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虚象回想  作者: あるぱす
第一章:青光の遺物達
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記録3記憶の賢者

「火器女さん!先ほど僕が飛ばした鳥に摑まってください!」

「させるかッ!」


一瞬あんな鳩サイズの鳥に摑まっても私の体重を支えられるか疑問に思ったがそんな事を考えている暇など無い、何も考えず真葛の後頭部に激突した後方向を変え、別校舎へ飛んで行く鳥の小さな足を思い切り掴む。真葛が私に飛び掛かってくるが先程の怪我のせいか、私の方が一歩早かった。


「なら、さっきの石、お返ししてあげるよ!鬼灯、、、ちゃん!」

「そんな易々と攻撃を許す訳ないでしょう!『虚像回想』、『投影』!」


すかさず真葛が私に石を投げつけようとするが先程と似たような鳥が複数現れ、一斉に真葛へと向かってゆくが、彼女は「一匹ずつ」丁寧に触れ、能力で地面に叩きつけた


「二度も同じ手を、、、って!逃げるなぁぁぁ!」

「捕まえられるなら捕まえてみて下さい、用心深い(笑)真葛さん!」


そのまま彼は真葛が鳥を処理している隙に自分で飛ばした鳥に摑まって私と同じ方向に逃げた

二人の戦いに目が行って気づかなかったが、この私が摑まっている鳥、無制限に高度を上げ、飛んで行っている


「え、鳥花くん!この鳥降りたりしないの!?」

「あ!伝え忘れてました、その鳥は高度を下げることは無いので屋上くらいまで来たら勇気を出して手を放してください」

「ちょ、それ早く言ってよ!」


とっさに地面を見るともう屋上に着いており、地面から4,5mほど高い位置にいるが、これ以上摑まっていても高度が上がり続けることは分かっていたので、言われた通り勇気を出して手を離した。


「っと、イタタ、着地ミスったぁ、、、、、」

「鬼灯さん、大丈夫ですか?」

「な、なんとか」


私に続いて鳥花くんも降りてきたがさっきと比べてかなり顔色が良くなっている、置いてきた真葛の事を思い出し、急いでもともと居た場所を見たが既にいなくなっていた。


「てか、鳥花くんなんか顔色良くなった?」

「恐らく真葛さんから離れたことで能力が弱まったんでしょう。それよりも今は彼女を倒す方法についてです」

「へ?真葛のこと倒すの?今は逃げた方が良くない?その、警察とかに助けを求めるとか、、、、」

「いえ、残念ながら僕たちがここから逃げ出すことは叶いません。何故なら通常コロドから出るにはいくつか方法がありますが、今回はあの真葛とかいう人にによって出口が閉じられていました。つまりここから脱出するかつ火器女さんの命を救うにはここで彼女を撃破するしかありません。」


一見冷静な姿勢を取っている鳥花だったが内心かなり焦っていた。まず基本的に戦闘は自分の得意とする分野でないこと、だがこちらはさほど問題では無い。なぜならこれでも鳥花はある程度の戦闘は一人でもこなせるからだ、しかし問題は相手の虚使いがかなりの手練れであることだ。

それが分かったのは最初の不意打ちの鳥攻撃を仕掛けた時、通常の人間ならば後頭部にフルスピードの鳥が激突したら意識を失うか少なくとも致命傷を負うはずがあの真葛という女は自らに触れることで、自らへのダメージを「下げて」いたのである。様子から見てかなりファルスも使い慣れている上、人間とは思えない反応速度、それに加えさっきも二人で簡単に撒けたように見えたが恐らく、というか間違いなく、、、、、、


「火器女さん、僕らはあの真葛という虚使いに”遊ばれて”ます。」

「遊ばれてる、と言いますと?」

「あれは間違いなく数ある虚使いの中でも上澄み、上位に位置するファルスの強さです。内容も聞く限り概念系統の物なので間違いありません。要は彼女は僕らを始末するのに”余裕”があるんですよ。遊ぶくらいのね」


嘘だろ、、、、というのが私の率直な感想である。こんな感想百万回ほどこすられているだろうがこれしか出てこない。こういう最初の敵ってある程度の強さでパパッとすぐ倒すもんではなかろうか、しかも最初の敵が”元”親友とかって、ないでしょ、、、、

