


あの後詳しく彼から伺った。


「昨日までは特に何も考えず話すことが出来たんです!でも今日は何故か話そうとすると、顔が熱くなって、目を見ることもままならず....................」

「要するに鳥花くん、君は鬼灯君と話すとき照れてしまうって訳だ。」

「そうです!そうなんですよ!頭ではしかっり目を見て話そうと思っているのに、体反対に彼女の瞳どころか顔を見た途端に言葉に詰まってしまって、まくし立てるように言ってしまうんです。やっぱり僕みたいな陰の者が火器女さんみたいな人と話そうとすること自体が間違いだったんだ.................」


とうとう鳥花くんは椅子に座ったまま俯いてしまった。


「じゃあさ、陽の者になってみる?」

「へ?」


彼はポカンとこちらを見る。


「はいこれ5000円、これで今日の依頼を達成してもらうよ」

「な、なんですか?」


彼はゴクリと唾を飲み、オフィスには一瞬の沈黙が流れる


「このお金で美容室行ってきなさい、高校生のカット程度なら5000あれば十分だと思うけど、足りなかったら連絡して、スマホでqayqay送るからさ」

「い、いきなり話が進みすぎな気がするんですけど!?」

「まぁ最近鳥花くんの髪伸びてたし、今まではいつも1000円カットだったけどもう君高校生だし、自分が陰の人間だから彼女と話せないというなら一発弾けてみればいいじゃん。ま、弾けると言っても何すればいいか分かんないだろうからまずは形からって事で行ってらっしゃい」

「そ、そんなぁ」


鳥花くんの良くないところ、自分にあまりにも自信が無さ過ぎる。元からどちらかというと内向的な性格だったけど、きっとこのままでは苦労するのは彼の方だろうし。元よりこの話を聞く前から今日は美容室に行かせようと思っていたのだ


「髪型一つ変えるだけでも結構変わるもんだよ?他にもセットのやり方とか、色々聞いてきな」

「........................そう、ですね!ちょっと僕、美容室行ってきます!蕪野さんがびっくりするぐらいカッコよくなってきます!」


彼はそう言うと僕の手の名5000円札をつかみ取り、オフィスを飛び出していった


「僕も、鳥花くんと鬼灯君が仲良くしてくれないと、困るしね」


僕が一階の喫茶店に戻ってお客さんの注文を取っている頃、外から自転車を出し、走り去っていく音が聞こえた


==================









==================


「ねこが見つからないよぉ~」


私はくたびれていた、さっさと見つけてお給料ゲットするぞ意気込んだは良いものの、前畑町を探し回ったのに全く見つからない


「ちょっと休憩するか」


公園のベンチに腰を下ろし、スマホを取り出し、おばあちゃんにバイトで遅くなるかもと連絡しておいた


「ごめんな鬼灯、役に立てなくて申し訳ないぜ、、、俺ポーチの中にずっといただけだし」

「そんなことないですよ!一緒に探してくれるだけでも心強いってもんです!」

「うぅ、お前みたいな優しい子が来てくれて本当に良かったぜ」


蕪野さんは私のポーチの中で涙を流していた、かれこれ猫を探しているうちに空は赤く染まり、そこには夕焼けと夜の帳が作り出した美しいグラデーションが広がっていた


「ところで鳥花くんはどうしてあんな私が記録者になる事を反対していたんですか?」

「あ~、その事か、それはだな.............」


蕪野さんは露骨に気まずそうな顔をし、額と思われる場所を葉で掻いた


「もしかして聞いちゃいけない事だったりしました?」

「いや、そんなことは無いから安心しろ、一瞬アイツにもプライバシーがあると思ったけど知らね、もう素直に話すわ、あ、勝手に話したこと鳥花には黙っといてくれ。」


思考を放棄し、蕪野さんはぽつりぽつりと彼の過去を話し始めた、その時だった


「あれは確か4年前、あいつがまだ小学生の頃だった「にゃ~ん」


目の前の茂みからずっと探していた猫が茂みから飛び出してきたのだ、事前に鉄線さんから貰っていた資料の特徴とも完全に一致している


「捕まえろーッ!」


蕪野さんが血走らせた目で叫ぶ。かくいう私も絶好のチャンス、渡された虫取り網を構えたまま猫に飛び掛かる


「てりゃぁぁぁぁぁ!」


しかし私の必死な飛び込みも猫は軽々と避けて、公園の外へ走り出した。私は急いでポーチを取ってから猫を追おうとしたが蕪野さんに「俺のことは構わず行け!」と、アツい台詞で喝を入れられたので急いでステップを踏み返し、住宅街の方面へ逃げていった猫を追って走り出した


「待てこらあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

「ね、ねこ!?」

「キャーッ!」

「お嬢様!?」


今の私はさながらブレーキの壊れた暴走列車、道行く通行人たちを全員跳ねのけ、逃げ惑う猫を捕まえる為全速力で住宅街を走る。超スピードで走る私は散歩中の犬を風圧で吹っ飛ばし、知らない人の家の塀を乗り越え、どこかに向かっていた自転車をも張っ倒した。自転車を張っ倒した時一瞬「火器女さん!?」と聞こえた気がしたが気のせいだろう


「あと、もうちょっと............!」


走り続けているともうすぐに手が届く距離まで迫っており、猫が道の小石に躓き減速した瞬間を見計らって虫取り網を振り下ろした。


「やったぁー!やっと捕まえたぁ」


腕の中でにゃあにゃあ鳴く猫をケースに詰め込み、公園の方にいる蕪野さんと合流しようと歩き出したその時、気づいた


「空がまた紫色になってる....................!?」


私は再び、コロドの中に迷い込んでしまったのだ

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