ウインク
淡い水色の長髪がいつもまばゆく、やわく揺れ動いていた。
日光で照り輝く静かな水面のように。
「別の人間って、もしかして水美か?」
「ああ」
「あ~」
都雅は凝りを解すように天高く仰ぎ見ては深く息を吸い、目線を下ろして浅葱を見た。
「あ~。なるほどって言うと思ったか?」
怒っているわけではないがどこか硬い態度の都雅を前にした浅葱は一度目を伏せて、再度都雅を見上げた。
「………別に。あいつの件だけで承諾したわけじゃない」
「ほう」
「そーゆー気分になったんだ」
「ほう」
「なんだよ?」
「おまえ自身も史月も蔑ろにしてないって断言できるか?」
「言えるな」
「向き合うって断言できるか?」
「………言える」
「………そうか」
浅葱も言ったように、水美の件だけが要因ではないのだ。
交わす言葉こそ少なくとも一緒に暮らしている、暮らし続けている史月の告白を受けて、きっと交際したいと思わせる感情が生まれたのだろう。
(いやうん。そうであってくれっていう希望的観測だけどな。浅葱自身もなんかどーして了承したのかわかってないみたいだけど。うん。まあ、友人としては喜ぶべきだよな。めちゃくちゃ不安だけど。いや)
心配だ。
浅葱より史月が。
(もし、史月が水美みたいに浅葱をほしがったら)
『ねえ、がーちゃん。あたし。浅葱と一緒に生きたいだけなのに。なんでこんなにも難しいんだろう』
苦笑いを零した水美の顔は今でも覚えている。
ほしがって。
自分を殺して望まないことをし続けて。
浅葱から苦情を受けた両親が強引に引き離して。
音沙汰なしの状態が続いている。
気になって両親に様子を聞いたところ、元気にやってはいるらしいが本当かどうか。
(水美は振り向いてほしかっただけなんだろうけどなあ。やっぱり、うーん。あれはなあ)
「あら。お悩みごとがあるの?がーちゃん。腕を組んだりして」
「いやちょっと………って。水美!?」
噂をすれば。だろうか。
淡い水色の長髪の表面であわい光を泳がせる、背丈手足共に細く長い男性であり、薬水師である水美は、お久しぶりとウインクをした。
(2022.1.31)