そんな事を思い浮かべていると、下から凄まじい速さで階段を駆け上る足音が聞こえてきた


「もう追ってきたか、火器女さん急いで校舎の中に入ってロッカーの中とかに入って隠れていてください。そして、僕が良いというまで”絶対”に出てこないでください」

「え、いや、それって、鳥花くん真葛に勝てるの?」

「安心してください、これでも僕は虚使い歴5年です。僕にも数えきれないほどの敵の虚使い共を下してきた経験とその強さがあります。それに彼女を倒す方法ももう思いつきました。だから僕を、信じてください」


そんな真剣な眼差しを真っすぐこちらに向けられたらこちらも黙らざる負えない。私は彼を信じて3-1の教室のロッカーに隠れた。


「火器女さん一応この鳥を渡しておきます。この鳥は僕の能力で手を離したらどこまでも真っすぐ飛んでいく仕様になっています。万が一の場合はこの鳥を投げつけてどうにか逃げてください」

「おっけー、鳥花くんも気を付けてね」


彼は無言でサムズアップすると、廊下を走ってどこかに消えていった


==============================









==============================


「あんなカッコつけたけど、本当は勝てるかどうか怪しいんだよなぁ、、、、」


こんなことならば戦闘を仲間に任せきらず自分でもっとしておくべきだったと鳥花は一人後悔するが、今更そんな事を考えたってしょうがない。今は全力で真葛を倒すことを考えるのみだ


「どんどん足音が近づいてるな、早く準備終わらせなきゃ」


鳥花は急いでそそくさ廊下に小さな箱を設置し続け、パソコンを取り出し一つ一つ設定していく。

8,9個ほど設置し終えた頃、廊下の奥から陽気な声が響いた


「なんか楽しそうなことしてるじゃん。私も混ぜてくれてもいいんだよ?」

「残念ですが遠慮しておきます。僕はあまり女性と遊ぶ趣味は無いので!」


二回目の戦いの火蓋は鳥花の先程も登場したホログラム状の鳥によって切られた。


「二度も同じ手が通じると思わないことだよ!鳥花くん!」

「思ってませんよ、最初(ハナ)からね」


ここからは虚像回想の投影した鳥による遠距離攻撃から、僕主体の直接攻撃に切り替えて戦う。少しリスクを冒すことになるが鳥によるダメージでは相手の能力で軽減されてしまいいずれ僕の方がジリ貧になって負けてしまうだろう。

だからこそ、少し賭けになるがまだ試験中の「アレ」を使うしかない


「虚像回想!『投影』!」


ここまでなら今までと同じ鳥などの記憶をデバイスに読み込ませ、プロジェクターで実体化後、あらかじめプログラムした動きで相手に攻撃を仕掛け散っていく。という動きで終了だ、しかし今回はさらにもうひと手間加える


「さらに『情光武装(ホログライド)』!」


鳥花が叫ぶと箱の一つが割れ、中から青い光で形成された透明な剣が飛び出し、彼の手に吸い込まれるようにすっぽり入った


「っと!アーマーは全滅か、、、、でも剣が機能しただけで結構!」

「へぇ、鳥以外も出せたんだ、そのファルス、でもそんなちっぽけな剣一本で何が出来ると?」

「出来るよ、アンタを倒すくらいはね!」


鳥花は威勢よく飛び出し、青い光を纏った刀身が真葛に迫る。

その正体不明の剣による攻撃に真葛は受け流す判断をし、刀身が触れた瞬間に地面に叩きつけられるようにダウン・ダウンを発動し、構える


「喰らえ!真剣、真実を告げる剣(スロウド)!」

「ダウン・ダウン、剣の座標を下げろッ!!!!」


真葛の手が剣に触れ、剣は案の定地面に叩きつけ、られなかった


「何っ!?」

「とりゃぁぁぁあ!!!!」


真葛は悲鳴を上げながら吹っ飛び、校舎の壁にのめり込んだ。

壁からは瓦礫がぽろぽろ落ちており、彼女も予想外のダメージ量に驚きを隠せず、頭から血を流しながら唖然としており。鳥花には見抜かれていたが能力で自分の年齢を下げたままにしていたがそれが解け、本当の姿が露になっていた


「、、、、!?(確かにダウン・ダウンを発動した!私の能力が不発だった、、、?)」

「何が起きたか分からないって顔してますね、そのまま倒されちゃっていいですか?僕も家に門限があるし、こっちにはアンタみたいな偽女子高校生じゃなくて本物のjkがいるからね、出来るだけ早く家に返してあげたいんだ」


