No.19-遺跡群調査-
「あ、そうそう。ぼ、僕達はこれから遺跡群の調査なんだけど、み、皆さんも行きますか?」
そう話しかけてきたのは兎ことナイジェル。
メンバーはナイジェル、狐こと楓、猫ことディオスの三人だ。
「えーっと、俺ら全員含めると八人パーティ、少し無理があるんじゃないか?」
カシスがナイジェルに質問を投げかけた。
しかしナイジェルは笑いながら言った。
「だ、大丈夫ですよ。い、いつもは五人で組んでますから。」
五人と言うと、クピドのちょうど半分で行っていることになる。
「そうか。なら、お邪魔させてもらおうかな。」
「ヒュヒュヒュ。面白そうじゃねぇの。」
「行くぜェ!ギャハハハハハ!」
「私も行く。」
「主役の俺が行かないわけにはいかないな。」
「ぜ、全員快諾ですね。了解です。で、では、転送室に行きましょう。」
──転送室内
転送室は思った以上に整理されており、無機質な機械が無数に並んでいる。
部屋はかなり広い。部屋の中央には転送装置らしきものが置いてあり、
常に魔力を放っているようだった。
「じゃ、じゃあ、行きましょうか。」
ナイジェルはニコニコしながら転送装置の中に飛び込む。
続いて楓、ディオスと飛び込んでいく。
「んじゃ、俺から行かせてもらうぜ。」
カシスが飛び込み、純哉、仙寿、紗衣、紅葉の順に飛び込む。
転送装置の中は思った以上に快適なようで動きやすい。
数秒後、転送地点に到着する。
到着直後、純哉が呟く。
「今回の転送装置は全然酔わなかったな。」
その呟きを聞いたカシスが付け加える。
「寧ろ快適なぐらいだ。」
二人のやり取りを聞いたナイジェルはキョトンとしている。
「え?え?ど、どういう事です?」
オドオドしているナイジェルをカシスが制す。
「………聞かない方がいいかもしれない。」
純哉もうなずきながら説明を付け加える。
「あれは人間の五感のすべてに働きかける………思い出しただけで………ウッ。」
「だ、大丈夫ですか!?」
純哉はその場で頭を押さえる。
カシスや、紗衣、紅葉までもが倒れそうになっていた。
仙寿だけヒュヒュヒュと笑いながら純哉達を見ていた。
──数分後
今回調査をする遺跡群に到着した。
何とも言えない神々しいオーラを放ち、たたずむその遺跡は
遥か昔の先人が造ったとは思えないほど精密だった。
「………」
仙寿を除く純哉パーティは下を向き、何もしゃべらずについてきていた。
「ほ、本当に皆さん大丈夫なのでしょうか………?」
「ヒュヒュヒュ。いつものことだ。」
「ニャー。マタタビあげるから元気出すニャー。」
「私だったらマタタビをもらっても喜ばないと思うよ。」
「それは楓だからニャ!きっと純ニャーは喜ぶニャー。」
「………」
「……喜ばないニャー。」
「………」
少々ディオスは落ち込んでいた。
これはマズい、とでも思ったか、良いタイミングでナイジェルが話を変える。
「で、では件の遺跡に到着しました。ちょ、調査と言ってもこの場所にある宝玉の有無を調べて、
有れば厳重なプロテクトをかけます。な、無ければ、周りに分散されている魔力の痕跡を調べます。」
そうナイジェルは言い、遺跡の最深部に向かう。
純哉達もナイジェルの後をついていく。
──最深部
「あ、有りました。まだ宝玉は無事です!」
ダウン状態から復帰した純哉達が宝玉に近寄る。
「よーし!さっさとプロテクトかけるニャー。」
「そ、そうですね。ではウェポンでプロテクトを………」
そうナイジェルが言い、ウェポンを発動しようとした瞬間、何処からか声が鳴り響いた。
『ほう。これは珍しい。我々の動きを事前に察知して駆けつけるとはな。』
ドゴォッと外を通じる扉が粉々に吹き飛ばされる。
立ちこめる煙の中から二人の男が現れた。
一人の男は、見覚えがあった。
天使が着るようなドレスに身を包んだ男。
十二枚の黄金の翼を携えた、その男はユラリと動きながらこちらに向かってくる。
その男が階段を徐々に下ってくる。
男は純哉達に気づき、笑いながら言った。
「これはこれは。遠い所からよくいらっしゃったな。純哉君。」
その男の名は
「キュウ………!!」
「覚えていてくれたか。それは嬉しいね。おっと、ジョーカー……もとい仙寿も一緒じゃないか。」
「ヒュヒュヒュ。ここであったが百年目。」
仙寿は笑っていたが、明らかに憤怒の形相を浮かべていた。
「ヒュヒュヒュ。アタックウェポン“オーバーナパーム”!」
オーバーナパーム、標的の周りの酸素を急激に燃焼させ、大規模な爆発と爆風を起こすウェポン。
周りに発火するものがあれば爆発はさらに大きくなる。
「相変わらずだね。“裁きの光”!」
キュウの指から放たれた一閃がオーバーナパームを打ち消す。
「じゃあ、反撃だ。」