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あの恨みを晴らしにきました  作者: 酔夫人(旧:綴)


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第2話 死んでも許さない。

 笑えなくなったのは誰かがSNS上で『私』の写真を公開したとき。


 これが『橘斗真の妻』だって中学の卒業アルバムにいた『私』がのった瞬間から『橘斗真の妻』への誹謗中傷が『私』にも向けられるようになった。


 『私』の情報は中学時代の写真だけ。当然容姿に対する誹謗中傷になるわ。「身のほど知らなさ過ぎて気の毒になるレベルwww」とか「これで春沢杏奈に勝てると思う神経がすごい」とかね。


 写真一枚、私の顔を貶し続けるのもそう長くは続かない。だから誰かは『橘斗真の妻』を煽り続けるために『橘斗真の妻』に『私』の情報を加えていった。


 どこそこのクラブで遊んでいる『#橘斗真の妻』は『私』じゃないって笑えるけれど、〇〇町のコンビニで見たと言われると笑えない。中学時代の写真といっても面影はある。この「見た」は『私』かもしれない。


 「バイトしているコンビニで『#橘斗真の妻』がカップラーメンを買っているのを見た」なんて、どこのコンビニか分からないけれど『私』はコンビニでカップラーメンを買ったことがある。


 コメント欄で料理が下手とか妻失格と言われるのは『橘斗真の妻』なのか『私』なのか分からなくなった。


 「ドラッグストアで買い物してた」なんて、ドラッグストアで買い物したことがない人のほうが少ないわよ。「精力剤を買ってた」「ゴムを買ってた」と投稿は続いて、ゴムはないけど精力剤は買ったことがあるから……え? ゴムはないわよ? メーカーごとにサイズが微妙に違うから誠が用意するって……今は関係ないわね。


 と、とにか


 こんな感じでそれが『#橘斗真の妻』なのか『私』なのか分からなくなっていった。怖かった……今でもあのときのことを思い出すと手が震える、ほらね。


 ……なんて顔をしているの?


 気にしないでって言っても気にするよね、ごめんね。でもこうして話していると……なんだろう、満足する感じがするの。


 うん、続けるね。



 次はどの『私』が書かれるか、そして『私』に対して何を言われるのかが怖くて、私は外に出られなくなった。仕事もやめた。


 それでも『橘斗真の妻』の目撃証言は止まらない。毎晩のように『橘斗真の妻』と寝た男が性行為を赤裸々に語る。それは『私』じゃない。でもコメント欄には「あの顔で笑える」みたいに『私』への非難が混じる。


 きっと当時の私は狂っていたんだと思う。


 だんだん私が『橘斗真の妻』になっていく気がした。家から一歩も出ていないのに見知らぬ男と寝た気がして、毎日何回もお風呂に入るようになった。


 『私』が貶められれば、ブスだと言われれば美容系のサプリメントをひたすら飲んで、デブと言われれば食事を抜いた。


 こんな生活をしていれば当然なんだけど体が悲鳴を上げて……いつかは分からないけれど家で倒れて、気づけば病院のベットの上だった。

 

 誠が発見して救急車を呼んでくれたと担当の看護士さんが教えてくれたわ。意識を取り戻した患者への状況説明もその後の診察も彼女たちの仕事だと分かっているけれど、見知らぬ誰かが傍にいるのは耐えられなかった。


 この人たちもSNSに何かを書くんだって思ったとき、頭の中でパンッと何かが弾けたの。風船が割れる感じに近いわ。



 次に目を覚ましたとき誠がいた。


 「ああ、誠だ」って思ったんだけど何も話せなくて、そのうち誠は部屋を出て、直ぐに戻ってきたんだけど……あれは戻ってきたと言っていいのかな。


 部屋に入ってきたのは『橘斗真』で、隣には『春沢杏奈』がいて、何かと思えば「俺と離婚してくれ」って言ったの。


 …… 私は何を言ったのか覚えていない。


 でも気づいたら離婚してた。



 私は捨てられたんだって思ったとき、真っ先に浮かんだのが恨みだった。ふざけんなって思ったわ、ドラマとかなら悪女は泣き崩れて終わるかもしれないけれど私はそんなことするもんかって。


 この瞬間に私の中から『橘斗真の妻』が消えた。実際に離婚していたから、もう誰の妻でもないわって思ったのも大きいわね。


 それで決めたの、『真実の愛』に復讐してやるって。



 死んでも許さないって。

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