焼肉
待ちに待った、焼肉を食べに行く日がやってきた。
うちの近所には美味しい焼肉屋さんがあり、土日・祝日は行列ができるほどの人気店だ。
高級店ではないけれど、気軽に行けるような値段の店でもないので、まだ数回しか訪れたことはない。
しかし、今回は地元の飲食店で使える商品券が手元に沢山あるから、値段を気にせず食べられる。
商品券の使用期限は残り一ヶ月。
早く使い切らないと、ただの紙切れになってしまう。
焼肉を食べに行くメンバーは、以前一緒にグランピングをした、姫と運転手と私の三人だ。
ちなみに焼肉屋は徒歩圏内なので、運転手には運転ではなく姫の世話係を担当してもらう。
呼び名も「世話係」に変更だ。
前回お店に行ったのは、確か数ヶ月前の週末だった。
事前に予約をしようとしたのだが、予約枠は既に満席。
姫は大人しく順番待ちなど出来ない。
コンビニやスーパーのレジに並ぶだけでも
「ねえ、まだあ?」
と三十秒おきに聞いてくるくらいだ。
仕方がないので、世話係が先に焼肉屋へ行って並び、順番が来たら我々に連絡をするということになった。
それまで、私と姫は家の中で待機だ。
しかし、甘かった。
姫は家で待つ間も
「ねえ、まだあ?」
を連発してきたのだ。
あまりにもしつこいので、とうとう私は
「うるさい!!」
とブチ切れてしまった。
非常に険悪なムードが漂ったが、世話係から
「テーブルに案内されたよ!」
と連絡がきた途端、姫の機嫌はすっかり良くなった。
「焼肉、焼肉、食べ放〜題」
と歌いながら靴を履き
「早く早く」
とニコニコしながら私を手招きする。
単純で良かった。
私も急いで靴を履き、姫と一緒に家から徒歩三分くらいの焼肉屋へと足早に向かう。
店内に入ると手前のテーブル席で世話係が待っていた。
我々が焼肉屋で食べるものは、いつも決まっている。
世話係はホルモンの盛り合わせ。姫がロースで、私はハラミだ。
肉はこの三種類しか注文しない。
世話係と姫はロースもハラミも食べるが、私はハラミ専門だ。
注文した肉がテーブルに届き、どんどん焼いていく。
世話係の注文したホルモンから脂がしたたり、ちょくちょく網の上が火の海となった。
そのたびに姫が騒ぎ、世話係と私はドリンクの氷を取り出して網の上を転がし、消化活動にあたる。
途中で海鮮チヂミを追加する。
卵の割合が多めで中はふんわり、外はカリカリだ。
「美味しい〜」
と姫の箸が止まらない。
食べ尽くされてしまう前に、各自の皿へ取り分けておく。これで安心だ。
皿が空になったところでロースとハラミをさらに注文し、タレをたっぷりつけて、やわらかい肉を心ゆくまで味わう。
この店は食後の無料サービスがあり、コーヒーかアイスクリームを選ぶことができる。
世話係と私はコーヒー、姫はアイスクリームにした。
瞬く間に小さめのバニラアイスを平らげた姫が
「足りない。もっと食べたい」
と駄々をこね始める。
しまいには
「三人ともアイスにすれば、私が三つ食べられたのに」
と言い出した。
何で人の分まで食べる気なんだよ。
追加でアイスを注文しようとする世話係を止めて、伝票を見せる。
これ以上は予算オーバーだ。
姫はブーブー文句を言っていたが、構わずレジへ向かい会計を済ませる。
店を出た後も
「あーあ、アイスもっと食べたかったな〜」
とボヤく姫に
「しつこい!」
とキレたら
「しつこくないもん!」
と逆ギレしてきた。
いや、しつこいだろ。
「どうする? どっかでアイス買ってく?」
と余計な口出しをする世話係に
「甘やかさなくていい!」
と八つ当たりしながら、夜道を歩いて帰宅した。
今回も予約は出来なかったので、きっとまた世話係が行列に並び、姫が「ねえ、まだあ?」と連呼して、私がブチ切れることになるのだろう。
ちっとも学習しない我々は、この先もずっと同じやりとりを繰り返していくに違いない。




