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気がつけば
避けよう、避けなければと、意識しすぎたのがいけなかったのか。
泡が一気に放出されたかと思えば、今迄ののんびりとした浮遊感はどこへやら、迅速にかつ一直線に史月めがけて飛び込んで来た。
不思議だった。
と、のちに史月が幾度も幾度も首をひねることになる行動。
常に持参している手ずから編み込んだ縄で泡を相殺しようと思えばできるはずだった。
熱に反応する泡なのだ。
縄であれば摩訶不思議現象は引き起こさないだろう。
泡の奇襲に、けれど瞬時に解決法を導き出した、はずだったのだが。
「史月ちゃん!」
気がつけば、梨希の呼ぶ声が遥か下から聞こえてきて。
気がつけば、早く戻って来ておくれよと、怒るどころかのんびり手を振って見送る桜桃の小さな姿が視界の端に映り込んで。
気がつけば。
「結界師は飛翔もできるのか」
気がつけば。
浅葱が手の触れられる距離に居て。
史月は呟いたのだ。
(2021.11.10)




