No.15-渓流での一時-
カシス視点
緑色の大地。
新緑の大地。
微風が吹いて、心地よい。
静かに川が水を運ぶ。
秋色に染まった葉が、風に乗って大地へ落ちる。
木は黄色と赤と橙に染まり、見る者の心を圧倒する。
動物達が近づいてくる。
きっと来訪者が珍しいのだろう。
「ふーむ。ここはベロナス樹林かな。」
カシス・フランバーズは小粋な樹林の大地に腰をおろしていた。
ついさっきまで目が回る空間にいた。
空間が綻び、気がつくと森の中にいた。
「秋……だな。」
そう呟いた。
死の大陸ではないような、本当に美しい光景が広がっている。
「いつまでもここにいては仕方ない。少し歩くか。ちょうど北に進めばエルンだしな。」
そう言って、彼は動きだした。
「にしても、一体何故ゲートに誤作動があったのだろうか………
本来ゲートに誤作動が起きたら、転送前の空間に戻されるのだがな。」
ぶつぶつ呟き、考えながら前に進んでいく。
「………ん?」
彼は立ち止った。
周りには彼の来訪を快く思わない者たちが集まっていた。
中級魔物の群れである。
「数は十程度。対応はできるかな。」
彼は腰に装備している二丁の銃を取り出す。
魔物の群れに構え、目にも止まらぬ連射を繰り出した。
「オラオラオラァ!」
魔弾銃である。
魔弾を装填し、発射する対魔物用の銃。
その弾丸は魔物のみならず、他の生物にも極めて大きい傷を負わせる。
カシスが華麗な舞を続け、周りの魔物達が全滅した。
「ふぅ。終わり終わりっと。」
カシスが銃をしまおうとした瞬間、また別の魔物が背後から現れた。
どうやらカシスの放った魔弾の魔力に引き寄せられたようだ。
「フン。簡単には終わらせてくれないってか。零式魔散弾!」
魔弾には零から十のレベルが存在し、レベルは~式の形で表わされる。
魔弾のレベルは五が基準となっており、それより数字が上がると威力が重視され、
レベルが下がると魔力量が重視されていく。
つまり単に弾丸の威力を上げるか、属性の力を上げるかで分かれている。
十式になると魔力は全体の一%未満にまで下がってしまう。
しかし零式になるとその逆になる。
今はなった魔弾は零式。つまりほぼ魔力の塊を当てているのと等しい。
攻撃範囲の広い散弾は、一発で魔物の肉体を仕留めた。
魔物はその場に崩れ、やがて永遠の眠りに就いた。
「ふー。終わった終わった。」
そう呟き、再び大地に腰を下ろす。
少し休んでいると、携帯の着信音が鳴り響く。
紗衣である。何かあった時の為に番号を教えておいてよかった。
「へいへーい。」
(あァ!?貴様何処にいんだァ!)
「俺はベロナス樹林だぞ。お前はどこにいるんだ?」
(あー……ガルラ、だっけかな。あァ、それと大狗はこっちにいる。安心しろォ!)
「わかった。純哉が切れそうだな。」
(ハッ!どうでもいいんだけどよォ!まァいい!とりあえず、純哉はどこにいるんだァ!?)
「わからん。とりあえず今から連絡する。場所が分かったらもう一回連絡する。」
(了解だァ!)
ブツッ
手短に話を済ませ、紗衣はサッサと電話を切ってしまった。
カシスは純哉にも連絡をする。
どうやら純哉は仙寿と一緒らしく、しかもエルンにいるようだ。
「こいつは好都合。ガルラもベロナスもエルンに近いぜ。元々の転送地がエルンだからこの辺一帯に落とされたのか?」
考え事をしつつ、紗衣への連絡を済ませカシスはエルンに向かう。
難しい