侍女の配置転換
珠景姫には、五人の侍女がいる。
妹と侍女。二つの役割を担う色歌。
侍女見習いとして働く彩美家の双子姉妹。
そして、問題の侍屋敷家の姉妹だ。
どちらも珠景姫より年上で、本来は長姫制度に該当しない。
しかし、侍屋敷家の当主の指示により、侍女として宮殿で働いている。
夕食の準備をしてくれたのも、この二人だ。
「……侍女の制度さ、廃止にしない?」
「どうしてです?」
「侍屋敷家の姉妹を見ていると、申し訳ないなって思うし、夕食とかの準備くらい自分で出来るじゃん? 侍女って立場だけで、あの二人を苦しめたくないというかさ……」
「なるほど。姉さんらしい考えですね」
色歌は箸を置いて考え始める。
そして、すぐに口を開いた。
「明日から侍屋敷家の二人には、宮殿の業務に専念してもらいます。代わりに、彩美家の双子姉妹を、姉さんの主たる侍女に昇格させますね」
掃除や食事の準備、来客の対応などの仕事に専念する形であれば、年上の二人も働きやすくなるだろう。
侍女の配置転換を提案した色歌は、どこか嬉しそうに笑っていた。
新しい風が吹く気がして、珠景姫も穏やかな表情を浮かべる。
桜の花が、ふわりと舞った。
翌朝。色歌が双子姉妹を連れてきた。
宣言通り、侍女の配置転換を行うらしい。
「本日より、彩美家の双子姉妹がお仕えいたします。何なりとお申し付けください」
座礼を終えた色歌は、後方へと下がる。
緊張した表情で座る双子姉妹は、十歳の侍女見習い。
宮殿で暮らしながら、立派な侍女になる為の勉強を続けて来た。
「姉の彩美 小春と申します。よろしくお願いします」
編み込んだ一つ結びの茶髪が、肩の前に流れる。
小春は、落ち着いた雰囲気を纏う少女だ。
茜色の着物。丈の短い緑の袴風スカート。黒のタイツ。
ハイカラな服装が、良く似合っている。
「彩美 小鈴、十歳です。よ、よろしくお願いします!」
三つ編みにした茶髪のおさげが揺れる。
小鈴は、快活で愛嬌のある少女だ。
緑の着物。茜色の袴風スカート。黒のハイソックス。
椿の髪飾りを、お揃いで付ける姿も可愛らしい。
「まだまだ未熟な姫ですが、どうぞよろしくお願いします」
珠景姫が深々と座礼すると、双子姉妹も慌てて頭を下げた。
「それと」
「「……?」」
次の言葉を待つ二人に、珠景姫は優しく微笑む。
「堅苦しい関係は嫌だから、もっと気軽に接して欲しいな。一緒に食事したり、立場を忘れて遊んだり。お互いに、楽しい時間を過ごせたら嬉しいなって」
「「はい!」」
「私も仲間に入れて欲しいんですけど……」
色歌は寂しそうな声を作って、こちらに手を伸ばす。
緊張感の無い色歌の行動に、ふふっと笑ってしまった。
和やかな空気が、部屋に広がっていく。
希望の光を浴びた心は、春のように穏やかだった。
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『 珠景色の春風鈴 』:彩美家の双子姉妹
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珠景姫Mikagehime ⇔ 珠景色の春風鈴
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どちらから読んでも楽しめる物語
❀ 春風鈴→珠景姫(時系列順)
❀ 珠景姫→春風鈴(神島家の姉妹を深く知る)




