表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
虚象回想  作者: あるぱす
第一章:青光の遺物達
5/36

記録4信じたモノ

まずい、間違いなく尋常ではないことが起こっている、鳥花くんが走り去っていった方向から大きな揺れがしたと思ったらロッカーも校舎も溶け出すんですもの。もうここまで来たら鳥花くんに良いって言われてないけど自分で脱出するしかないと思い、落下しながら鳥を放そうとしたら、ふと真葛に首を掴まれて今にも死にそうな鳥花くんの顔が目に飛び込んできた


「鳥花くん!?」


急いで鳥に掴まって鳥花くんの方へ飛んでいく。しかし途中で鳥ともう一つ鳥花くんに渡されたもう一つの物が光の粒子となって消えてしまった。恐らく鳥花くんが本当に危険な状況にあることを示しているのだろう。幸い校舎が溶けている影響か落下速度が遅くなっているお陰で二人が戦っている位置まで来れた。


「真葛頼む、鳥花くんから、手を離してくれないか?」

「そんなお願い聞くとか思ってんの?いい加減に理解しなよ、親友ごっこはもう終わったの」

「別に親友だったからだとか、そういうんで言ってないよ。真葛の狙いは私でしょ?鳥花くんは関係ないし、私を助けようとして巻き込まれただけ。だから・・・・」

「だから鬼灯ちゃんだけ殺して鳥花くんは見逃してあげろと。ふむふむ鬼灯ちゃんのそーゆー自己犠牲精神、私は嫌いじゃないよ。それに、本当は心当たりあるんでしょ?自分が狙われてるり・ゆ・う」


そんな事はコロド(ここ)に来た時点で察してはいた。だけどそれを鳥花くんには悟られるわけにはいかなかった。私の”今”を守るためにも。だけどそれで鳥花くんが巻き込まれて殺されてしまうのは「違う」。

「死」という物が基本的にこの世界に遺していくのは「後悔」だけだ。それを私は痛いほど知っている。知っているからこそ!


「ここで鳥花くんだけじゃ無い、私”も”生き延びる!」


言葉を交わしている間に私たちは地面に着地していた。落下速度の関係で落下によるダメージはゼロだった、私と真葛は互いににらみ合って様子を伺う。真葛はもう鳥花くんの首から手を離しており落下直前にそこらへんに放り投げたらしい。大地までが溶けている訳では無い事を確認すると、私は校舎が崩れ落ちるまにあえて回収しておいた消火器を投げつけ、疑似的な煙幕を発動した。真葛は煙を払おうとし、私から目を離したその一瞬の隙を突き、傍に倒れていた鳥花くんの胸に”事前”に渡されていたメモリーチップを挿入した


「あんなにカッコいいセリフ吐いておいて結局はただの目くらまし?流石に”冷め”ちゃうよ?」


──ええ、本当に”覚めて”しまいましたね。僕の「意識」の方ですが


煙が晴れるとそこに立っていたのは先程まで白目を剥き倒れていた蕪野鳥花、その人だった


「よくやってくれました、火器女さん」

「な、、、、なんで、完全に意識を飛ばしたはず、、、、!?」

「まんまと引っかかりましたね。死んだフリ作戦、成功です」


時は数分前に遡る


=======================






=======================


鳥花くんが走り去って少しした後、結局彼は一度私が隠れていたロッカーに帰ってきていたのだ


「すみません、火器女さん、やはり考えが変わりました。取り敢えず、これと、これを。」


そう言って彼が取り出したのはお馴染みの半透明のパソコンと雷のマークが描かれた正方形のメモリーチップだった。


「なに、コレ?」

「雷の記録を基に僕が作り上げた電気ショックのメモリーカードです。僕がこの後心臓止められたらパソコンに挿し込んで使ってください」

「いや、ちょちょ、待ってよ!心臓止められたらってどういう意味!?」


そうして彼が私に話したのはかなりリスキーな作戦だった


「恐らく、というか間違いなく僕が正面から戦えば負けます、真葛さんに。だからこの後勝てそうだったら勿論勝ちますが、負けそうになったらいい感じの攻撃を受けた時点で僕は自分で心臓を止めます。そしたらそのメモリーチップをパソコンに挿し込んでください。そしたら遠隔で僕の心臓に電気ショックが発動して蘇生できるのでその隙を突いて僕が一撃で彼女を葬ります」

「でもさ、それ鳥花くんは大丈夫なの?」

「虚使いは普通の人間より頑丈なので大丈夫です、、、、、多分。

あ、それと預けてる鳥が消滅したら僕の心臓が止まった合図なのでその時に挿し込みに来てください」


==========================









==========================


「実際は自分で心臓を止めるどころか、本当に止められちゃったんですけどね。そのせいで能力を維持できずパソコンが消滅しましたが、火器女さん、あなたの勇気に助けられました。ありがとうございます」


