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三話 自己紹介

 ノア社長から会社の業務内容について軽く説明を受けていると、入り口の方から誰かが入ってくる音がした。


「ただいま戻りました、社長――あら?」

「やぁ、お帰り。レイラ。買い出しご苦労様」


 応接室に入ってきたのはふわふわとした雰囲気を持った妙齢の女性だった。

 肩口で切り揃えられたベージュ色の髪に整った顔立ち、ほんわかと俺たちを見つめる濃褐色の瞳。そして何より彼女の持つ豊満な胸が俺の目を引いた。

 いや、別に巨乳好きってわけじゃないぞ? 本当に。


「そちらの方は……お客様かしら?」

「違うよ、レイラ。彼は今日からここで働く私たちの新しい仲間さ。前に話しただろ?」

「アラン・フューリーです。本日からこちらでお世話になります。よろしくお願いいたします。」


 俺は椅子から立ち上がり自己紹介をする。どうやら彼女もここの社員の一人のようだ。


「あらあら、あなたが例の――。初めまして、私はレイラ・マキュベリーと言います。この会社の受付を担当しています。どうぞよろしくね」


 そう言って彼女は微笑みかけてきた。

 俺はまるで聖母のような微笑みをもつ彼女の魅力に当てられてしまい、顔が少し赤くなってしまった。


「お? 早くもレイラの魅力に当てられたのかな? 顔が赤いよぉー、アラン君?」

「もうっ! 茶化さないで下さい! 社長!」


 顔を真っ赤にして反論するレイラさん。その仕草も随分と可愛らしいものだった。


「さて、レイラを揶揄(からか)うのもほどほどにして……。それじゃあ、私たちクエスト代行サービス社の社員をちゃんと紹介しようか」

「はい。よろしくお願いいたします。」


 ノア社長はこほんと場を改めなおすように咳払いすると、社員の紹介を始めた。


「まず私だね。私がクエスト代行サービス社の社長のノア・ハウストゥルムだ。社長ではあるけど、あまり堅苦しいのは得意ではないからね。気軽に接してくれればうれしいよ。よろしくね、アラン君」

「はい。よろしくお願いいたします」

「次に彼女が――」


 ノア社長の言葉を遮るようにして、隣にいたレイラさんが口を開いた。


「改めまして、私が受付兼経理担当のレイラ・マキュベリーです。これからよろしくお願いします、アランさん」

「はい。よろしくお願いします、レイラさん」


 そう言って再び笑顔を見せる彼女を見て、少しドキッとした。


「そして最後に――」


 そういってノア社長は目線をある一点に向ける。

 彼女が向いた方向にはソファーがある。たしか、あそこには――。


「ほら、起きてクロちゃん! 私たちの新しい仲間が来てくれましたよ! 挨拶しましょう!」

「んぅ……なんだよ、うるせえなぁ……。新しい仲間が何だって……?」


 レイラさんの呼びかけに答えながらソファーの上で寝ていた黒いフードの少女が目を覚ます。

 フードから覗く黒髪の間からは睨みつけるような鋭い金色の瞳が見える。


「おい、お前。誰だよ?」


 不機嫌そうな声色で少女は問いかけてくる。

 そんな彼女にノア社長が答える。


「ほら、前に話しただろ。新しい人材がやってくるってさ。それが彼だよ」

「ああ、こいつが……。ふーん……」


 俺のことを値踏みするようにじっと見つめる彼女。俺は居心地の悪さを感じながらも彼女の視線を受け止める。

 しかし、改めて彼女を見ると小さな子供にしか見えない。身長なんて140センチくらいしかないんじゃないだろうか?

 こんな小さな子まで社員とは、本当に人材不足のようだ。


「……おい、お前。今オレのことを子供だと思いやがっただろ? あぁん?」

「いえ、決してそのようなことは思ってませんよ」


 彼女は俺の態度に不満を抱いたのか、威圧的な目で俺を睨みつけてくる。

 その目線に耐え切れず、俺は彼女から目線を逸らす。


「チッ……まあいい。オレの名前はクロ。この会社では諜報担当として働いてる。先に言っとくが絶対にオレの足を引っ張るんじゃねぇぞ、新人」

「あぁ、わかったよ。俺はアラン・フューリーだ。よろしく頼む。先輩」

「……ふん」


 そう言って彼女は再びソファーへ寝転んでしまった。

 ……彼女はどうやら気難しい性格のようだ。


「さて、これで私たち全員の紹介が終わったね。……うん、やっぱりいいね。人数が増えるというのは。活気があって良いものだ」


 そう言うノア社長の顔には嬉々とした笑みが浮かんでいた。


「それじゃあ、早速で悪いんだけど。今から君には私たちと一緒にある依頼を遂行してもらうよ」

「依頼ですか?」

「そうだとも。初勤務の君にピッタリの依頼さ♪」


 そう言ってノア社長は楽しげな表情を浮かべたまま、ニヤリと笑うのだった――。

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