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虚象回想  作者: あるぱす
第一章:青光の遺物達
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記録2裏切り者

「いや、ごめん『虚像回想』って何すか」


彼の口から飛び出してきた聞きなれない言葉に思わず疑問を投げかける


「僕の能力で、君の記憶をデータにして、、、、いや、説明するより見た方が早いね、ノンデリぽくって悪いけど君の家教えてもらえる?正確には今日一番最初に自分以外の人と会った場所なんだけど」

「別にいいけど、じゃあ付いてきて!」


そうして私は自分の家に向かって走り出した。相変わらず全てが少し大きくなっている影響でいつもより時間がかかったがすぐに私の家に着いた


「ここが火器女さん家?」

「うん、さ、入って入って」

「え、、あ、お、お邪魔します」


私の家は前畑市の隅っこにある住宅街の一軒家だ、結構新しめで少し前まで廃墟さながらの雰囲気を出していたが、お父さんがお金を出して建て替えたらしい。

鳥花くんはなんか動きがドギマギしている、もしかして女子の家に上がったことがないのだろうか?

その後鳥花くんは私にどこで誰と会ったか聞かれ、祖母に関することと今日の朝の行動を思い出せる限り伝えた


「では火器女さん、ここに僕が良いというまで手を乗せていてください」


言われるがまま私は鳥花くんが差し出したパソコンに似た形状のデバイスの上に手を乗せた


「もういいですよ」

「もう良いの?私1秒も乗せてないと思うんだけど、、、、」

「はい、大丈夫です。じゃやりますよ、『虚像回想』」


彼はそう言うと凄まじいスピードでパソコンに何かを打ち込み始め、小さく「ヨシ」と言うといつもの様にエンターキーを押した、すると驚くべきことに私の目の前に朝食を取っている私と祖母が現れ、朝の私の動きを再現するが如く席に座り、朝食を取り始めた。


「へ!?私?それにおばあちゃん?何でここに?」

「コレが僕のファルス、『虚像回想』です。少しややこしいんですが人の記憶をデータにして取り出し、色々なことに活用できるんです。今しているのは火器女さんの記憶をデータとして取り込んだ後、コピーしてその現場を映像の様に投影し、火器女さんの行動を再生しているんです。」


彼が指をさした部屋の隅を見ると、先程のパソコンと同じようなプロジェクターが置かれておりそこから出た光が私と祖母を形作っている。


「これを利用すれば火器女さんに攻撃を仕掛けた犯人が分かるはずです。ここからは地道な作業ですがさっきも言った通り消化試合です。大変ですが頑張りましょう!」


それからは指で描かれた線をなぞるが如く、今日の私が歩んだ道を順番に辿って行った。


「流石に火器女さんのおばあ様では無さそうですね」

「まぁ、おばあちゃん優しいし、そんなことする人じゃないよ」


おばあちゃんは基本的に朝ごはんだけ作ってそれからは他の事をすることもあり、登校までの短い時間では触れ合うことは無かった。

次に家から駅までの道のり


「そもそもこの間では誰とも会っていないし、触れてもないですね」

「ま、私いつも友達とかと会っても駅からだしね」」


そして駅から学校、学校での一日を再生したが、犯人と思しき人物は見当たらなかった。

一応一番疑わしかった満員電車の中もじっくり観察したが、肩がぶつかり合うことはあっても、彼曰くファルスを使われた痕跡が無いので違うとのこと


「一個聞きたいんだけど、ファルスの使用の有無ってどうやって見てるの?」

「単純です、さっき僕たちが推理した通り、犯人は極小のコロドを展開しはずなんです。そこからコロドの性質を含めて考えると、コロドを展開したタイミングで手の辺りが虫眼鏡なんかを通してみた時の様に少し大きくなるはずなんです。だから手を見ています」


なるほど、と思いつつ、教室の椅子に腰をかけると、どっと疲れが来て、私は思い出したように鳥花くんに訪ねた。


「つ、疲れた。いくら倍速できるって言っても、私が過ごした今日をもう一回分体験するって訳だよね、直ぐに終わる訳無いか、、、、、って!今何時!?」

「コロド内では少し時間の経過が遅くなるのですが、現実では今19時48分ですね。火器女さん、もう帰らないとまずいのでは?ここからは僕が一人で捜査するので、記憶のデータも一通り採取したので大丈夫ですよ」

