わか
白味噌グラタンの作り方を教えてくれ。
浅葱にそう乞われた都雅は俺じゃなくて師匠に教えてもらえと言ったのだが、師匠からあんたは浅葱の同率一位の師匠みたいなものだからと教えてやってくれないかと頼まれたので、都雅はわかったと答えては、浅葱に白味噌グラタンの作り方を教えることにした。
妙な気迫を迸らせている浅葱に。
全身から濛々と、轟轟と、吐き出される白い炎が視認できるようだった。
およそ丸一日眠って、だいぶ回復したのかと思ったが、違うのではないだろうか。
疲労度が最高到達点に振り切ったまま、元に戻るに戻れなくなって、変なテンションに苛まれているのではないだろうか。
(史月は史月で怖い顔のままだし。昨日、俺が浅葱にはまだ会えないって伝えた時は、いつものやる気のなさそうな顔だったし態度、だった、よな?)
もしやこれはあれだろうか。
恋人になったばかりあるある。
恋人になって、今までどんな風に接したかわからなくなってしまった結果、変なテンションになったり、怖い顔になったりしているのだろうか。
(はああ。こいつらもそんな情緒不安定になったりするのか)
今までと変わらず無味乾燥にほんのちょっとだけ風味を加えた、ぐらいの変化しかないだろうと予想していたが。
まさか手料理を振る舞い合う関係になるとは。人生とは本当にわからないものである。
(まあ、わからないと言えば)
浅葱に白味噌グラタンの作り方を教える中、ちらちらと、都雅は季梨を盗み見した。
史月に付き合っていたのだろう、常の気楽さを引っ込めて硬質な雰囲気を纏っていた季梨の様子がまた、常とは違う感じになっている、ようなのだ。多分。そうなのではないかなという曖昧な勘である。常の気楽さであるようでいて、そこに少しだけ棘が加わっているような。
(何だ?史月を浅葱にすぐに会わせないで、師匠さんのところで丸一日待ってもらったことに怒ってんのか?季梨。史月を気に入ってるみたいだしな。多分、浅葱のことも。二人を応援してくれてるんだろう。まあ、大体会ったやつは全員気に入っているけどな)
(………う~ん。やっぱり、いつもと違うって、わかっちゃった、かなあ)
ちらりちらちらちらりちら。
テンポよく自分を盗み見している都雅に気付きながらも気づかない振りをして史月と話していた季梨は、どうしたものかなあと、のんびりと、少しだけひりつかせて思った。
(都雅ちゃん。わかりやすいんだもんなあ)
好きな人に、霧夜に会った時は、すんごくご機嫌になっているって。
そして、どうしても、自分は、機嫌がすんごく悪くなるって。
(しょうがないよね。だって、僕は都雅ちゃんが好きなんだし)
(2024.10.9)




