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ただ




「史月ちゃん」

「何だ?」

「そっちじゃなくてこっち」


 浅葱の家から出発して、五時間後。

 二叉の道の細い方へ進もうとしている史月を呼び止めた季梨はケラケラと笑った。


「相変わらず方向音痴だねえ」

「少し間違えるだけだ」

「まあ、お得意さんの家に続く道ってあっちっぽいもんねえ」


 鬱蒼とした木々に囲まれていた細道を一瞥してから、季梨は並んで歩く史月を見た。

 ああと返した史月は、この後辿る道なりを頭に浮かべてげんなりした。



 史月たちが今進んでいる広い道は、両端に可愛らしい虹色の花が咲いているのだが、馬や牛などの体重の重い動物などの強い振動に弱く、人や体重の軽い動物の徒歩でのみ通行が許されており、この先に大きな荷物を運ぶ時は迂回して運ばなければならない配達師には厄介な道ではあったが、この花を目的に歩いている観光客にとってはゆっくり堪能できる安心安全の道でもあった。



 五十分ほど歩いて虹色の花が途切れたところで、道が三叉になっていた。

 左が観光地、右が住宅地、中央が人が滅多に訪れない森へと続く道であり、史月と季梨は中央へと歩を進めたのであった。



「そう言えば史月ちゃん。いつもより目から光が消えているけど。よっぽどお得意さんに会いたくなかったんだね。お得意さんって言うか、森に行きたくなかった?」

「あれこれ手伝わされるし、あの森は目が疲れるからな。できることなら行きたくないが、仕事だ。仕方ない」

「ふ~ん」

「歩き続けているんだ。余計な話をして体力を消耗させないでくれないか?」

「ごめんごめん。もう黙るから機嫌を悪くしないで」

「ならいい」


 両手を合わせて頭を何度も下げる季梨から視線を外して、史月は前を向いたのであった。


(そうだ。疲れる仕事だから、いつもよりも気分が優れないだけだ。それだけだ)












(2021.10.18)



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