第九話 二人の作戦が交わるとき 4
今までこの作品を書いて来て一番筆が進まなかったお話です。
プロットの時点で約五時間、下書きで約二時間、執筆で約三時間かかりました。肩がすごく痛かったというのもあるかもしれませんが。
…まだ若いと思っていましたけど、そうでもないですようね。
その上、多分完成度は高くありません。
心理描写多めになってるし…。烱至の口調とか難しすぎるし…。
「ははは。よかったよかった。ようやく肩の荷が下りたよ。まさか一日で解決しちゃうとはな~。完全に予想外だわ。…まだ少しぎこちない感じはあるけどな」
女性相手にまともに話せるようになった悠希とそれに合わせるリアを烱至は笑いながら見守ります。
「たしかに。悠希君、リアちゃんと打ち解けられてよかったですね」
雪姫は少し前までは男性のいるところではありえなかった微笑みを添えて烱至に言葉を返します。
「ま、完全じゃないけどね。あ、笑顔も可愛いじゃん。いつも可愛いけど」
それに烱至は補足説明をして、付け足しのようにナチュラル褒めをします。
「だから!何を言ってるんですか!そういうのは、本当に好きな人に言ってあげてください!」
男性からのナチュラルな褒め殺しに慣れていない雪姫は顔を赤くして明後日の方を見て烱至から目を逸らします。
「俺、雪姫ちゃんの事好きだけど?」
「……」
何かを理解したのか雪姫は冷めた顔を烱至に向けます。
「あーはいはい。そうですか。ありがとうございます」
「何か急に反応雑じゃない!?」
「そうですか?それにしても、リアちゃんも肩の荷が下りたとか思ってるんですかね?烱至さんと同じように…」
淋しさを含んだ笑みを浮かべて質問とも独り言ともとれる発言をしました。
その発言を烱至は疑問として受け取ったようでした。
「まだまだだと思うよ。だってほら、リアちゃん、悠希と話しながらでもこっちの表情を不自然じゃない程度に観察してるし」
烱至はリアの方を指さしながら雪姫に伝えました。
「…烱至さんって、人の事良く見てますよね」
「ま、昔から人の顔色伺いながら生活してきたからね」
「そうですか…」
察しの良い雪姫はその一言である程度、昔何があったのか理解してしまい不自然に会話に間が開いてしまいます。
「リアちゃん、ありがとう。おかげで少しは慣れたよ」
無言と言うのはそこまで仲のいい人との会話の中では地獄以外の何物でもないので、雪姫は一言烱至の方でもリアの方でもないところを向いて小声でお礼をします。
その瞬間、リアは悠希との会話を中断します。
「悠希さん、少しだけ待って。雪姫お姉さん、何か言いましたか?」
「嘘!?この距離と大きさと角度でわかったの!?地獄耳過ぎでしょ!」
リアに聞こえないように小声で言ったにもかかわらず、聞こえていたことで無意識に1/4ほどキャラ崩壊を起こすほど焦っています。
最終的には顔を赤らめて恥ずかしそうに先ほど言っていたことをわかりやすいようにリアに半ば自棄になって言います。
「…人見知りの改善を手伝ってくれてありがとう。って言ったの」
「(やった!雪姫お姉さんに感謝された!ていうか、一日の間に顔何回赤くしなきゃいけないんだろう?そんなところ含めてすっごく可愛い!)………いえいえ。感謝されるようなことじゃないですよ」
表面上は冷静に対応しますが、外見もとてつもなく小さくガッツポーズをしていました。
「これはなかなか、踏み込めないかもな」
烱至はリアの微々たる感情の変化を認識し、小さな声で不満を垂らします。
「リアちゃん、ありがとね。おかげで雪姫ちゃんと仲良くなれたよ」
烱至は少し機嫌を損ねたようにリアに対して喧嘩腰に感謝を述べます。
「……はい。あ、でも握手ってできますか?」
