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対峙




「さーちゃんの薬草を返して」


 やりたいことをやり終えた雪白は気分がよかったのだろう。

 意気揚々と、ゆったりと歩いていた雪白ゆきしろを、浅葱あさぎの家からそう離れていない、入り組んだ小道で見つけた水美みずみは、彼の前に立ちはだかった。

 とても庭の薬草を全部所持しているようには見えないほど、雪白は手ぶらだったが、何か特別な能力か、もしくは道具を使っているのだろうと、水美は考えて、早く返してと語気を強めて言った。

 雪白は突然険しい顔で迫る水美を前に、腕を組んで、どっしりとした姿勢を崩さず、けれど、語気を和らげて言った。


「水美。さーちゃんがどこの誰かは知らないが、俺は悪の薬草師からしか薬草は奪わん。ゆえに、返すことはない。奪った薬草は今後の為にも、調査してのち、処分する」

「さーちゃんは。あなたがついさっき奪った薬草を育てていた薬草師は、悪なんかじゃない。あなたが勝手に色眼鏡を使って見ているだけ。そりゃあ、さーちゃんはしっちゃかめっちゃか、薬草に手を加えているけど。違法な薬品を使っちゃったりしてるけど。でも。だからこそ。こんなに入り組んだ小道の先の、誰も訪れないようなところで、薬草を育ててるんだもの。さーちゃんはちゃんと考えているわ。人間に害を及ぼさないようにって。自然に害を及ぼさないようにって。ちゃんと考えている。知らないと対処できない。だから、しっちゃかめっちゃか手を加えて知ろうとしている。非難されるやり方かもしれなくっても。あたしは。さーちゃんがそこら辺の悪党薬草師とか究植師とかとは、全然違うって知ってる。あなたが憎み恨む薬草師じゃない。返して」

「水美」


 雪白は凛々しい眉毛を八の字に下げて、水美を見た。

 痛々しいとか、可哀そうだとか、同情心をたっぷりと含ませて。


「貴様が浅葱に騙されているのは、よくわかった。貴様が集める水のように、貴様は澄んだ心を持っているがゆえに、容易く悪に染まってしまったのだろう。大丈夫だ。俺がすぐに澄んだ心を取り戻させてやるから安心しろ」


 全くの見当違いの発言に、水美は嫌悪感で身震いがしてしまった。


「話がここまで通じ合えないやつって居るのね。知ってたけど。とうの昔に知ってたけど。はあ。悪化してるわ」


 水美は携帯している透明な水色の瓶を両の手に持つと、一切合切の感情を消した表情を雪白に向けた。


「力づくで返してもらうわ」

「力づくで取り戻したところで、育てる薬草師はもう居ないぞ」

「ふふ。あたしを攪乱させようとしてる?」

「そんな小細工をするものか。事実を告げているだけだ。水美」

「………」


(そう。確かに。雪白はこんな嘘はつかない。だったら。本当。さーちゃんに何か。今から戻る?いえ。雪白は今、あたしに集中している。あたしを逃しはしない。だったら)


「さっさと気絶してもらうわ。雪白」

「俺が貴様に澄んだ心を取り戻してやる。水美」












(2024.10.1)




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