魔草師
彩ふくよかな、もとい、目にはあまり優しくない彩森を前にして、やはり来なければよかったと思う史月の腕を、逃がすまいとがっちし掴んでいるのはお得意さんであった。
名を桜桃と言い、勝気な眉毛目元口元、左右の耳の近くで紫の扇の髪型にして、原色の布地に白玉模様のワンピースを常に身に着ける、見た目は幼女だが実際はかなり年を経ている女性であり、魔草師でもあった。
「こらこら。史月。久方ぶりの再会なんだ。感激のハグをしていいんだよ」
こらこらと鈴の音のような桜桃の笑い声を聞きながら、結構です早く行きましょうかと史月が告げると、桜桃はグッと史月の腕を引き下ろして目線を自身と同じ高さに合わせては、史月の瞳を注視した。
「痛いんですが」
「こらこらこらこらこら。ふ~ん。なるほどなるほど」
「何ですか?」
ニマニマニマニマ。
嫌な笑いを目元口元に湛える桜桃に嫌な予感しかしない史月。
桜桃はいや何もないと言っては史月の腕から手を離し、隣に居た季梨に視線を移して行くかと言った。はいと返事をした季梨は念の為と、立ち上がった史月の裾を掴んで行きますよと言った。史月は離せと言いたかったが、少し、ほんの少しだけ、不安を抱いていたので、何も言わずに桜桃の後を追った。
仕事を果たせていないが、すごく浅葱の家に帰りたくなった史月であった。
(2021.10.19)