こう面と向かってお礼を言われると少し照れる。だけど、結構嬉しい、かも。


「何二人で完結しちゃってるのさ?まだ私負けて無いんですけど!?」

「いや、残念ですが勝利へのアルゴリズムは確定しました。貴方が勝つことはもう叶わない」

「今度は土の中に生き埋めにしてやるよ!ダウン・ダウン!!!」


真葛が叫び地面に触れる、恐らく校舎をドロドロに溶かしたように地面も液体化するつもりだ。私は焦り、急いで身構えるが、何も起きず、真葛の顔は驚愕の色に染まった。


「な、、、、!?ファルスが、発動しない!?」

「あなたが動揺してる間に地面一帯を僕の能力で張り替えて溶かせないようにしたんですよ!『虚像回想』!『投影』!」


彼は再び鳥を召喚し、続けざまにパソコンの画面にさっき私が使った雷の描かれたチップを挿入した


「行け、バートニングストライク!」


鳥花のその言葉と共に今まで紫色だった空が黒に染まり、辺りには雷が降り注いだ。そして半透明の鳥たちはその雷を受け、プラズマを纏いながら真葛に突撃していった。


「不味いっ!ダウン・ダウっ・・・・・」


鳥たちは真葛が能力を発動するよりも早く着弾し、数mほど離れていたこちらまで来る爆風と轟音をまき散らし辺りには土煙が舞い、それが晴れると真葛が倒れていた。


「や、やったk」

「火器女さんやめてくださいそれフラグです。というかそれよりチップを回収しなくては」


彼は胸を押さえ、片足を引きずりながら真葛のところへ向かおうとするので私は急いで止めた


「ちょちょちょ、鳥花くん、そのチップ?ってやつ私が取ってくるから良いよ、もう体ボロボロでしょ?」

「良いんですか?悪いですよ」

「別に良いよ、私殆ど何もしてないし、これくらいしなきゃ申し訳ないよ」

「では、お言葉に甘えて。」


真葛くんはその場にへたり込むように座り込んだ、相当消耗していたのだろう。なんと言ったってさっき一度マジで心臓止めたのである、それだけでなく真葛に首絞められたり投げ飛ばされたせいか体も傷だらけだ。

そうして私は真葛の方へ足を進める。”元”親友だった彼女の元へ


「本当は結構悲しいんだよ?真葛・・・・・」


別にそこまで長い付き合いじゃない、高校入って、席が近かったから偶々友達になっただけの、関係。

別にめぐる季節を共に過ごした訳でも、一緒に大きなことしたわけでもない。その筈、その筈なのに・・・・・・

気絶している真葛の傍に落ちているメモリーチップを拾う、鳥花くんが言っていたカエルのマークがあるしこれで間違いないのだろう


「記憶、ね」


=======================








=======================


晴れた空の日だった、まだ街道の木には桜の花びら少しだけ残っているような、そんな、とってもいい日


「鬼灯ちゃん、酢束のミルクセーキ好きなの?」

「あ、うん、私さ結構好きなんだよね、アレ」


その日の授業終わり、他愛のない会話だった、入る部活も別に決めてない、中学からガラリと変わった新生活に付いていくのに必死で好きなカフェのスイーツなんて忘れていたころに真葛の口から出てきたのでふと、久々に食べようかと、そう思ったその時だった


「じゃあさ、今日帰り一緒行こうよ、酢束!学校の帰りカフェでスイーツ食べるとかめっちゃ”jk”っぽいじゃん!」

「あはは、jkっぽいって、私たち現役だよ?」

「それもそうか、まぁ細かい事はどうでも良いからさ、早く行こ!」


私はいつもよりずっと早く帰る準備をして、今までに無いほど軽い足取りで、教室を出て行った真葛を追った。


===================







===================


「私さ、あんな、友達二人でスイーツ食べに行くなんて、初めてですごく嬉しかったんだと思う。

だから・・・・・・・・・・・」


今日も、明日が、楽しみだったんだ。また真葛(親友)と一緒にスイーツを食べに行ける明日が


「約束、守ってほしかったな」


────地中なら、一緒に行ってあげるよ


「え?」


気づいた時にはボロボロの真葛が能力を発動して地中に沈みはじめており、私の足を掴もうとする直前だった。恐らくファルスを自分に発動させ、自分の高度を無理やり下げているのだろう。

そのまま私は足を掴まれ、道ずれにされるかと思ったが、横から同じくボロボロの鳥花くんに突き飛ばされ、助かった。しかし代わりに鳥花くんの足が摑まれ、死の道連れ地中ダイブに連れていかれてしまった