「いや、おばあちゃんに少しだけ説明して私も最後まで一緒に捜査するよ、私の事だし何より鳥花くんに申し訳ない」


しかし振り返るとかなりの時間が経っている、私が鳥花くんを帰り道で見つけたのが16時ぐらいだったので、コロド内は時間の流れが遅いことも含めると4時間近くこの中にいたと言える。景色や空の色の変化が無いせいか、いつもに比べ時間の流れがあっという間だ。

そんなことを考えながら「今日は命にかかわる事件に巻き込まれたから帰るのが遅れる」とスマホに打ち込み祖母にメッセージを送信する


「いまチラッとスマホの画面見えましたけど、そんなメッセージで大丈夫なんですか!?家の方納得されないのでは?」

「大丈夫だよ、私今諸事情あって家にいるのおばあちゃんだけだし、おばあちゃんも放任主義で私の言うことなんでも信じてくれるし」

「ならいいんですけど、、、、(それは放任主義の域を超えているのでは、、、、?)」

「てかさ、さっきなんかホネスキー?だっけそんな仕事してるみたいなことしてるって言ったけど、こんな感じの事いつもしてるの?」

記録者(ホネスティ)ですね。そうですよ、事件にもよりますが、犯人を追跡するときはいつもしてます」

「大変じゃないわけ?」

「結構重労働ですよ。まぁ能力で辿っていくだけなので楽ですが、やっぱりキツイものはキツイです」


彼は苦笑いしながら言うが、その瞳はとても真剣だ


「実は僕、幼少期の記憶が無くて、兄がこの世に存在したことだけが分かってるんです、それ以外の家族は既に死亡してまして。それとあのパソコンとかプロジェクター自体を設計したのは僕の兄なんです、とても昔、5歳くらいの時、周りの子たちには家族がいるのに僕には居ないのがどうしても嫌で、最後の記憶を辿って一人で兄を探してた時偶然見つけたんです。そのお陰で僕は傍に家族がいなくとも、どこかにいると分かって幼いながら前に進むことが出来ました。」

「家族、ね、、、、」


鬼灯は自然と遠くを見た、その理由は彼女すらも知らないのだろう


「だから僕はそれからいろんな人の回想を手伝うという形で記録者(ホネスティ)を始めたんです。火器女さん、これは持論なのですが、人間というのは常に目の前にある今というカギのかかった扉と対面しています、そのカギはすぐそばに落ちている場合もありますが、多くの場合「過去」という長い回廊のどこかに転がっているんです。あるいはバラバラになって散らばっていたりもするでしょう、それらはすぐに見つけるひともいます。しかし見つけられない人もいます。だから僕はこの虚像の世界で鍵探しを手伝うことにしているんです。最近は犯人探しによく使ってますが、誰かの鍵を探すことは自分自身の鍵を探すことにも繋がるんです。そうやって扉を開けて前に進んでゆく、そんな事が好きなんですよ、僕。」


今という扉を開ける為の「鍵」それは私の記憶の中にもあるのだろうか?


「すみません、少し話が長くなりました、次はグラウンドですね、少し機材のセットに時間がかかるので少しの間適当にそこら辺うろついててください。出来たら呼ぶので」


という訳で私は言われた通りそこら辺をうろつくことにした、かといって2,3週間通った学校なんてもう基本的に行きたい場所なんてないのだが。

そう思って花壇の少し大きい花をボーっと眺めているとふと初めて鳥花くんを尾行するきっかけになった蕪を見た場所、校舎裏に行こうと思ったのだ。私は未だに彼に興味を惹かれる理由が自分でもよくわかっていない、でも少しだけ分かる。きっと彼は私にはない”モノ”を持っているのだ。それが何かは分からないが彼を始めて見た場所に行ってもっとあの時興味を持った「私」を思い出せば何か分かるかもしれない。根拠なんて物は無い、でも今回の一件でそれこそ彼に「回想」の大切さ、というか重要度を教えてもらった気がするし。


