No.21-被検体の暴走-
「そいつは………どういうこと何だ?」
純哉は静かにキュウに聞いた。
「どういう事も何も、こいつは私が作ったんだ。被検体番号十八番、被検体名SAI。」
「あァ………?どういう事だァ?」
「泡沫紗衣は紗衣純哉の能力を使って生成された言わばクローン。」
キュウはさも当然のように語るが、二人の紗衣はいまだに状況が把握できていなかった。
「偶然だとでも思っていたのか?今の今まで。僕としてはかなりヒントを与えていたと思ったが。
まさか、それすらも気づかないとはな。気にも留められていなかったのかな。
でも紗衣を作ったのは失敗だったかな。何せ能力は私が意図していたものとは違うからね。」
「お前はさっき、能力を与えたと言っていたが、説明してもらおうか。
矛盾しているんじゃないのか?与えたのか与えられなかったのか。そして何を持たせようとしていたんだ?」
カシスが疑問を投げかける。
キュウは「自分で能力を与えた」と言った。
しかし「能力は意図していたものと違った」と答えた。
つまりこれは「与えられなかった」という事だろう。
矛盾を追及したカシスの質問に、キュウは少し考えたのちに答える。
「あぁ。そうだね。確かに僕は能力を与えられなかった。干渉能力は偶然と偶然が絶妙に混ざることで完成した、
言わば副産物。僕が本来ほしかった能力は宝玉にかかっているプロテクトを解くという能力だった。
これが変な風に変換されて、宝玉にしかなかった干渉能力が、大幅に強化されたんだと思うよ。」
「つまり俺はァ………貴様の道具として作られたってのかァ?あァ!?」
声を荒げる紗衣に対し、キュウは顔色を変えずにこたえる。
「そういう事だ。それは置いといて、こっちに帰ってきてくれないかな?
僕はキミを自由に放してるわけじゃなくてさ。僕もキミを探してたわけなんだけど。
それにキミはそちら側について何のメリットが、何の理由があるんだい?絶対級天使さん。」
キュウの質問に対し、紗衣はいつも通りの不敵な笑みを浮かべる。
「俺がこっち側にいる理由ねェ………決めたぜェ……貴様をこの手で殺し、元の記憶を取り戻す。」
紗衣の言葉を聞いて、少し笑った後、キュウは手を構える。
「そうか。残念ながら、不良品は不良品のままだという事だね。“無慈悲の氷鎚”!」
キュウの掌から巨大な氷塊が現れ、紗衣を襲う。
しかし紗衣も氷塊に干渉し、バラバラに砕いた。
「干渉能力………さすがだよ。ただ、キミの能力の欠点は数の他にも多方向からの攻撃に弱いという欠点がある。」
「やってみなァ!」
紗衣の挑発に乗り、キュウが巨大な雷を何本も放つ。
「断罪の雷!」
紗衣の周りに何本もの雷が落ちる。
しかし紗衣は気にも留めない。
「俺に対する攻撃全てにおける干渉を実行すればいいわけだァ!」
「ほう。考えたものだな。しかしそれではいつまでたっても攻撃に移れないぞ?」
「ならよォ!はじき返せばいいだけだァ!」
ビュンっと手を振り、雷を閃光にしてキュウにはじき返す。
キュウは防御体制もとらずに全ての閃光を受け止める。
瞬間、紗衣が詰め寄り、渾身の一撃をキュウの腹にたたきこむ。
キュウがものすごい勢いで飛ばされる。
先は追い打ちを甘んじた紗衣だったが、
今度は悪魔の笑みを浮かべながら飛ばされるキュウに連続して打撃をたたきこむ。
「く………がぁ……ッッ!」
「大口たたいてた割にはァ……随分と呆気ねェなァ!!」
『まぁ……そういう事にしといてやろう。』
再び、何処からともなく声が上がる。
「貴様ァ……マジで不死身なのかァ?」
声の主はキュウだ。
キュウは先ほどもほぼ無傷の状態で立ち上がった。
「僕はこの翼を生命に変換できる。そしてこの翼はすべて魔力。実質不死身さ。」
「へェ……って事は貴様の魔力を根絶やしにしてから殺せばいいってワケかァ!」
「まぁそういう事だな。だが、もうキミと遊ぶ時間は終わった。デルタ!」
デルタと呼ばれたチャイナ服の男がキュウの前に現れる。
「キミたちが闘いに夢中になっているすきに、宝玉はとらせていただいた。」
「んだとォ………!?」
「そろそろこの遺跡も崩壊する頃だろう。キミたちは生き埋めになるのは嫌だろう。僕が外へ出してあげるよ。」
そう言った瞬間、純哉達は光に包まれ、気がつくと遺跡の外で、ただただ空を眺めていた。




