No.34-それぞれの高み(中編)-
それ以外の四人は、それぞれ別の空間に放りこまれていた。
一人、無限に湧いてくるモンスターや魔物を一掃する男がいた。
泡沫紗衣は神器を使い、思いっきり暴れていた。
空間内では、相手が強化されているのか、自分が弱化しているのか、なかなか一撃ではモンスターは倒れなかった。
それ故に、彼は今まで感じたことの無い得体の知れぬ喜びに浸っていた。
彼は鋭利な輝きを放つ蒼き槍の神器を振りまわし、大いなる海の力で標的を叩きのめし、
西戦で見せた水の槍を何本も何本も同時に放っていた。
しかし、それでも標的は倒れない。
彼は「ストーム!」と叫び、槍から双剣へと武器を変える。
緑色の閃光を放つ鉤爪は、装備するとスピードが上がるという能力を持つ。
紗衣は最大出力のハイスピードで、標的を狩っていく。
首元を狙い、自身の勢いを使って喉を抉り、首を刎ねる。
そして、標的から離れたところで、一人乱舞を始める。
何度も何度も振ることにより、衝撃波を一点に集め、竜巻を作り出したのだ。
モンスター達がその竜巻を耐えられるはずもなく、吹き飛ばされ、ズタボロにされてしまう。
しかし彼は攻撃の手を緩めず蒼き槍、オーシャンを召喚する。
その竜巻に水の力をプラスし、超巨大な渦潮を作り出した。
「カハッ!!」
彼は凶悪な笑い声を漏らすと対の神器の物理形体であるナックルで一匹のモンスターの頭を掴み、
その渦潮の中に放り投げる。モンスターが入ると同時に、渦潮は蒼く発光し、凶悪な威力を発揮する。
大地は抉れ、空間が綻んでしまうのではないかというくらいの爆発を引き起こした。
一体、何故渦潮がいきなり爆発するかは分からないが、
きっと紗衣の魔力干渉が強大すぎるため、魔力の許容値を超えてしまい、爆発を引き起こしたのだろう。
そして、爆発が終わると同時に、水が天から降り注ぐ。
紗衣はその雨で火照った体を冷ましていく。
(神器ッてのはァ、むちャくちャな代物だな……幾ら制限されてるとは言え、この威力は正直強すぎる……)
心の中で、そう呟く。
事実、制限があるとはいえ、この威力は相当なものだ。
紗衣は実験台として小型や中型モンスター、魔物にしか使用しなかったが、どれも一撃で倒れてしまった。
大型になったところで巨大種にならない限り、この威力は発揮されるだろう。
「暇つぶしでやッてるんじゃねェぞ、俺は。さッさと強ェ奴出せ。」
その言葉に反応したかのように、巨大な敵が三体、姿を現す。
その姿には、何処か見覚えがあった。
剣と拳を構えた鎧の騎士。槍を携えた蛇。鉤爪を持った狛犬。
どれもこれも、神器が具現化したものだった。
「ほォ……こりャ、プログラムじャ無さそォだな。」
手元を見ると、全ての神器が召喚されており、そのどれもが光を放ち、具現化した神器に光を当てていた。
紗衣純哉は蠅の魔王、ベルゼブブの超高速剣術をどうにかして耐えていた。
しかし純哉は防戦一方で、気を抜いたら一瞬でやられてしまうような状態だった。
「キャハハハッ!!どうした!純哉ぁああああああああああ!!」
上下左右、いたる方向へ飛び跳ねながら回避をする純哉に、ベルはいとも簡単に追いついてしまう。
岩場に飛び上がり、下から飛んでくるベル素手で捌く。ベルは勢い余って岩山に激突するが、
その数秒後には既にリターンの体制に入り、鋭利な剣を構え突進してきた。
その攻撃を避けきれず、純哉はガード体制をとりつつも、全ての攻撃に当たってしまう。
たまらず吹き飛ばされ、先ほどのベルの様に岩山に激突。
「キャァアアアアアアアアハハッッハハハ!!!生きてるかー!?」
純哉の返事は無い。
恐らく気絶でもしたのだろう、とベルは考え、剣をしまった。
その直後
「 」
言葉も発さず、眼も冷え切った純哉が、ベルの背後に迫っていた。
それも、物凄い速度で。
「ンガァッ!!」
ベルは咄嗟に剣を構え、防御態勢に入る。
その拳は剣で防御したにもかかわらず、とんでもない衝撃波を生み出し、辺り一面を吹き飛ばし、抉った。
ベルはこの時、不覚にも確かな恐怖を覚えた。
此処に居るのは本当に純哉なのか。
そんな疑問を頭に浮かべ、戸惑いつつも超高速の剣術を繰り出す。
しかし、純哉は先ほどの様なデタラメな避けでは無く、無駄のない完璧な回避ですべての剣をかわす。
そして、ベルに焦りが出たほんの一瞬の隙に、純哉はベルの剣を奪い取り、
何度も何度もベルが繰り出した剣術を自分の技の様にいとも簡単に繰り出した。
流石に使い手のベルに全て当てることはできなかったが、初動とトドメの何発かはベルの身体に傷を残した。
(コイツ……辿り着きやがったのか……?)
ベルは心の中で呟く。
最大限の焦りを含め、純哉の高速剣術を避けきっている時に。
(否、ちげぇ。動きは確かに“アレ”だが、まだ扱えてねぇ……って事はコイツの潜在能力が引き出したってのかよ……!)
アレとは今の純哉の状態のことを指しているのか、定かではない。
しかし、この状況から考えると、アレは今の純哉が放っている禍々しいまでのオーラの事を指すのだろう。
「こりゃぁ……こっちも気が抜けねぇ……キャハハ!!」




