No.12-天使の五月泣き-
「んー………?」
ここは………病院………?
夢落ち?実は最強の天使と戦ってたってのは夢?
んなわけ無い。
体には吹っ飛ばされた時の傷がある。
一回だけしかやられてないのに。
「や、やっと起きた!!」
この声は………紅葉である。
むむ。馬乗り………
「ブベボォォオオオオオオ!!!」
「ど、どしたの!?」
だって馬乗りだよ?馬乗り。
これどう見ても………パタッ。
「いや、何でもないんだ。」
「そっか。よかったよかった。」
「ずっと待っててくれたの?」
「うんっ!」
「なぜ?」
「だって………守ってくれたら。すごいかっこよかったよっ!」
ブベボオオオオオオオオオ!!
惚れる!これは惚れる!
にしても二日間も倒れてたのか。
いや、カレンダーを確認したんだけどさ。
「じゃあ純哉が起きたし、私研修行ってくるねっ!」
「お、おう。」
随分と柔らかくなったな。
攻略は順調ゴホンゴホン。
そんなバカなことを考えていると、見まいにきたのか冷やかしに来たのかよくわからない連中がきやがった。
「いよう。」
「ヒュークスクス!ざまぁ。」
カシスと仙寿である。
あぁ。もうめんどくさい奴らだ。
「今日は冷やかしに来たぜ。ヒューヒュヒュ!」
あーはいはい。
「情報持ってきた。お前の戦った天使についてだ。
絶対級天使、名は『泡沫紗衣』、お前と同じ名を持つ。運命を感じないか?」
「そういうこと言うなよ!テメェ!」
いきり立って猛反発。
だって運命とか言われると余計な誤解が……
何故こんなに怖がってるかって?
「ヒューヒュヒュヒュ!運命(笑)!お前はバイだからいけるよな?ヒャハハハハハ!!」
こいつがいるからだ。
あーめんどくさい。
嫌がらせが好きな奴だからな。仕様がない。
「んで泡沫についてだが、同じ病院内に搬送されたが、搬送された数時間後、自分自身の傷を完治させて帰った。」
「傷への干渉か………便利能力だな。」
「そうだな。だが干渉能力に穴があるなんて大発見だ。
昨日情報管理局に問い合わせたらそのようなデータは存在していなかった。
管理局に情報を売ったら十万で売れたよ。もちろん、金の八割はお前のものさ。」
こいつ………金のことしか頭にないのかッッ!
「まぁ、泡沫にもお前については話しておいた。ほとんど聞き流されたがな。」
「ふむ。んで、いつぐらいに退院だ?」
「今日中には退院できるぞ。」
ほうほうほうほう。
そこまで大きいダメージは受けてないってか。
加減したのか?いや、俺が強すぎるんだよな。
え?調子に乗るな?
チッ、うっせーな。
反省してまーす。
「んじゃ、俺達は帰るぜ。」
「ヒュー。」
「おう。じゃーな。」
手を振り、ドアを開けどこか彼方に行ってしまいそうな二人の背中を、じっと、じっと見つめていた。
天使も泣いちゃう