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こん




(何も言わないな)


『史月。サンドイッチ、めっちゃ美味かったから、今度また作る気になったら浅葱にあげろよ。絶対飛び跳ねるくらいに喜ぶから』


 浅葱にもサンドイッチのことを言ったと、都雅から感謝の気持ちと共に伝えられた時、動揺したが、それも短い時間。

 基本的にどーでもいいと深くは考えはしないので、言われたとしてもどーにかなるだろうと思っていたのだが。


(何も言わない)


 この範囲の畑は好きに食べていいと言われている場所から生で食べられる薬草を根から丁寧に引っこ抜いて家に持ち帰り、台所の水場でざっと土埃などを水で洗い流してから、ついでに蛇口から水をコップに注ぎ、食卓に着いてさあ食べようとした時だった。

 背中を丸めてのそのそと歩きながら、台所に立って手に持った薬草を水で洗って、正面に座った浅葱を見て、同じ食卓に座るのはほとんどないよなと、今更ながらの感想を抱きつつも、サンドイッチのことは何も言わないなとの思いも抱いてしまい、眉根を僅かに寄せる。


(いいじゃないか、何も言わないのだから。僕から言うことでもなしに。もう気にするんじゃない)


 もしゃりもしゃりと、よく噛んで薬草を食べ続ける史月の視線はしかしどうしても、浅葱から離れない。

 光に当たっては色を変える海に漂う昆布みたいな二色の前髪の所為で見えない浅葱の視線は今、薬草にだけ注がれているのだろう。

 俯いているし、姿勢悪いし、顎が前に出ているし、上下に揺れている頭なんて今にも食卓にぶつかりそうだ。

 疲れて、いるのだろう。

 と、簡単に判断できるほどに、疲れている。


(寝ればいいのに)


 そんな簡単な提案さえ、口から紡ぎ出せたことはない。

 そんな自分たちの関係って一体。


(あーやだやだ。らしくない)


 ぐえりと下唇を出した史月。ゆっくりと水を飲んでから、コップを洗い、自室へと戻って行った。











(2021.10.7)



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