「鬼灯ちゃんと埋めてもらいたかったけど、この際もうお前でも良いや!」

「僕が良くないわ!ってごぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼ」

「鳥花くん!」


私は真葛と共に地面の中に沈んでいく鳥花くんの手を力いっぱい引っ張るが、やはり少女一人の力では男子高校生プラスもう一人の体重を支え切るには無理があり、鳥花くんはどんどん沈んでいく


「真葛の能力が、止まれば、、、、、!」


何か飛び道具は無いか辺りを探すが液体の中で真葛にダメージを与えるほどの威力で即座に打てるモノなど”拳銃”ぐらいしかない。このまま真葛の意識が飛ぶまで待とうとも現在時点で力負けしており、鳥花くんが完全に沈み切るのが先となるだろう。


「火器女さんっ、手をっ、離してくださっごぼぼぼぼぼぼ、このっままでは、貴方までっごぼぼぼぼ」

「何言ってんの!?ここまで助けてくれた鳥花くんを見捨てられるわけないじゃん!」


口ではこう言ってはいるが、や、やばい、鳥花くんの顔まで完全に沈んでしまった。真葛はとっくの昔に全身沈み切っているが、下に引き込む力が全く衰えない。このままでは鳥花くんの言う通り本当に私までもが引きずり込まれてしまう。


「私は、私は鳥花くんを助けるんだ!」


そう強く願う。それから気付くと私の鳥花くんの手を握っていた左手には拳銃が握られていた

理由など考えている暇などない、直ぐに真葛が沈んでいった場所めがけて銃を撃とうとした


「・・・・・・・・友達って結構すぐいなくなるもんなのかもな」


パンと乾いた音と共に沈み続けていた彼の体は静止した。真葛の能力が解けたのだ。手の中にあるはずの拳銃を確認したがそこにはなにもなかった。幻覚、ではないだろう、それなら真葛の能力が溶けた理由の説明がつかない。そうやってぐるぐる頭を回していると安心してすっかり座り込んでいた私を横から小突く生き物がいた


「鳥花くん、じゃなくて・・・・モグラ!?」


そこには何処から現れたのか分からないモグラがいた。そのモグラは不思議なことに頭には「あんぜん」と書かれたヘルメットを被っており、手にはスコップを持っている。見た目はデフォルメされており、結構かわいい


「・・・・!」


モグラは無言でスコップで全身埋まりながらサムズアップし、右手だけが地上に出ている鳥花くんを指す


「・・・・・あ、掘るの手伝ってくれるの!?ありがと!」


そうして私たち一人と一匹は鳥花くんを頑張って掘り起こした


==============================









===============================


「や、やっと掘り起こせた、けど・・・・・・・」


鳥花くんを掘り起こすころには私の制服も手も泥だらけになっていた。そんな事よりも鳥花くんが一向に目を覚まさない、掘り出すのにかなりの時間がかかってしまったし、まさか窒息して、、、、、!

そんな恐ろしい考えが脳裏をよぎり、急いで彼の胸に耳をあて、鼓動音を聞く


「生きてる・・・・・・・・・・・・・!」


彼の心臓はドクンドクンと動いていた。普通に疲れで気絶しているのだろうか?取り敢えず肩を揺さぶって起きるかどうか試してみる事にした。私はコロド(ここ)から出る方法を知らないし、早く彼には目を覚ましてもらわねば


「っゲホっゲホッ」

「あ!起きた!」

「火器、目さん、み、水を!埋められた際に口の中が、土だらけに、、、」


私は急いで水飲み場に彼を連れて行って、うがいをさせてあげた。そのついでに私も少し手を洗った


「にしても良く僕を引き上げられましたね」

「いやそれが実はさ・・・・・」


私は鳥花くんが沈めかけられた一部始終を話した。なんか銃が出てきた事、モグラのお陰で早く掘り起こせたことなんかを彼に話した


「色々気になることはありますが、今は早くコロドから出ましょう。もう遅いですし、一旦僕に付いてきてください」


そして鳥花は真葛が出現した校舎裏まで行き、慣れた動作でどこからともなく取り出したパソコンを地面に置き、なにかを打つと、空間に歪みが発生し、裂け目が現れた。

よく見ると裂け目の中の物はすべて通常サイズになっており、それは現実世界に繋がっていることを意味している。

彼は迷いなくその中に飛び込み、私もそれに付いていこうとしたが、一つ引っかかることがあった。しかし、鳥花くんを掘り起こすときに一緒に出てきた小包を見てやっぱり思い切って帰ることにした


「火器女さん、ところでその小包なんなんですか?」

「んー、友達の証、かな」

「・・・・ま、とりあえず早く来てください」


小包の中身は、いくらかの小銭とクシャクシャになった紙が入っていた。

その紙には「ミルクセーキ代」と、それだけが今にも消えてしまいそうな、かすれた文字で書かれていた


だが、確かにそこには虚像では無く、私が信じた物があった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