第八話 二人の作戦が交わるとき 3
前の話は少し短めだったので、まさかの不意打ち連続投稿です。
本日二度目の投稿なので、まだの人は前の話からどうぞ。
「あの…」
まだ少し怖いのか、雪姫は小さめの声で悠希に話しかけます。
烱至はそれを見て悪役のような笑顔を浮かべます。
「は、はい!」
楽しそうな雑談をしている雪姫たちを見てリアは心の声を漏らしました。
「雪姫お姉さんが、話せていいはずなのに…。なんか…モヤモヤする…」
リアはその言葉を漏らしたことにより、今まで半分ほど目を逸らしていた自分の気持ちに気付き、三人のもとに近付きます。
「悠希さん!」
リアは悠希の名前を呼びながらバックハグをします。
「…!?」
悠希の頭は現状を理解できていませんが、青ざめます。
「あっ…。ついにリアちゃんで青ざめちゃってる…」
「雪姫お姉さんは控えめすぎるんですよ!こういうのは勢いが大切なんですよ?」
リアはバックハグを続行しながら器用に雪姫の方を向いてアドバイスをします。
「い、いや、リアちゃんが積極的なだけだと思うけど…」
この二人の会話の中、驚きによるフリーズから戻ってきた烱至は冷静に現状を分析します。
「(リアちゃんもまだ子供ってことかな?こっちの策を無自覚で潰したし…。まぁ、まだ大丈夫。修正可能な域)リアちゃんって意外と積極的なんだね~」
烱至は場を繋ぐために心の底から思ったことを言います。嘘やその場の方便のようなものはリアにはばれてしまうからです。そうなればリアからの印象はさらに悪化するでしょう。
状況を理解した悠希は逃れるように声を発します。
「い、いや…です。はなして、ください…」
「離しませんよ。それでももし離してほしいと言うのであれば、今日だけでも一緒に寝てください」
リアは先ほどよりも強く悠希の事を抱きしめます。
「ついに言っちゃった…」
雪姫はもう手遅れだとでも言うように顔を背けます。
ですが、二人を最後にもう一度だけ見てから一言発します。
「でもちょっと羨ましいかも」
「なに?雪姫ちゃんもあれ、やってほしい?」
その反応を見た烱至はからかうように雪姫に問いかけます。
「何言ってるんですか!」
「いや~。今の反応から、雪姫ちゃんもバックハグしてほしいのかと思ってさ。…違った?」
「冗談はやめてください!そんなわけないでしょう」
「冗談じゃないけどね」
この二人の会話の中で悠希は言葉の意味を理解しようと試みており、止まっていました。
しかし、理解してしまうと急に逃げ出そうとします。
ですが、ツボと関節を的確に抑えられていて失敗しました。
逃げ切ることが出来ないと判断した悠希は死んだ目で言います。
「じゃあ、一緒に寝ますか?」
「!?そんなに、嫌だったんですね。私は、悠希さんと仲良く、なりたかっただけだったのに…。すいません。空回り、してしまいましたね」
リアは泣きながら悠希から離れていきます。
悠希は安堵の表情を浮かべましたが、泣かしてしまったのに引け目を感じたのか声をかけます。
「あの、音海さん…」
「!(あの悠希が女の子を泣かしたとはいえ、声をかけるとは…)」
烱至は悠希が声をかけたことに注目し、密かに驚いていました。
「(リアちゃんは、私と違ってこんなことじゃ、泣かない。泣いてるのは演技かな。…本物かもしれないけど。言ってることは本音だろうし。…策士だね)」
雪姫はリアが泣き出したことに注目しています。
「(親父の教え【女の子は絶対に泣かしちゃいけない】破っちまったよ。だから、【泣かしたらどんな手を使ってでも泣き止ませろ】だったよな)」
悠希は話しかけたことを少し後悔しながら親の教えを頭の中で流します。
「ったく。最初から、こうしときゃ、よかったのかよ(あー!もう!こうなったら徹底的にやってやる!)」
悠希は髪を掻き毟りながら言葉を紡ぎます。
「ん?何ですか?」
リアはその言葉遣いに驚き、悠希の方を振り返ります。
「同じ歳だし、仲良くしてやる。…だから、泣くのやめろ。こっちが居心地悪い(同年代と『仲良くする』ならタメ口が鉄則)」
悠希は少し無理をしながら口調を崩します。
「ほんとですか?」
リアは少し喰い気味に上目遣いで悠希の事を見つめます。
「あ、ああ。本当だ。だけどな、その代りにタメにしな。気持ち悪い(また、相手にもタメ口を要求する)」
悠希は今まで親と烱至に習ったことを心の中で反芻しながらリアに話しかける。
「タメとは、なんでしょうか?」
リアは心の底から疑問に思って質問をします。
「その敬語、やめろって言ってんだよ」
悠希は少し躊躇しましたが、結局デコピンをしました。
「同い年から使われると薄気味悪い」
リアはあまりのデコピンの強さに悶絶して話を聞いていません。
少し時間をおいて痛みが取れてくると抗議します。
「痛いで…。痛い!何するのさ!」
「デコピン」
「そんなのわかってるよ!今聞いてるのは何でしたか!」
悠希はその抗議を無視して次の話題へと移ります。
「それにしても、ちゃんとタメ口にできるじゃん」
「いや、意識的に敬語にしてるだけだからね。敬語やめると一気に子供っぽくなるでしょ?とても16だとは思えないほどに。…って!話逸らさないでよ!」
リアは無意識的にノリツッコミをしていましたが、とてつもなくキレが悪いです。
「あ、ばれた?オレとしては綺麗に外せたと思ったんだけどな」
悠希は余裕そうに笑ってはいますが、目は真剣そのもので全く笑っていません。
こんなところから無理をしているとわかります。
今回の登場人物紹介はお休みです。
皆さん、まだ殆ど出てないキャラの紹介を受けてもどのような反応をしていいのかわからないと思うので。
あと、感想などの返信についてなのですが私は休日にこのサイトを開けるかどうかというほどなので、サイトを開いた日にできるだけ一人一人に返信させていただこうと思っております。