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スーパーマーケット

 先日、うちへ遊びに来た親戚の子が、ピザを食べたいと言い出した。


 宅配ピザは高いので、スーパーへと向かう。家から十五分の道のりを、二人並んでてくてく歩いた。


 行きは特に問題なかったのだが、着いてからが大変だった。

 親戚の子は小学生で、とにかく落ち着きがない。

 ちょっと目を離すと、すぐに姿が見えなくなる。

「そばを離れないで」

 と何度言っても、すぐにいなくなる。

 そのたびにスーパーの中を探し回らなければならず、非常に効率が悪い。


 一瞬「買い物が終わるまで放っておこうか」という考えも頭をよぎったが、見知らぬ人に連れ去られでもしたら大変だ。

 仕方なく、ついでに買おうとしていた物の大部分は諦めて、ピザが置いてあるコーナーへと向かった。


 平日ならば四分の一にカットされたピザも売られているのだが、休日は箱に入った直径三十センチのものしか販売されていない。

 この大きさのピザを六百円前後で買えるのは、かなりお得だ。

 種類も豊富で、マルゲリータ・四種のチーズ・明太ポテト・照り焼きチキン・ソーセージとベーコン・スモークチーズとシーフード……などなど、どれにしようか迷ってしまう。


 相談して決めようと思い

「どれにしようか」

 と声をかけたら

「これにする」

 と照り焼きチキンのピザを指差す。


「もう決めたの? 早いね。でもさ、シーフードも美味しそうじゃない?」

「ええーっ。そんなの嫌だ。どうしてもこれがいい」

「どうしても?」

「どうしても」

 というわけで、照り焼きチキンのピザに決定した。


 レジに向かい、会員カードを取り出してバーコードを読み取ってもらおうとしたら、横から小さな手が伸びてきて奪われた。

「あたしがやる!」

 親戚の子はレジのお姉さんにカードを差し出し、ピッとやってもらってご満悦だ。


「あのさ、人のカードをいきなり奪い取らないでよ」

 と注意するも

「はいはい」

 と適当に流された。


「あたしがピザの箱を持つ!」

 と言い張るので

「落とさないでよ」

 と念を押して手渡す。


 私が他のものを袋に入れている隣で、ピョンピョン飛び跳ねる親戚の子。

 嫌な予感しかしない。


「ピザ、絶対に落とさないでよ」

「平気、平気」

 というやり取りの直後、ピザの箱が床に落下した。


「だから言ったじゃん!」

 と怒りながら箱を拾い上げると

「ごめん、ごめん。もう落とさないから」

 とヘラヘラしている。


 面白がってまた落としそうだったので、私が持って帰ることにした。


「ピザの箱、持ちたい!」

 と騒いでいたが、聞こえないふりをして早足で先を歩く。

 すると、後ろでドサっという音がした。

 振り向くと、親戚の子が道端に両手両膝をついて座り込んでいる。


「痛いー!」

 と泣きわめくので、近付きながら

「どうしたの?」

 と聞いたら

「転んだ! 痛い!!」

 と叫んで号泣し始めた。


 見たところ怪我はなさそうだったし、買い物袋とピザの箱で両手がふさがっていたので

「悪いんだけど、自力で立ってくれる?」

 とお願いしたら

「ひどい! 『大丈夫?』って心配してよ!」

 と激怒された。


 早く家に帰りたかった私は、言われた通りに

「……大丈夫?」

 と聞いたが、言い方が気に入らなかったようで

「もっと心をこめて!」

 とダメ出しを食らってしまった。


 このまま付き合っていると長くなりそうだ。

 そう思った私は

「じゃあ、先に帰ってるね」

 と言って、さっさと歩き出す。


 すると、親戚の子はすぐに立ち上がり、こちらに向かって走ってきた。

「ひどいよ! 意地悪!! 大っ嫌い!!!」

 背後から罵声を浴びながら自宅に帰り着き、手を洗ってピザを温め、テーブルに運んで切り分ける。


 親戚の子は、転んだことなどすっかり忘れた様子で「ピザダンス」なるオリジナルの舞いを披露してくれた。


 ピザを頬張る幼い横顔を眺めながら、子育てをしている全世界の人々に「お疲れ様です」と言いたい気持ちになった。

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