「今という鍵のかかった扉、ね」


この言葉、心に引っかかる、だって私はきっと、、、、、


「鬼灯ちゃん?」

「真葛?どうしてこんなとこに?」


いざ校舎裏に着いた私を出迎えたのは、困った顔をした真葛だった。


「それはこっちのセリフだよ~、急に空が紫色になるかと思ったら、だーれも町にいないし、鬼灯ちゃんがいて良かったよお!」


良かった、というのは私もである。かくいう私もこんな非日常的なことが連続して疲れ果てていたが、私における日常の象徴とも言える親友の真葛を見て内心ホッとしていた。

だからこそ、無警戒で抱きしめようとしてしまった。


「火器女さん!彼女に触れてはだめだ!」

「え?」


彼が後ろから私を突き飛ばしてくれた、しかしそのせいで彼が代わりに”触れられて”しまった。


「なんだ、もう気づいてたんだ。やっぱ鬼灯ちゃんより先に鳥花くんを殺しておくべきだったか~」

「は?何言ってるの?実、、、、葛?」


火器女鬼灯は適応力が少し強いだけの普通の少女だ、そんな少女は目の前の親友の全く変わらない態度に思わず彼女は後ずさりする。


「今、鳥花くんに何をしたの?」


真葛に触られてから鳥花くんの様子がおかしい、うずくまって苦しんでいる。


「やっぱ鬼灯ちゃんは優しいね、急に友達だと思ってた子に殺されかけてるってのに、今日初めてちゃんと話して、顔見知り位になった相手の心配するなんてさ、まぁここまで来たら騙る必要もないし全部話すか。

まず一つ鬼灯ちゃん、貴方を殺そうとしたのは、勿論わ・た・し。そして二つ目、鳥花くんに何をしたか、その質問に答える前に私の能力を教えとくよ。灰空の下(ダウン・ダウン)”触れた”モノの何かを下げることが出来る。それであなたのRS値を下げたの、時間差でね。そして彼には、、、、」

「自分のファルスを敵の虚使いに話すなんて、舐められた、もの、、、、だね」


鳥花くんは息切れぎれに返すが真葛は一ミリも動じない。明らかに尋常な様ではない俯いてる鳥花くんの顔を覗き込むが、その顔色は真っ青だ。


「僕の”血圧”を下げたのか、、、、、!」

「ま、そんなところよ、まさか鬼灯ちゃんが生き残ってるだけじゃなくて記録者までいるのは予想外だったけど、大したことなかったね、私が”用心深い”お陰で助かったわ~」


真葛は勝ち誇ったように微笑み、こちらに一歩づつ、確実に近づき、トドメの一撃を繰り出そうとする。

そんな状況に私もそこら辺の石や砂で精一杯の抵抗試みることにした。


「とりゃっ!」


そんな私の抵抗むなしく石を投げても能力を使っているのか、真葛の前まで飛んでいくと自然にすとんと軽い音を立てて落ちてしまう、かろうじて投げた砂はヒットしたがそれも服を少し汚した程度、何のダメージにもならない


「っと、鬼灯ちゃんって意外と肝座ってるよね。こういう時大体の子は怯えて動かなくなるんだけど、やっぱり鬼灯ちゃんは”最後”にして良かった~。これで他の記録者のところなんか駆け込まれてたら私の負けだったよ」


真葛のこの言い方、恐らくここ最近前畑市で起きていた失踪事件は彼女の仕業だったのだろう。しかしそんなことを頭の中で結論付けていても状況は最悪から何も変わらない、何か、何か考えなくては、、、、、!


「しばらくの友達”ごっこ”楽しかったよ、鬼灯ちゃん。じゃ、バイバイ~」


打開策を考えているうちに真葛はもう目の前まで迫っていた、もうこの距離では攻撃を避けられない、後ろに逃げようともここまで後ずさりし、気づけば背中には校舎の壁があり、私もここまでかと思ったその時、花壇の方で倒れていた鳥花くんが生まれたての小鹿のような足で立ち上がり、こちらを指さすと、どこからともなく鳥が飛んできて真葛の後頭部にフルスピードで激突し、その衝撃で真葛は吹っ飛び、校舎の壁に顔面を激突させた


「どうやら、”用心深い”のは僕の方だった、ようですね」

「この、、、、!ガキがぁ!」


そうして、鼻から血を出し、単純に顔面をぶつけたからなのかはたまたその怒り故か、恐らく両方だろうが二つの理由で顔を真っ赤にした、裏切真葛とそれとは対になるように低血圧で顔を真っ青にした蕪野鳥花という二人の虚使いの戦いが始まった

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