先程鳥花が使った剣は彼の3年に及ぶ努力の末に完成した集大成である。あの剣は戦いの最中発見された一部破損した彼の兄の物と思われるメモリカードから抽出したデータを復元し、それを基に彼が研究、開発しようやく作り上げた試作品である。

そして少し話が脱線するが前回彼の口から出たRS値という言葉、コレはどれだけ現実性があるかを数値で表したものであり、コレが低ければ低いほど非現実的な現象が起こる、例を一つ上げると、虚使いのRS値は低ければ低いほどその虚使いのファルスが強力なことを意味する。

ここで話を元に戻すと、この剣真実を告げる剣(スロウド)のRS値は驚異の10.0である。通常、現実世界のRS値でさえ1.0~4.9ほどであるがそれを大きく超えるこの10.0が意味するのは非現実を現実に引き戻す作用であり、この剣は触れた相手のファルスを強制解除する能力があるということだ。


(真葛のファルスを計測した結果は-8.2だった、-9.0を超えたら無効化できないけどなんとかなった!この剣が機能するかどうかは賭けだったが、何とか勝った!これなら、倒せる!)


内心鳥花は油断してはいけないと頭では分かっていつつも勝利をほぼ確信していた。いくら相手が強かろうとこの剣の攻撃に加え鳥によるかく乱も同時並行で行えば確実かつ安全に追い詰めて倒せる算段があったからだ。


「────────流石に遊びすぎたし、本気、出すか」

「今更本気出したってもう遅いです。ってなんでアンタがそれを、、、、?」


先程までのどこか余裕のある態度を捨て、「能力者同士の戦いを楽しむ虚使い」から明確に「始末者」としての雰囲気に様変わりした真葛が取り出したのは一つのチップだった。それは鳥花にとっては見覚えのあるものだった。


「兄さんの、メモリーチップを、、、、、なんでお前なんかが、持ってるんだ!?」

「今回の仕事はね、私個人で受けたものなんだ、依頼者から万が一にってこれ渡されたモノだけど、これ鳥花くんだったの?まぁ良いや、ここで君”達”もう殺すから」


鳥花は急いでスロウドを構え決着を付けようとしたが、その直後彼は自分の視点が徐々に下がっていることに気がついた


「ところで鳥花くん、地面の中に落ちていく感覚を味わったことは、あるかい?」


急いで足下を見ると床が形を失い、溶けたアイスの如くドロドロと溶けていた。どうやら鳥花は最早底なし沼に変化した床に足を取られ、沈みかけていたらしい。焦って真葛の方に視点を戻すと彼女はチップを自分の右腕に挿入し、その腕は黒く変色していた。


「床が、溶けてる!?」

「少し本気出して分子間の熱振動に対する抵抗力を下げさせてもらったの、この建物全体のね」


溶けた床から抜け出す為急いで鳥を召喚し、体制を持ち直しながら頭を回す。


(あのメモリーチップは兄さんの物で間違いない!証拠に兄さんが作ったものに必ず付いてるケロケロマークがあった。それよりも火器女さんだ!校舎と共に机なんかの小道具類まで溶けてる、早く伝えて逃げてもらわなくちゃ、「作戦」の為にも彼女には無事で居てもらわなければ)


そんな鳥花の思惑とは裏腹に滅茶苦茶になって崩れる校舎の中に彼女の姿は見つからない。どうすれば良いか考えるがそんな暇も無く液体と化した壁の中を泳いできた真葛の拳が飛んできた


「このまま心拍数を下げて殺してやるよ、蕪野鳥花ァ!!!」

「そう易々と触れられるもんかって、折れてる!?」


校舎が解けた衝撃で気づいていなかったが、スロウドがぱっきり折れていた、綺麗に、半分に。試作品が故の耐久性、急いで盾にできる物を探すが全てが液体と化した今、そのような物はどこにもない。避けようにも今摑まっているのはコントロールが殆ど効かずただ真っすぐ突っ込んでいくだけの鳥。咄嗟に腕でガードしようとするがそれは彼女の前には無意味な行動でしかなかった。


「うわあああああああぁぁぁぁ、、、あ、、、ぁ」


真葛に首をがっしりと掴まれた直後こそ悲鳴を上げた鳥花だったがたったの数秒で失神、それでも真葛は確実に殺す為心拍数を0まで下げようと手を離さない。次第に鳥花は白目を剥き、顔が再び青くなり、口から涎を垂らす、もはやここまで来るとただ単に首を絞められているだけか、能力のせいなのか分からない。


「真葛、もう辞めてくれ」


そんな状況に声を挙げる一人の少女がいた。

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