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パンの街
知人の幼い息子さんが、亀の形をしたパンを作りたいと力説していた。
頭はアンパンで、手足はフランスパン。甲羅の部分はメロンパンにしたいんだとか。
「そんなに色んな種類のパンが混ざっていたら、作るの大変そうだね」
と言ったら、ムッとした顔をされた。
おいしいパンを作るためなら、大変でも構わないそうだ。
それから、パンで作った街に住みたい、という野望についても熱く語ってくれた。
パンの街には、ふかふかの食パンで出来た家が立ち並び、室内には食パンで作ったベッドやテーブルがあるらしい。
「食パンしかないの?」
と尋ねたら、道端の電柱はフランスパンだし、道路を走る車はメロンパンだから食パンばかりじゃない、とのことだった。
だがしかし、バス停に置かれたベンチや郵便ポストなどは、やはり食パンで出来ているというではないか。
「やっぱり食パンばっかりじゃねーか!」
と思ったが、そこまで親しい間柄ではないので、ツッコむのはやめておいた。
ふかふかの食パンだらけの街。
行ってみたいような、そうでもないような。
春を思わせる、温かな休日の昼下がり。
私はどっちつかずの気持ちで、パンの街の話に耳を傾けていた。




