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狐の嫁入り




 妖しい雲に呼び寄せられたのか。それとも、妖しい雲は恐れおののき逃げ出したのか。

 雲が遠ざかり、日が照ってきたかと思えば、そのまま降り出した狐の嫁入りから間一髪逃れた忍灯は十枚の板岩を持って二階に上がり、椅子に背もたれたまま外を眺める浅葱にただいまと言っては、板岩を机の上にひとまず置き、寝台の布団を畳んで二段の物置場の上段に入れて、寝台に直接板岩を敷き始めた。

 まずは五枚、そして五枚その上に重ねる。

 下の五枚の板岩は熱を帯びていて、上の五枚の板岩は浅葱の今の身体の調子に合わせて凹凸があるものだ。



 忍灯は基本的に手を加えない自然の岩を依頼人の体調に合わせて選び使用する。

 手を加えるとしたら、その岩の特性を生かせるように板状や棒状、縮小などの加工をする時か、緊急時のみであった。




「まあ、本当は加工なんてしないで自然のままで整えてあげたいんですけどね」

「半分は、だろ」


 十枚の板岩を敷き終わって、浅葱に寝るように促した忍灯。横になった浅葱の代わりに椅子に座って窓を眺めた。



 日差しの中で、きらきらと光を受け止め、放ちながら楽しげに踊り続ける雨粒。

 天からの優しくも静かで美しい祝福。



「そうですね。半分。もう半分は加工したくって仕方ありませんね」

「俺もおまえもそーゆー人種ってことだ」

「そーゆー?」

「難儀な?」

「難儀じゃない生き物なんて居ないでしょう」

「まあ。そうだな」

「どうですか?」

「ああ。整う」

「偶には依頼してくださいよ。いっつも俺っちからじゃないですか」

「おまえが持ってくる時がちょうど必要としている時だからいい」

「あんたと結婚する人は楽と考えるのか、難と考えるのか。どっちなんでしょうね」

「俺と結婚したいやつなんて居ないだろう」

「あんたみたいな人が居るんですから、あんたと結婚したい人も絶対居ますよ」

「ふ~ん」

「ぜんぜん興味ありませんね」

「まあな」


 やれやれ。

 忍灯は降り続ける小雨から浅葱へと視線を向けて、史月は元気にやっていますかねと尋ねた。

 浅葱は元気にやっていると返して眠りに就いたのであった。











(2021.10.29)



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