ぎゅうぎゅう
「本当にあいつは声が大きいわね~」
家の中まで外に居る解界師の声が大きく鳴り響く中、水美はその声の主が誰なのかを浅葱に教えた。
解界師、雪白。
色々な手を加えて薬草を育てる薬草師、究植師を憎み恨んで、薬草を根こそぎ奪い取る、だけではなく、時には、薬草師、究植師から薬草と育成という概念を根こそぎ奪い取る。
「色々な手を加えられた薬草は大土を、大気を、大水を穢すって、死なせるって。あいつは怒ってたわ。詳しいことは聞いてないけど。公害を引き起こしたって言ってた。薬草師が。いえ。一人の薬草師ができるわけないわよね。薬草師、究植師の集団が違法栽培をした結果、公害を引き起こして、多分、あいつの、雪白の大切な場所が、大切な人が、大切な存在が犠牲になったのかも。あたしの想像なんだけど」
「………そうか」
「もしかしたら、んーちゃんなら、もっと詳しく知ってるかもだけど。何が気に入ったのか知らないけど、あたしも、んーちゃんも、仲間認定されていて。まったくもう。一緒に、悪の薬草師と究植師を一緒に懲らしめようって、煩いったらないんだから」
「おまえも忍灯も、俺みたいに、岩と水に手を加えることはないからな。自然を大切にしている。忍灯は手を加えるとしても、削ったり、掘ったり、割ったり、形を変えるだけだ。おまえに至っては、まったく手を加えないだろ」
「まあ。そうね。色々な土地の、色々な深さの水を、品質を落とすことなく保管して、どのこにどの水が合うのかをじっくり観察して考えて、水に浸してあげるのがあたしのやり方だけど」
「俺は色々手を加えているからな。それこそ。違法な薬品も使っているしな」
「止めてって言ったのに」
「無理だ。多種多様なものを使いたい。使って、薬草を知りたい」
「知ってる。けど。あたし。怖いわ。さーちゃん。いつか、捕まっちゃいそうで」
「公害を引き起こしてか?」
「さーちゃんが公害を引き起こすなんて。一度も考えたことなんてない」
水美の険しい顔を間近に受けて、浅葱はすまなかったと謝罪した。
「さーちゃんが。人を守る薬草を育てているさーちゃんが。人を傷つける薬草の育て方をしたって、すぐに人を守る薬草の育て方を見つけて、人を傷つけないようにするんだもの。絶対。さーちゃんが。公害を引き起こすなんて、過去も今も未来も。ないんだから」
「………水美。痛いんだが」
「ちょっとの間だけ、我慢してよ。もう。あたしだって、我慢してるんだから」
ぎゅうぎゅうぎゅうぎゅう。
浅葱の腕に腕を絡めていた水美は頬を少し膨らませながら、より一層浅葱に身体を密着させて、絡める腕の力を強くさせた。
「今すぐ飛んで行って、雪白を追い払うのを我慢してるんだから。づーちゃんにその役目を譲ってあげてるんだから。さーちゃんも我慢して」
「雪白のことを、きーちゃんて呼ばないのか?」
「呼ばない」
「怒るな。水美。ほら。薬草の話の続きをしよう。おまえにおまえが携帯している水の話を聞いて、あの薬草なら合うんじゃないかって想像できたから、庭に見に行くぞ。おまえの意見を聞かせてくれ」
「もう、薬草バカ。今はまだ外に行っちゃだめでしょもう!」
動き出そうとする浅葱を、足を踏ん張らせて止める水美であった。
(雪白にさーちゃんから薬草を奪われちゃったらどうするのよもう!)
そんなことありえないけど、念の為!
少しだけでも危険から遠ざけたいっていう健気な心をわかってよねもう!
(2024.9.30)




