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珠景姫 Mikage hime  作者: 美珠夏/misyuka
序章( 珠景姫 )
1/55

夏に残した珠景姫の想い

 

 あの夏、叶わなかった夢がある――


 八月八日になると、私は目を覚ます。

 誕生日であり、命日でもある特別な一日。

 珠景姫(みかげひめ)は十七歳の誕生日に、その生涯を閉じた。


 故郷の島に存在した長姫制度(おさひめせいど)という文化に抗う為に。

 文化の転換期を迎える為の、きっかけを作る為に。

 御神体と呼ばれる巨樹の前で、自ら大穴に飛び込んだのだ。


 あれから百回目の夏。

 今も珠景姫(みかげひめ)は、あの頃の姿のまま生きている。

 正確に言えば、御神体の力によって生かされているのだ。

 御神体の精霊に魂が宿ったことで、不思議な存在に生まれ変わってしまったらしい。


 あの日『大正』だった元号は、昭和と平成を経て『令和』の時代へ。

 長姫制度(おさひめせいど)の名残すら無い現代で、終わりのない物語を生きている。


 まさか、こんな事になるとは思わなかった。

 全てを託した最愛の妹も、もう生きていない。

 思い出を共有した侍女達も、天寿を全うして眠りについてしまった。

 最初に命を落とした珠景姫(みかげひめ)だけが、今も一人生き続けている。


 令和の時代に、長姫制度(おさひめせいど)を知る人物は珠景姫(みかげひめ)しか居ない。

 人々から忘れ去られた土地で、姫として生きた時代に思いを馳せる。


 今更になって、あの夏が恋しくなった。

 もしも、あの日の続きを描けるのなら、今度こそ自分らしく生きたい。

 姫という立場に縛られず、一人の女の子として生きてみたいのだ。


 特別な立場で生まれ育ったからこそ、普通の暮らしに憧れがある。

 知らない世界を一人で旅をして、自由に過ごす解放感にも浸ってみたい。

 それが、珠景姫(みかげひめ)の夢だ。


 一度諦めた夢の欠片を、十七歳の心は大切に守り続けて来た。

 でも、きっと叶わない。

 あの夏、珠景姫(みかげひめ)の物語は悲劇として完結したから。


 淡い希望を抱く珠景姫(みかげひめ)は、今年も静かに八月八日を生きる。

 いつか、この物語にも終わりが来ると信じて――



珠景色の春風鈴から17年後の物語

『珠景姫』が本日より連載開始です!


春風鈴は毎日投稿でしたが、

2025年からは 水曜日、日曜日の投稿になります.*・゜


1/1~1/3まで3日連続投稿STARTとなりますので、

明日も読みに来てくださいね(*´꒳`*)


これから始まる新しい物語『珠景姫』

そして、最後まで紡がれた『珠景色の春風鈴』

美珠夏/misyukaの作品を、

今年もよろしくお願いします!


美珠夏/misyuka の宮本でした˙ᵕ˙ )ノ゛

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