チックタック
チックタックチックタックチックタックチックタック。
寿命を引き延ばすことが可能ならば、その逆も然り。あいつは、あいつらは危険だ排除しろ。
チックタックチックタックチックタックチックタック。
過去の文献には記されていない未知の病や、一度は撲滅したはずの病がまた流行り始めている。あいつは、あいつらは利用できる。囲って生かしておけ。
チックタックチックタックチックタックチックタック。
大きく小さく規則的に不規則に振り子が揺れ動く。
チックタックチックタックチックタックチックタック。
チックタタッチックタックチックタッタチックタック。
チッタタックチッククックチックタックチックタッタ。
寿命が存分に引き延ばされても、病や事故、人工災害、自然災害からは逃れられないと、
嘲笑が高らかに響き渡る。
浅葱の家の前の薬草園にて。
「あいつ最悪!本当にほんっっっとうに!さいっっっあく!なの!」
「はいはい。落ち着いて。水美。ほら、深呼吸してください。すう~はあ~。すう~はあ~」
「無理!むりむりむりむり!落ち着けない!ああもう!さっさと水牢に閉じ込め置けばよかった!けど!そうしたらそうしたで満足そうなあいつの顔が浮かんでもう!もう!んーちゃん!あいつを、雪白を岩の中に閉じ込めて一生出て来られないようにしてよ!」
顔を真っ赤っかにさせた水美に迫られた忍灯は、嫌ですよと朗らかに言った。
「雪白が浅葱の薬草をダメにした極悪人でも、俺っちの岩を罰を与える道具には絶対したくありません。いくら赦せなくても。腸が煮え繰り返っていても。ダメなものはダメです」
「んきぃぃぃ~~~」
よっぽど腹の虫が収まらないのだろう。
遊びに来た忍灯はまさかこんな事態に遭遇するなど思わず、とにもかくにも水美を宥め続けた。
「ゆるさない!絶対に!ゆるさないんだから!」
水美はひときわ甲高い声を大きく出した。
奪い取った浅葱の薬草を素直に返した時点では、雪白のことはまあ、少しは赦してやろうと寛大な心で以て、逃がしてやったのだ。
それがまさか、雪白から手渡された小さな瓢箪の蓋を開けてみて、薬草が元の位置に戻ったと喜んだのも束の間。
あたしが取り返したのよ、それに、水の方が相性がいいこにはちゃんと水の器に入れておいたからね。
勝ち誇った顔は控えめにして上品な態度で以て、浅葱と史月を出迎えようと思ったのも束の間。
その為に、全員が浅葱の家から出て行ったのを見届けてのち、浅葱の薬草大復活作戦に取りかかったというのに。
まさか、元に戻った薬草全部が全部、枯れ果てているなんて、誰が思いつこうか。
否。そこまで残虐非道なやつだなんて思いもしなかった。
(ここまで、さーちゃんを憎んでるなんて、)
「あ~~~もう!もう!」
「ほらほら。水美。ひとまず浅葱の家に入りましょう。俺っちが台所を借りて何か美味しいものを作ってあげますから」
「ん!」
大きく頬を膨らませた水美から差し出された手を見て苦笑した忍灯は、その手をやわく握ると浅葱の家まで水美をエスコートしたのだった。
「水美の手は潤っていて、弾力があって、やわらかくて、滑らかで、ピチピチしていますね」
「んーちゃん、キモイ!」
「ひどい。褒めたのに、」
(2024.10.17)




