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禁忌




 魔草。

 すべてとは言わないが、ほぼほぼ花や葉、茎、実、根のいずれかが、もしくはすべての部位が原色に白玉模様の植物。自立行動できるものもあり、攻撃してくることもままある。魔草のいずれかの部位に触れた生物をどこかに飛ばしたり、硬化させたり軟化させたりと、何らかの摩訶不思議な作用をもたらす極めて危険な植物として認識されていた。


 人間を大きくしたり小さくしたり、空を飛べたり地中に潜れたり、岩のように硬化したり水のように透過したり、他人に嫌われたり好かれたり。などなど。

 魔草を調合し、およそ非現実的なことを短い時間叶えるのが魔草師の仕事。


 魔草が植生されている場所は指定されて限られており、その場所以外への持ち込みは厳禁。

 魔草植生範囲拡大及び暴走を防ぐ為でもあり、魔草と他の生物の交配を防ぐ為であった。


 が。


 自然が寿命を迎えたのか、それとも生まれ変わろうとしているのか。

 灼ける空、流れる土、混沌と化す海と、近年の自然環境では薬草を育成できない、及び、薬草の効果を発揮できない事象が少なからず生じており、自然が弱体化してきているのではないかと危惧されている中、薬草だけでは薬草の効果を発揮できない、他の種と交配すべきではないかとの意見が少数ながらちらほらと出てきた。


 薬草と魔草の交配を実行すればいい。


 いにしえからの薬草の効能を守る為、薬草の個々の種を守る為に、薬草は薬草のみ交配を許されており、それ以外との交配は禁止されている。交配以外のことで、薬草の育成を可能にし、薬草の効果を発揮できるようにすればよい。との意見により、その意見は棄却された。

 これ以降、その意見を口にすることはまかりならぬと箝口令がしかれた。

 無論、交配を実行することなどもってのほか。

 な、はずだった。






 師匠ししょうの家にて。

 史月しづきと無言でそれぞれ作った白味噌グラタンを交互に食べさせ合っていた浅葱あさぎは、空になった皿を見て、終わったなと思った。

 終わったな、じゃあ次は何をするんだと考えて、史月を見た。

 史月は頭を下げて空になった皿を見ているようだった。

 顔が見えないな。寝ているんじゃないか。微動だにしていないな。空になった皿の底に何か大事なことでも書かれているのか。

 浅葱は史月の皿を見た。白かった。ところどころ、白味噌グラタンがこびりついていた。

 勿体ないと思っているのだろうか。あれをどうにかして食べてやろうと考えているのだろうか。もう、爪でこそぎ取るしかないのではないだろうか。とりあえず自分の皿だけでも洗って、何かデザートになるものでも探すか。

 浅葱は立ち上がって、史月に背を向けて、シンク台に皿と木のスプーンを持って行こうとした時だった。


 声が、聞こえたのだ。

 霧夜きりやの声が、

 浅葱の名を呼ぶ声。

 ここに戻ってこいと、


 浅葱は振り返り、頭を下げたままの史月を一瞥してのち、口の端を僅かに上げては、史月の皿と木のスプーンに手を伸ばし、身体を前に向けて、シンク台に二枚の皿と二本の木のスプーンを置いたのであった。






「あ。やっぱり、食卓に顔を突っ伏して。って。あれ。浅葱は、」


 どこに行った。











(2024.10.12)



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