No.25-神器来る-
三大陸。
忌まわしき記憶隠されし場所。
ただ、今は違う。
「という事で、お宝探し開始っす。」
純哉は高らかに告げる。
この世の果てに届きそうな美声を何処かの神器に向けて。
「ええええっと、そそそれは良いんですが、なぜ僕らまで……?」
オドオドとした、しかし芯のある独特の喋り方が特徴のこの少年。
以前キュウを追っていたときに助力してくれたクピト・アモルの連中の一人だ。
名は兎ことナイジェル。
そしてその後ろには猫のディオスがいる。
他何名かにも純哉が連絡したようだが、仕事で来れなかったようだ。
「にゃにゃにゃー。お前らとまたあえて嬉しいニャ!」
「久しぶりディオスさん!」
紅葉もキャッキャとはしゃぎ、再開を喜んでいるようだ。
その束の間の再開を純哉は大声で遮る。
「諸君らァァアアア!!!今日は遊びじゃないんだああああああああ!!!」
「隊長!今日は望月隊員とカシス隊員が来ておりません!サボりでしょうか!」
「よく言ってくれた大狗隊員。奴らは、お菓子食べてる方が有意義。とか、
ネットサーフィンの方が楽しいっす。とかそんな理由で今日は来ていない!結論、サボりだ!」
「テメェらも夫婦漫才してんじャねェよォォ!!」
まるで三人でコントしてるかのような息の合った連係プレイ。
紅葉も純哉も「ハッ!」と同時に声を漏らした。
「えー、では、えー。隊長からの命令なんすけど、ナイジェル君!キミは神器の情報を掴んでいるようだね!教えてくれたまえよ!」
「はははははい!たたた隊長!神器は三大陸の何処の遺跡にも無いようで、
どうやらある一定の魔力に反応して、つつつ釣れるようです。フィッシングです!」
隊長への通達を済ませてホッとしているナイジェル。
それに続き、ディオスが通達。
「通達ニャ!どうやらドでかい魔力だけでなく、適正者がいると、釣れるようですニャ!
しかも、体験した人がいましてですニャ、この人は光の大陸のGuardian本部、SSSランクの人なんですが……」
話をいったん区切り、全員を見回した。
どうやら何か言ってほしいようだ。
それにいち早く気づいた純哉は
「なんですが……?」
と最後の言葉を繰り返した。
ディオスはフフンと得意げに語った。
「どうやら、適性があると全ての神器に適性があるとみなされ、飛んでくるそうですニャ!入れ食い状態、釣り堀状態ですニャ!」
「「「おぉー!!」」」
紗衣を除いた全員が声をそろえて、そして目を光らせていた。
キラキラと全員が輝いている。
そこへディオスは更なる通達をする。
「でですね、こんな話をしてたら、向こうの方から強烈な魔力の集合体、飛んできてるんですニャ。」
「「「ガチで!?」」」
全員がどよめく。もちろん紗衣を除いて。
紗衣はいかにも「めんどくせー」というような感じでイヤホンを装着し、音楽を聴いていた。
そのイヤホンを純哉は無理やりはずして全容を告げた。
それでも紗衣は、興味無い。
紗衣を除いた全員が御祭状態の中、ディオスが最後の通達を告げる。
「ヤバイですニャ!着たですニャ!!」
全員がキター!!と言わんばかりにどよめく。
「やったね純哉!純哉が神器を持てるようになるなんて!私うれしいよ!」
紅葉も興奮している。
当の純哉もワクワクしながら遠くに見える塊を見る。
どうやらそれが神器の様だ。
神器と思わしきものは純哉達の目の前まで飛んできた。
まるで神のようだ……誰もがそう思っただろう。神器は人型を成していた。
そして機械的だが、何処か神々しい音声で喋り始めた。
「我が人格、太古の昔より、語り継がれた神器也。」
「「「キター!!!」」」
再びどよめく。三度目のどよめきだ。
純哉はワクワクしながらその神器に聞いた。
「俺が、適正者っすか!?」
神器は威厳のある顔を上げ、運命の一言を告げた。
「貴様は適正者ではない。そこの、黒髪だ。」
その指の先には、かの絶対級天使たる、泡沫紗衣がいた。
「え?」