表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
64/88




「ぬし。病などご存じありませんという顔をしているのに、ここに来ると決まって、布団の中で眠っているな。はは。俺を見ると気が抜けるのだな。師匠冥利に尽きるぞ」


 史月しづきと出会い、同居、告白まで淀みなく話し続けていた浅葱あさぎが不意に言葉を途切れさせたかと思えば、不意に立ち上がると、スタスタと居間の中を歩き出して、物置の襖を開けて布団を取り出し、横になったままの霧夜きりやの隣に布団を敷いては、疲れたから休むと言って布団の中に入り込んで目を瞑り、ものの数秒で眠りに就いてしまった。


 霧夜は億劫げに身体を起こすと、胡坐をかいては頬杖をついて、浅葱を見下ろし、人差し指で若草と老草色が交互に配色されて大きく波打つ前髪を大きく左右に分けて、いつもは隠れている両の目を露わにした。

 本人は、人を呪いそうな目つきだとひどく気にして隠しているらしいが。

 確かに、そんな目つきだと言われればそうかもしれないが。


「人間味があると驚いたものだが、まさかまだ薬草以外のことで驚かされるとは。薬草以外に目を向ける暇などないだろうに。俺たちみたいな人種は。ゆえに、ここで一緒に薬草漬けの生活を送ればいいものを」


 薬草以外のことを無駄だと切って捨てたいわけではない。

 ただ、薬草のことだけで、いや、薬草のことだけでも、頭がいくつあっても足りないのだ。

 薬草以外のことで、思考を巡らせる暇があるのならただ、薬草に使いたい。

 それだけの話。

 それだけの人間だったのだ、俺たちは、




(いや、俺は。の間違いか)




「ぬしは俺の頭になるはずだったのになあ」


 一つしかない眼の瞼を半分ほど下ろしては、淡々とそう呟いてのち、ニヤリと笑った。


「だが、まだ、俺の元に足繁く来るくらいだ。まだまだ、どうなるかは、わからんな」


 なあ、浅葱よ。

 大きく左右に分けた若草と老草色が交互に配色されて大きく波打つ前髪を元に戻して、浅葱の目を隠してのち、ごろりと寝転がると、霧夜は目を瞑った。

 くぅくぅくぅくぅ。

 腹の音がなってはいるが、腹が減ったとひどく訴えてはいるが、用意するのが面倒なので、とりあえず眠りに就くことにしたのであった。











(2024.10.6)




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