自分これから本気出す…!
2253年8月5日
盛大な紙飾りでいろどられたリビングの中で少し大きめのクラッカーが僕の耳元で鳴った。
「お誕生日おめでとう!」
そうやって18になったお祝いをしてくれたのは、女で1人で育ててくれている母と2歳下の妹だ。学校にろくに行かず、部屋でネトゲに全精力を注いでいる僕(獅川 司)を2人はいつも笑顔で接してくれている。
「ありがとう…」
「これで司も晴れて成人ね!もう届いてるけどまだ封筒の内容は見てないから私も朝からドキドキよー」
「ツカ兄はなんて書かれてるのかな?まさかニートだったりして」
そうして僕の机の前にある1つの封筒に2人は目を向けた。
2230年全世界で人々の平等と多様性を認める政策が行われた。その1つに国家推奨便というものがある。それはその人が今まで生きてきた功績と履歴に基づいて、国がその人にどのような生き方が合っているのかをデータで取り本人に封筒で送るという政策だ。
これは成人になった日に送られる。つまり、この封筒に書いてある内容がこれからの人生を分けると言っても過言では無いのだ。
「本当にろくなこと書いてないんだろうなぁ…」
「何言ってんの!私の子供よ?どんな結果であろうともあなたが幸せに生きれるならそれでいいわ」
ドヤ顔の母を横目で見ながらそっと中身を僕は確認した。
『獅川 司 様 この度は成人おめでとうございます。あなた様のデータを取らせていただいた結果、国家特殊防衛学校への推薦入学書を送らせて頂くことになりました。つきましては、来月の一日より転入生として迎え入れたいと考えております。』
「国家特殊防衛学校…?」
聞いた事のない名前の学校名と手紙の内容に全員が頭を傾げた。
封筒には転入手続き書が1つと、学校の内容が書かれた手紙が3枚ほど入れてあった。
国家特殊防衛学校を卒業すると高収入の職場につけることを理解した僕はこの時にどうするか決めていた。
「僕行くよ…」
家族に散々迷惑をかけた僕の最初で最後のチャンスだと思ったんだ。
「本当に行くの…?見たところ全寮制の学校みたいだけど…」
「ツカ兄が学校で寮生活…!?だ…大丈夫だよね…」
「本気出せば…?い、行けるよ…!」
内心不安しかないが行くしか無いのだ。
「とりあえず明日このステータス登録書を作りに行ってくるよ」
そう言いながら2人が手作りしてくれたチョコレートケーキをフォークで刺した。