ざつ
師匠が見守っている植物の雑生場所へは、村里から三十分ほど歩けば辿り着いた。
小さい頃から変わらず、元気溌剌の植物たちに浅葱の口元が緩んだ。
見慣れた植物もあれば、そうでない植物もあり、薬草になる植物もあれば、薬草にならない植物もある雑多な世界。
ここから薬草になる植物を探すのが何よりの楽しみだったんだよな。
ここに足を踏み入れれば、いつだって幼い頃を思い出す。
添木師になったら師匠嬉しいなー。いやいやいや。強制はしないがな。あんた植物好きだもんな。病気になっていたら悲しいだろう。え。病気になったらなったでその後どう変化、もしくは変化しないのか観察したいから嫌だって。はあ、まあ。うん。寿命も関係しているんだろうけど。気の長い考えだ。しょうがない。だが師匠呼びは諦めないからね。ってことで私は師匠に改名するから。
『ああ、やはり添木師に向いていると思うよ。だってあんた。元気な植物を見ている時の顔と言ったら』
『うん。俺は決めた』
『添木師になるのかい?』
『ううん。どっちも見届けたいから、俺は薬草師になる』
『薬草師。究植師じゃないのかい?』
『うん』
『あんた。人間に興味があったのかい?』
『何だよ。俺だって。皆には元気でいてほしいと思っているよ』
『あ、あんた。私の愛情の賜物だね』
『そーですねー』
『よし。今日はお祝いだ。私の秘蔵っ子の果物を食べることを許可するよ』
『やった』
いつだって師匠の顔が思い浮かぶ。
「本当に呪いがかけられているな」
少しだけ長い溜息を吐いてから、大きく背伸びをして、まずは薬草探しから開始した。
(2021.10.11)




