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ぶれりぶれぶれ




 信じられないばっかり言ってられないわ。

 まだ言い足りないんだからねと言い捨て置いて、雪白ゆきしろから浅葱あさぎの薬草を奪還すべく駆け走り出した水美みずみの後を追おうとした史月しづきを、浅葱は名を呼ぶことで停止させた。


「結界縄を出現させ過ぎたんだろう。身体が左右に揺れ動いているのは、自覚あるのか?」


 結界縄は引き千切られたのだろう。

 浅葱は庭のあちこちに散らばっている結界縄から視線を固定させた。

 ぶれりぶれぶれ。

 前後左右に大きく揺れ動いている史月へと。


「いえ。元々、足元がふらついていたので自覚はそんなにないのですが。そんなに大きく左右に揺れ動いていますか?」

「ああ。もう休んでいろ。さっきも言ったが。すまなかったな。迷惑をかけた」

「君が謝罪する必要は皆無です。謝罪なら僕だけがすべきだ。仕事を全うできなかった」

「確かに、結界縄による薬草の守護してもらうとの契約は交わした。結界が解かれて薬草が盗まれた場合は、結界師であるおまえの責を問わないとも、契約を交わした。結界で守られていない薬草に至っては、何の契約も交わしていない。よって。今回のことでおまえが謝罪する必要は皆無だ」

「………そうですね。僕はただ、勝手に君の薬草を守ろうとして、無理をして、挙句、全部根こそぎ奪われて、こうして君に要らぬ労力を使わせている。だからこそ。謝罪した。謝罪したかった。けれど、僕の謝罪を受け入れるかどうかは、君の自由だ。僕は君に僕の謝罪を受け入れてほしいと、押しつけようとした」

「………史月」


 浅葱は僅かに首を傾けて目をやわく瞑ってのち、まっすぐに戻して目を開くと、おまえは疲れていると断言した。


「慣れないことをして疲れたと言っていたくせに、おまえ。結局、自分の部屋で休まずに下りてきただろ。疲れているところに、結界縄を何度も作って、さらに疲弊した。もう立っているのも限界だろう。疲れているから、細かいことまで気になって、つらつら話し続けて、俺をひどく気にかけているんだ。休め」

「………それは、雇用主としての命令ですか?それとも、恋人としてのお願いですか?」

「口調まで変わった上に、面倒くさくなったなあ。両方だ。両方」

「両方、ですか。そうですか。それなら。休まないといけませんね」

「そうだ。休め。ほら。連れて行ってやるから、乗れ」

「僕なんかが君の背中に乗ったら、君は押し潰されてしまいますよ。自分で歩くので、大丈夫です」

「そうか。なら気を付けて行けよ。俺は新しい薬草を調達しなければならないから少しの間、家を空ける。水美と季梨にも言っておいてくれ」

「………そこは無理をするなと言って僕を強引に背中に負ぶさるところではないのですか?」

「………本当に面倒くさくなったな」

「っふ。もう、交際破断ですか?」

「破断はしない。尋ねる。自分で行くか。俺が連れて行くか。選べ」

「………………………お願いします」

「そんなに悩むことか?まったく」












(2024.9.30)




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