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巧く




 都雅君の料理が食べたい。

 と言ってしまったからだろうか。

 いや、きっとそうに違いないのだが。




「いやー。びっくりしたぜ。空から降ってくんだもんな」



 窓の外は一面雪景色。

 などと可愛いらしい表現ができればよかったのだが、実際は雄叫びさえ上げている吹雪。

 厚く頑丈な硝子のおかげだろう。

 大破してもおかしくないにもかかわらず、窓には一か所とてひび割れがなく、雪塊やら氷柱やら木の棒やら小石やらの突撃音だけが鼓膜を震わせていた。



 逞しくもこの途轍もなく厳しい天候の中をものともせず配達をしていた都雅の前に飛んできた史月は、即刻彼に保護されて今、あちらこちらに点在している配達師専用の小屋へ連れ込まれて暖を取っている最中であった。



「驚かせてすまない。僕は今、魔草師のところに行って仕事をしているんだが、魔草のせいであちらこちらと飛ばされてしまっているんだ」

「そうなのか。大変だな。けど、飛んだ先が俺の真ん前でよかった。もし誰も居ないこの吹雪の中に飛ばされでもしたら、そんな装備もなしじゃあ、五分も持たなかったと思うぞ」

「その意見には強く同意する。君が居てくれて助かったよ。ありがとう」

「どういたしまして。腹減っただろ。ここ、色々揃っているからな。保存食と調味料ばっかだけど、最近のは結構美味くてさ。そのまんまでも十分なんだけどよ。ちょちょいと手を加えると、さらに美味しくなるからな。待ってろよ」

「ああ。ありがとう」

「おう」



 太陽のような明るい笑顔を向けては、都雅はくるりと背を向けて台所の棚を開けて物色していた。

 ほっと安堵の溜息を出した史月は、今座っている頑丈で滑らかな椅子の土台の側面をなぞっては、考えてしまった。



 もしもここに浅葱が居ても安堵していただろうか。と。



(ああ、きっと)



 自問自答する。


 浅葱は都雅のようにはこの状況に巧く対応できないだろうけれど。

 浅葱と二人ならばこの状況に巧く対応できるなんて、一切思わないけれど。



(僕は、安堵する)











(2021.12.7)




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