烱至に対する反抗の気持ちと雪姫に対するスパルタ教育の面で少しS気味な笑顔を浮かべて握手を強要します。
「できるよね?」
烱至はあくまで雪姫の感情に任せるとでもいうように右手を差し出します。
「…握手ならなんとか…」
雪姫はおずおずと手を出して烱至の手に触れますが、すぐに引っ込めてしまいます。
「それを握手と言うのかは議論の余地が存在しますね」
リアは全く笑顔を崩していません。
「でも、だいぶ良くなったじゃん」
烱至は雪姫の頭を撫でます。
その行為に雪姫は前のように気絶はしません。
…倒れそうですが。
「っ!烱至さん!雪姫お姉さんの頭撫でてはいけないって言ったじゃないですか!」
リアは烱至の分からず屋っぷりに余裕の笑顔を崩してしまいます。
「おっと…。これはそうそう手を出せないな」
先ほど小声で譜面を垂らした時とは違い、手を引いて笑いながら茶化します。
「ふふん。私は雪姫お姉さんを変な男から守るのが役目ですから!」
ない胸を、ない胸を張りながら高々と宣言します。
「そうか、なら安心だな。そういや、悠希の方はどうなんだ?」
「リアとなら、一応話せるようになりましたよ」
「そうか。じゃあ、握手できるか?」
烱至はリアの考えを拝借して悠希に握手を強要します。
「あ、あくしゅ。ですか…」
「おう。ハグした仲なんだから簡単だろ?」
悠希は烱至にそう指摘されてリアとのハグを思い出します。
「(そういや、パターン的に『胸!胸、当たってる!』って言う風に焦るはずなのに全くなかったなリア。でも、女の子っぽい柔らかさや温かさもあったんだよなぁ)」
先ほどは突然の事で恐怖が先行しましたが、冷静になった今では素直にハグが嬉しいと思えます。
「私はいつでも大丈夫だよ」
リアはそう言って手を悠希の方に出します。
「じゃ、じゃあ…」
悠希は雪姫の二の舞のようにゆっくりと手を出します。
リアはそのまま悠希の手を取り、引き寄せて抱きしめます。
「はぁ~。悠希さんのこと、このままお持ち帰りしたいです~」
「!?」
悠希は驚愕で固まってしまっています。
不意打ちハグは女性に免疫のない者は喜べません。
ハグは冷静な時こそです。
「…はは。リアちゃんってやっぱり積極的だな~(それは流石に荒治療すぎないか!?)」
この大胆な行動にはさすがの烱至でも乾いた笑いを漏らしてしまします。
「リアちゃんって姿と口調からは想像できない言動をちょくちょくするんですよね」
今日一日一緒に居て分かったことを一日の密度が高いからか以前から知っていたことのように話します。
「ちょ!烱至さん、見てるぐらいならやめさせてくださいよ!」
悠希は硬直から解かれて早々烱至に必死に懇願します。
ですが、烱至からは見放されます。
「はは。いいじゃん。お前の力なら、それくらい引きはがせるだろ?」
「それが出来ないから困ってるんです!力はそこまで強くないんですけど、ツボとかを的確に抑えられていて…」
「悠希さん、嫌なの?」
リアはその会話を聞いて涙目になりながら悠希の事を上目遣いで悠希を見つめます。
「(流石、あざとい。でも、それが可愛らしいで完結するから嫌いになれないんだよなぁ)」
「くっ。だからそれはずるいっての。タメ口になって破壊力増したし…。あーもう!好きにしろ!」
天井の方を見つめてリアへの不満を垂らした後、リアの目を見て許可を出します。
「やった~!」
悠希の胸の中で無邪気に喜びます。
「いいな~。私もリアちゃんに抱きつかれたい…」
雪姫は一連の状況を見て小声でリアに触発させたようなことを言います。
このように彼女たちの日常は過ぎていきます。
最終話のような終わり方になってますが、まだまだ続きます。
一章終了と言うわけでもなく。
あ。あと、今回、絶対に誤字脱字はありません!
…荒治療は少し不安ですが。