一話 鮮血に濡れたプロローグ
初めて小説を書いてみました。よろしくお願いします。
「き、貴様は一体何者だ……!」
盗賊ギルド"黒狼"のボス、カーライルは目の前の光景を目の当たりにし戦慄していた。
アジトである古びた屋敷に集められていた腕に覚えがある手下たち、約100人ほどが遺体となって床に転がり血の池を作り上げていた。
そして今、その悪夢のような光景を作り出した一人の女が自分の眼前に立ち塞がっている。
しかも、あれだけの数を相手にしたというのに女の身体には一切のダメージがない。それどころか息一つ乱れていないのだ。
「あーあ、私のお気に入りの白いコートがこんなに血で染まっちまって……。帰ったら、レイラに怒れるなぁ」
「くッ……!」
「それにしても、あんたたち意外と雑魚だったね。悪名高い奴らが集まった危険な連中だと聞いてたんだが、軽い運動にもならなかったよ」
「ふざけるな!! 貴様は一体何者なんだ!? なぜ俺たちのもとに現れた!!」
そう言いながら、カーライルは腰に差している魔剣を抜き放つ。
しかし、そんな状況でも女は全く動じない。むしろこの状況を楽しむかのように不敵な笑みを浮かべている。
「屋敷に入ったときに言っただろう? 私はノア・ハウストゥルム。クエスト代行サービス社の社長様だよ」
「クエスト代行サービスだと……?」
「そっ、ギルドで対応が難しいような依頼を私たちが請け負っているわけ。今回の依頼は極悪盗賊ギルド"黒狼"の討伐さ」
「俺たちを討伐だと……! ふざけるな小娘が! 貴様など俺の魔剣の錆にしてくれるわ!!」
そう言ってカーライルはノアに向かって駆け出し、手にしている魔剣を振り下ろす。
しかし、ノアはそれを片手で軽々と掴み、指先の力だけで魔剣をへし折ってしまった。
「なッ……! ば、ばかなッ……! 俺の魔剣をへし折っただとッ!!」
「ぬるいねぇ……"黒狼"のボスの実力ってのはこんなものなのかい?」
呆気に取られて一瞬動きを止めてしまったカーライルの隙をノアは見逃さず、掴んだ魔剣をカーライルから奪い取り適当に放り投げた。
「さてと、そろそろあの世に旅立つ覚悟はできたかいカーライル君? 神様に対面する気分は? この世に未練がないよう時世の句はできたかい?」
「ヒ、ヒィイイッ!!! やめてくれェエエッ!!」
指をバキバキと鳴らしながら近づくノアに、カーライルの心は恐怖に支配されもはや戦う意思など微塵もない。尻餅をついて後ずさることしかできなかった。
「無様だねぇー。まあとりあえず、さよなら」
「ギャアァアアッーーーーーーー!!!」
天を貫くほどの衝撃音とカーライルの最後の叫びが屋敷に響きわたる。
この日、極悪盗賊ギルド"黒狼"は消滅した。