No.11-センチメンタル無用 絶対オンリー最強-
「ギャハハハハハハハッ!貴様は俺には勝てねェ!」
確かにハイドラは少年に直撃した。
なのになぜ傷一つつかず、はじかれた?
答えは簡単だった。よく見ると少年の全身が硬質化してますよ、
と言ってるくらい光沢のある鉄の色を成していた。
「超高速の物質操作に加え、肉体の硬質化………ッ!まさか………!」
思い出した。資料室で見たデータファイル。
“ランクSSSにおける重要参考データファイル、重要機関向け匿名配布用”
そこには物を音速で飛ばし、彼自身の腕が冷たく硬質化していたと書かれていた。
最後の方に二重能力系統の類で無いとも書いてあった。
もうこれはビンゴだろう。
「お前はランクSSSの頂点に立つ………第一位!!」
「あぁ。そう言えば俺がナンバーワンだったな。正直どうでもいいことだったけどよ。
そうさ。俺が第一位。全二千三百万人の頂点に立つ天使。絶対級天使だァ!」
こいつが、正体不明の理論を持ち、自分だけの法則を完璧なまでに操る王者。
こいつが、全二千三百万の天使の頂点にいる天使。
こいつが、絶対…………ッ!!!
「んじゃァ、正体も分かったことだ。遠慮なく、行かせてもらうぜェ!」
第一位の少年は超高速で懐まで潜り込んできた。
「んだと………!?」
単に驚いたわけではない。
ゴスッという鈍い音と共に、数十メートルほど飛ばされたからだ。
壁にたたきつけられ、壁を半壊させながら、やっと俺は止まることができた。
あり得ない。
そう呟いてしまうほどに、少年はあり得ない存在だった。
手の届かない場所にいる者。
だが、ここで引くわけにもいかない。
「やり返すぜ!ハイドラァ!!!」
「何度やっても無駄だっての解らねェのかァ!?」
硬質化。やはり相当硬いようだ。
どうにかボロを出さないものか。
というかあいつの能力は一体何だ?
ダブルスキルじゃないなら、何なんだ?
「キッヒヒヒヒヒ!!!あァ!貴様はさぞ不思議だろうなァ!
俺の能力について考えてたことだろう。教えてやるよォ!俺のスキルは『干渉』。
その名の通り物質に干渉し、速く飛ばしたり、重くしたりできる。俺の能力は『物体操作』となっているが、
そんなことはねェ!俺は物体で無い重力や大気、引力にまで干渉できる。人の体だろうが、自分の体だろうが、
何にでも干渉できる。テレポートでさえお手の物。が、物を生み出したり、触れてないものに干渉することは不可能。
だが大気中に電気などは発生させることができる。これについてはよくわからん。
自然現象の類なら発動できると俺は考えているがな。
能力発動の条件として、最低でも俺の体の一部が触れていないと発動しない。俺の体は別としてな。」
何というテラチート。
「テメェ、ならなんで俺の攻撃に干渉せず、硬質化なんてめんどくさいことしたんだ?」
俺は今の話から考えた。
何にでも干渉できるなら、
硬質化させなくても攻撃自体に干渉して、攻撃を消せるのでは?と。
なぜ消さないか。消せないのか?
それとも余裕なのか?
「あァ。そうだな。俺の能力は攻撃じゃねぇ。寧ろ防御の類に入るとも言われている。
その副産物で攻撃をしているようなモンだ。まァ、今の貴様の話を
攻撃を攻撃で打ち消さないのか?と俺は捉えたわけだ。それに危険なワケだ。
一回まだ能力が未熟な時に攻撃に干渉したら全部消しきれなくてよ。トラウマって奴だ。
安全性を求めるのと、その後すぐに攻撃に移れるように硬質化してるぜェ。」
ふむ。トラウマ、ねぇ。
つか今すぐに攻撃に移れるように硬質化してるって言ったな。
硬質化したまま突っ込んで音速パンチをかませばいいことじゃないのか?
もしそれができないとしたら、
一度に発動できるのに制限がある………?
これは説明が通る。
あいつはハイドラを受けた時吹っ飛ばなかった。
硬質化だけなら傷はつかないが、必ず飛ばされたはず。
ハイドラは人間の立っていられるほど甘く設定していない。
ならば、硬質化と同時に重量に干渉しているという考えが浮かぶ。
いける。
少しずつだが、勝てるような気がしてきた。
問題はどう誘導するか。
きっと相手の発動制限は二つ。
同じ物質だろうが、違う物質だろうが二つ。
そうだ。確か瓦礫を飛ばしてきた時、大きな瓦礫は二つしか飛んでこなかった。
瓦礫はもともと鋭く、重量もあるから速くするだけでいい。
だんだんと確信に代わってきたぜ………!!
「ふふん。」
つい笑いが出ちまった。
これほど愉快な時はない。
「あァ!?何笑ってやがんだァ!?とりあえず、俺も攻撃させてもらうぜェ!!!」
瞬間、懐に飛び込まれた。
誘導しなくても突っ込んできてくれた。
きっと音速パンチは自分の腕に干渉して超高速に耐えられるようにしているだろう。
そしてパンチの超高速化。これで二つ。
空間移動で後ろに回り込む。
なに、殴られた瞬間「残像だ!」とか言うくらいはお手の物さ。
「喰らえェ!オラァ!!」
「フッ………残像だッ!!」
瞬時後ろに回り込む。
最強クラスの弾丸をたたきこむぜ。
「魔弾銃ッ!!“ハイドラ・ドライブ(今命名)”!!」
「んだ………と?」
「じゃーな。」
直撃。第一位は数十メートル吹き飛ばされ、塀を何枚も貫通しつつ、地面にたたきつけられた。
「ガハァッ…………!!!!!」
血を大量に噴き出し、ピクピクとその場でのたうち回っていた。
「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァアアアアアアアッッ!!
ガァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!」
叫びを上げ、蠢く絶対なる天使。
「にしても………疲れ……紅葉………大丈夫……か?」
だめだ。もう、立てねぇや。
その場に倒れこみ、ただ紅葉の声を聞きながら、深い闇に落ちた。
正義とは、勝つものなんです。
タイトルはいつも適当です。
パロディが多い気がする。