つり
ぽよんぽよんと。少し動くだけで心地よく微細に波打つ寝台の上に、史月はぐったりと横たえながら、先程の醜態を思い返していた。
元々結界縄は丸ごと交換するつもりではいたが、傷んでいる場所は途切れ途切れ、数か所あるかないか程度だとの憶測は外れ、結界縄全箇所が交換対象になっていたのだ。
結界師として、可もなく不可もなく。
否。まあ、平均よりは上の実力を持っていると思っていただけに、初めての全傷結果に少なからず衝撃が走って。
新たな結界縄を生成する際に、範囲の広さも相まって常より力を込めてしまい。
(このざまだ)
渋面顔になった史月。
生成し終えて崩れ落ちるように地面に膝をつけるより早く、希梨にあれよあれよという間に背負われて、桜桃の家に運ばれてきて、果ては慈愛の瞳を向けられながら、ゆっくり休んでと労われる始末。
渋みも増すというものだ。
(体力が戻り次第、出来具合を見に行かないとな)
ぽよんぽよん。
思い切り飛び乗ったら天空まで跳ね上がるのではないかと思いつつ、宥められているような微細な波うちに誘われるまま、意識を沈ませていく中で、もにゃりと口を波立たせていた。
口から出るのは、意味のない文字の羅列。
だったはずなのだが。
ああ、会いたいな。
と。呟いた途端。
勢いよく釣り上げられた魚のように、瞼が限界まで上がった史月。
眠気もどこへやら。
どこぞの誰かの言葉だ自分ではないと必死に否定していたが、寝台の波うちによって徐々に瞼は落ちていき、そう時間を経たずして、今度こそ意識を沈ませたのであった。
(2021.11.4)




