世話焼きさん
「浅葱ちゃんって。究植師になろうとは思わなかったの?」
「ああ。師匠にも俺が究植師になると思っていたと言われたが、俺は薬草師になりたかった。育てる中で過度に手を加えたらどうなるか、適当に手を加えたらどうなるか、全く手を加えなかったらどうなるか。薬草を知りたかった。色々試して薬草の効果を知りたかった。色々な薬草の行く末を知りたかった」
「へえ」
季梨にどの薬草に結界を張ってもらおうかと思案する浅葱を見ながら、季梨は尋ねたのである。
究植師。あらゆることを試し、あらゆるものを使用して、無事に育て上げた薬草を必要とする者に提供する仕事。
添木師。植物の力を借りて植物を育てる仕事。浅葱の師匠である師匠がこの仕事に就いている。
薬草師。人間の不調に合わせて薬草を調合して提供する仕事。浅葱のように薬草を育てる者も居れば、究植師や添木師から買って調合する者も居る。
「何だか、とっても忙しそうだけど、よく史月ちゃんと付き合おうって決められたね?」
「ああ。本当にな。長い寿命があっても、足りないって嘆きたくなる時もあるのにな。だから、史月にはすぐに振られるだろうよ」
「そうなって惜しくないの?浅葱ちゃんも付き合う意思があるから、了承したんでしょ」
「ああ。だが。薬草ほど史月に時間を割けない俺が悪いからな」
「断言かあ。もしかして。五年間一緒に暮らしていく中で、史月ちゃんだったら、薬草莫迦な浅葱ちゃんを受け入れてくれるかもって思ったから、付き合おうって決めたの?」
「………いや。多分、そこまでは、考えていない。と、思う。季梨も言ったように、史月の告白が俺の琴線に触れて、受け入れた。応えたいと思った」
「そっか」
「どんな交際をしていくのか。史月と話していこうと思う」
「浅葱ちゃん。身体、壊さないようにね。何だか、浅葱ちゃん。薬草以外は手を抜いていそうだけど、一度受け入れたものは、薬草に対するみたいに手を抜かず全速力で挑みそう。僕、心配だなあ」
ぱちりぱちり。
浅葱はゆっくりと瞬きながら、薬草畑に向けていた身体を動かして、季梨を見た。
「季梨。おまえ、友人に似てるな。世話焼きなところが。あいつは太陽みたいに暑苦しいが。おまえは、静かな涼風だな」
「へえ。僕の友達にも暑苦しいお節介焼きが居るよ。しかもあちこち走り回って、忙しないのなんのって。もしかして、同じ人間だったりして?」
「かもな。名前を一緒に言うか?」
「うん。じゃあ。せーの」
「「都雅」」
浅葱と季梨はやおら目を細めて、笑い合ったのであった。
(2024.9.21)




